『抱え上げない介護』を強みにする
うちの特養では、平成30年頃(私が異動する約1年前)から「ノーリフティングケア」を導入しています。
「ノーリフティングケア」についての詳しい解説は、こちらをご覧ください☝️
簡単に言うと、ベッドから車椅子、車椅子からトイレなど、乗り移るときに「職員が入所者さんを抱え上げない介護」です。
入所者さん、職員のどちらにも身体的負担が軽減されます。
私は特養に異動するまで、同じ法人の職員でありながらノーリフティングケアについてまったく知りませんでした😲
私が約20年前にデイケアの介護職員として勤務していた頃は、
①利用者さんの両足の間に自分の足を入れて、②ヒザ折れしやすい利用者さんはヒザをロックして、③利用者さんのズボンをつかんで、④「せーの!」で乗り移る、ということを当たり前に教えられましたから💦
施設見学に来られた家族の方に、実際に使用するリフトを見てもらいながら説明すると、
「良い取り組みですね」
と言われることが多いです。
介護の実習生も「初めて見ました」と言われる方も多いので、まだ十分に広がっているとは言えないのかもしれません。
※リフト1台10万円をはるかに超える値段ですので、それも広がらない原因かもしれません😓
実際にうちの特養にも「腰痛」と付き合いながら働く職員さんがいます。
その職員さんたちは、「このリフトがあるからここで働ける。いくら介護が好きでも、抱える介護をする他の施設では働けない」と言われます。
もちろんこのノーリフティングケアを導入するに当たっては、介護主任さんたちが研修に参加し、他の職員に伝え…。
器具を購入し、使い方を学び…。
案の定、「抱えた方が早いよ!」と言う職員さんもいたと聞きました。
けど、粘り強く説明しながら取り組んだ結果、今では「抱え上げない介護」が浸透しています。
私が思ったのは、「この取り組み、ケアをしていることを地域の方々に知ってもらいたい」ということです。
その理由は、介護人材の確保です。
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中途採用者を対象にした就職ガイダンスがほぼ中止になりました。
うちの法人は、よほどのことがない限り有料の人材紹介サービスを利用しません。
その結果、今年度は介護職員の中途採用が現時点でゼロです😰
他の施設と同じように、新聞や折込チラシに求人情報を掲載するのか?
有料の人材紹介サービスを利用するしかないのか?
このままでは、職員の希望や体調、結婚・出産などに応じて勤務場所や働き方を変えることができることを定めた「キャリアパス」も絵に描いた餅になってしまう…。
そんなことを考えている中で、この2冊の本に出会いました。
自分の分身に仕事をさせる技術
僕はカルピスで言うところの原液を作っているのだ。
僕の1滴の原液がアメーバのように無限に広がるのだ。
僕が実際に動かなくても、考えや主張は自動的に生産され続け、何人もの僕が働いているのと同じことになる。
『多動力』より引用
他人と競った時点で負け。自分だけの競技を創れ。
作品の販売を他人に委ねるな。それは作品の「育児放棄」だ。
信用時代の宣伝は、口コミが最強。口コミをデザインしろ。
『革命のファンファーレ』より引用
この本を読む前の私は、
「介護実習に来た学生を、就職につなげよう」
という、いわばどこの施設もされているのと同じことを考えていました🤔
けれど、介護実習に来てくれるかどうかは学校の先生や学生さんの意向があってこそ。
こちらから、「○人来てください!」とお願いして来てくれるわけではありません。
現実的に、2名予定していたが1名になったり、希望者がいなくてゼロだったりしたこともありました。
「実習から就職」が悪い訳ではありません。
むしろ「王道」です🏆
「王道」であるからこそ、どこの施設も「あの手この手」で感じの良い実習生を就職させるのに必死になるのだと思います。
王道は残しながら、他の方法で介護職員を確保する。
それが「抱え上げない介護」を地域の方々に理解してもらい、地域の方々から
「あそこの施設で働いてみぃや」
「あの施設なら少々腰が痛くても大丈夫じゃ」
と紹介してもらうことを目指します。
主なターゲットは、「身体を痛めて介護職を辞めた方」。
そして、「介護は未経験だけど、働いてみたいと思っている方」です。
うちの施設がある中学校区の人口は約3万人。
65歳以上の高齢者が約9500人。
生産年齢人口は、やや少なく見積もって1万人。
身体を痛めて介護職を辞めた人、資格はないけど介護職として働こうと思っている人が0.01%いるとすれば、10人になります。
この10人に、地域の方々から声をかけてもらうような仕組みを作りたいと思います。
具体的には、町内会の役員さんや民生委員さんに対して「リフト体験」をしようと考えています。
実際に地域の方にリフトに乗ってみてもらい、思ったより怖くないこと。
そして、小柄な女性でも操作方法を覚えれば、身体を痛めることなく移乗ができることを理解してもらいたいと考えています。
もう1つ大事なのが、
『未経験者職場定着プログラム』の作成です。
「自分が介護の仕事をできるだろうか?」
と大きな不安を感じている方に、いきなり排泄介護をしてもらわない方が良いと思います。
まずは食事の配膳や下膳、シーツ交換や入所者さんとの会話から始めてもらい、段階的に入浴・食事・排泄介護へと移行していく…というようなプログラムです。
実際に、無資格で働き始めた職員もいます。
その方から「続けることができた要因は?」「もう辞めたいと思ったのはどんな時?」など意見を聞いて作成したいと思います。
スポーツの世界に例えると、
プロ野球のように高校・大学・社会人で活躍している選手を「獲得する」のではなく、
プロサッカーチームのように、小学生・中学生世代から「育成する」気持ちです☝️
これまで同様、地域の中学生が行う「職場体験学習」も積極的に受け入れていこうと思います👍
もちろんこれらの方法も、すでに取り組んでおられる施設もあるかと思います。
それでも、まずは一歩を踏み出してみようと思います。
うまくいかなかったら、1年後に振り返って反省したいと思います😅
また途中経過も報告できればと思っています。
もしよければ、皆さんの「人材確保策」も教えていただけるとうれしいです☺️
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。