映画やアニメを倍速で見ることをおすすめしたい

ちょっと前から、映画やアニメを倍速で見ることについての話をよく見かけるようになった。
その殆どは否定的な文脈で語られている。
ざっくりググってみたところ、だいたいの記事は「最近の若者はタイパを重視して大事なことを見落としている……」みたいな結論に向かって書かれているように見える。
倍速視聴している人に若者が多いせいか、なんとなく、若者批判の材料の一つにされているような気がしてならない。

僕も一年ほど前まで、映像作品を倍速で見るということはしていなかった。
否定的な人の主張によくある通り、僕もまた「時間感覚まで作品の一部であるため、倍速で見れば製作者の意図が伝わらない」と思っていた。
倍速で視聴するというのは、クリエイターが必死に作り出した聖域を荒らすようなものだと、大げさだが何となくそんなイメージを抱いていたのだ。

そんな僕の感覚が少し変わったのは、とある、読書に関する本を読んだのがきっかけだった。
その本のタイトルは忘れてしまったし、内容もほとんど覚えていない。正直、そんな特殊なことは書いていなかった気がする。
ただその中に「面白くないと思った部分は流し読みをする」という読み方について書かれていた。ちょうどそれを読んだ時、映像作品を倍速視聴する若者の話を思い出したのだ。

僕は少しずつ、アニメや映画を倍速で見るという方法を試すようになっていった。
最初から最後まで2倍などのスピードで見るわけではない。基本的には通常の速度で見て、自分がちょっと退屈だなと感じるところでは、スピードを1.5倍や2倍にまで上げる、という具合だ。
先程の読書の話に例えるなら、部分的に速読をするようなものだと思う。

結論から言うと、そうして倍速視聴を取り入れることによって、見ることのできる作品数が3倍くらいに増えた。
単純に一作視聴するための時間が減るし、それだけではなく、退屈な箇所は加速して流せばいいと思っているから、新しく視聴するハードルもかなり下がる。必然的に、たくさんの作品に触れることができるようになる。
個人的にこれはかなり大きなメリットだった。

前に書いた「時間感覚まで作品の一部であるため、倍速で見れば製作者の意図が伝わらない」という主張は変わっていない。
僕が退屈だと思って倍速するシーンも、制作者側としては強い思い入れがある可能性は十分ある。何かを表現するために用意した意図的な間を、無粋にも一気に駆け抜けてしまうわけだ。
それにより作品に対する理解度が下がってしまうことは、どうしても避けられない。
それを踏まえた上で、それでも倍速視聴という方法には価値があると思うのだ。

多分誰にだって、名作と聞いてめちゃくちゃ期待して見始めたが、途中で「なんか違うな……」となって視聴をやめてしまった作品が、一つくらいはあるはずだ。
それは、ちょうどそのシーンの前後が自分に合わなかっただけで、そこを過ぎれば、やっぱり名作だと思うような内容かもしれない。
倍速を利用すれば、そういった作品を最後まで見通すことができる。
そうした見方によって理解度が下がり、得られるモノが減ってしまったとしても、そもそも見ることができなければ何も得ることができない。完全にゼロだ。

最初から最後まで倍速視聴をするなんてことはしなくていいし、2倍で見た後、気になれば巻き戻して等倍で見ることもできる。
その場その場で、自分にあった方法で視聴する。
身構えることなく、より柔軟な態度で作品を楽しむことができれば、それが一番良いんじゃないかと思う。

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