触法高齢者と地域とのつながりを考える(その1)
元プロ野球選手の清原和博氏が、覚せい剤取締法違反による有罪判決から4年を経過し、執行猶予満了を迎えたとニュースで見ました。
現役時代は特別に応援していたわけではありませんでしたが…。
引退するときにドラフト会議や巨人への感情、オリックス時代の思いを特集で知り、印象が変わったのを覚えています。
「薬物依存症の方々や高校球児のために」という決意がゆらぐことなく、専門職や周囲の支援を受けながら再び薬物を使用することなく生活されることを願っています。
私が地域包括支援センターに勤務していた頃に関わった触法高齢者は、清原氏と比べて支援者は限られており、家族がいない。家族がいても疎遠になっている方が多かったです。
刑務所で罪を償った後、身寄りがなく、近隣に支援者がいない状況で、依頼者である地域生活定着支援センターや更生保護施設の職員さんはほぼ同じことを言われます。
「地域につないでください」と。
言いたいことはわかります。
近隣に身寄りがいないからこそ、地域の方々が声をかけたり、見守ってくれれば再犯防止になるし、生活に困ったときでもすぐ関係機関につなげることができる。
でも、これって簡単なことではないなーと毎回感じていました。
私が関わったAさん(若い頃に殺人をして服役)のケースから考えてみたいと思います。
県の地域生活定着支援センターからの紹介でした。
「近日中に更生保護施設を退所され、一人暮らしをされる男性の方がいる。今は自立した生活をされているが、今後のことを考えて地域につないでもらいたい」
という相談でした。
ちなみにこの時点でAさんの前歴は、「個人情報なので」と教えてもらえず。
「地域定着支援センターと名乗りながら、大事なところは地域包括に丸投げですか?」
という憤りを感じたうえに、「個人情報」をタテに前歴も教えてくれないとは…。
地域の方々にどう説明すれば…。
幸いこのAさんについては、日頃からお世話になっている保護司さんが担当になられたので、その保護司さんから情報をいただくことができました。
Aさんは他県の出身。若い頃、酒を飲んだ時の勢いで殺人をしてしまった方でした。
保護司さん同席のもとで本人に面談しましたが、物腰の柔らかい80代で、とても前歴とは結びつきません。
Aさんとしては、「なるべく他人に迷惑をかけずに生きていきたい」と希望され、この時点で地域の集まりに参加したいという意向はありませんでした。
当面、保護司さんが月に1回面談し、生活に困りごとが出てくれば地域包括に相談してもらうことになりました。
その後、3年くらい経過した頃でしょうか。
保護司さんから「Aさんの膝の痛みが強くなり、リハビリを希望している」と相談があり、自宅に訪問しました。
本人宅は6畳ワンルームの単身者用アパート。
もちろん町内会にはアパートごと加入してません。
同じアパート内に知り合いはいないどころか、隣に誰が住んでいるのかも知りません。
そこでAさんは、足が弱らないよう散歩して、買い物をして、自炊して…という日々を過ごしておられたそうです。
Aさんから、
家族は他県にいるけど、自分から縁を切り、まったく連絡はしていないこと。今後もするつもりはないこと。
この先もなるべく他人に迷惑をかけずに生きていきたいこと。
今までどこで何をしてきたのかという話になるのが嫌で、地域の集まりには行きたくないこと。
かと言って、地域での出所者の集まりなどには参加したくないこと。自分は服役して罪を償っていると思っているので、罪のことを話す場に行きたくない、という理由など、いろいろ教えていただきました。
私の力不足があったことは認めますが、結局Aさんの支援ネットワークは、私とサービス事業所、保護司と民生委員でした。
とても「地域の支援ネットワーク」が構築されているとは言えません…。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
長文になりましたので、その2に続けたいと思います。