アリゾナ・フォール・リーグに参加するヤンキースの選手
こんにちは。D–Betです。
私が主に応援しているヤンキースは残念ながらワイルドカード・ゲームでの敗退が決まりました。
開幕前にやばいと言われていた投手陣は健闘したものの、破壊力抜群と評判だった打線は調子の波が激しく、結果として大型連勝と連敗を繰り返す胃が痛いシーズンとなりました。
オフには今年で契約が切れるAaron Boone監督の処遇を含め、やるべきことが多くありますが、今回はそれらは無視して、アリゾナ・フォール・リーグの話題へ。
アリゾナ・フォール・リーグは、シーズン終了後に各球団のプロスペクトを集めて行われるリーグで、必ずとは言えませんが投手・野手共に(特に野手)各球団が高く評価しているプロスペクトが参加しており、またここで印象的な活躍を見せた選手は近いうちにMLBで活躍を見せることが多いことから、プロスペクトの登竜門とも言われています。
先日、アリゾナ・フォール・リーグのロスターが発表され、MLB公式が発表しているトップ100プロスペクトからは、2020年全体1位指名のSpencer TorkelsonやRiley Greene、CJ Abrams、Marco Lucianoなど有名どころが参加していますが、今回はヤンキースの選手でこのアリゾナ・フォール・リーグに参加することが決定している選手について書いていきます。
Austin Wells
右投げ右打 捕手 188cm 99kg 1999年7月12日生
2021年成績(2階級合計)
試合103 打率.264 出塁率.390 長打率.476 OPS.867 HR16 三振117 四球71 盗塁16(失敗0)
今回参加するヤンキースの選手の中では最もプロスペクトとしての評価が高い選手。
2020年MLBドラフトでヤンキースが1巡目で指名した選手で、アリゾナ大学での2年間共に、捕手でありながらOPS1.000超の打撃成績を記録するなど強打の捕手としてドラフト候補として評価されていた一方で、肝心の捕手としての守備がイマイチで、またパワーは特別優れておらず、捕手からコンバートされると一気にバリューがなくなるタイプであることから、あまり指名を好まない声もありました。かくいう私もその1人でしたが‥‥。
入団後はCOVID–19によるマイナーシーズンの中止により、実戦経験がなかったものの、翌2021年は開幕をA級のタンパ・ターポンズで迎えると、65試合で.258/.398/.479、9HRと問題なく打ちこなし、三振率20.7%、四球率17.0%とアプローチも非常に優秀であったことから8月にA+級のハドソンバレー・レネゲーツに昇格。
昇格後は三振率こそ32%と高いものの、変わらない打撃力を維持し、38試合で.274/.376/.473、7HRを記録。
四球率は11.7%と階級が上がっても高い水準を維持しており、選球眼はこれからも大きく悪化することはなさそう。
また、シーズン通算で16HRを放ちましたが、Statcastのデータを見る限り、打球速度は特に目立っておらず、パワーは平均〜平均より少し上くらいの印象。
前評判通り、「打撃で躓くこともなさそうやけど、突出するほど打ててもいない」打撃成績ですが、このまま捕手に留まれれば十分な成績でもあります。
逆に言えば捕手でなければバリューが半減する成績な為、彼にとっては捕手としての守備力が最も重要なのですが、盗塁阻止率が10%台にとどまっている送球面は言わずもがな、レシービング・ブロッキングの評価も低め。まあ個人的にはレフト・ファーストに転向すると思います。
Elijah Dunham
左投左打 外野手 183cm 96kg 1998年5月29日生
2021年成績(2階級合計)
93試合 打率.263 出塁率.362 長打率.463 OPS.825
13HR 47四球 85三振 28盗塁(失敗5)
2020年にドラフト外でヤンキースと契約。インディアナ大学では2年目から頭角を表し、2019年は43試合で.310/.434/.542、8HR、2020年は15試合で.390/.493/.559、1HRの成績を記録。
インディアナ大学が所属するビッグ10カンファレンスはハイレベルではないカンファレンスではあるものの、優れた打撃成績を残していたため例年であればドラフト指名されてもおかしくないですが、COVID–19によるシーズン短縮&ドラフト縮小によりドラフト指名されず(2019年ドラフトでは40巡目でパイレーツに指名されています)。しかしドラフト外の選手の中では比較的高い評価を得ており、実際に、ベースボール・アメリカが2020年に発表したドラフトランキングでは186位にランクインしていました。
今季は開幕をA級のタンパ・ターポンズで迎え、僅か29試合ながら打率.276、4HR、OPS.941と問題なく打ちこなし、また11盗塁を決めるなど走力も示しました。6月中旬にA+級のハドソンバレー・レネゲーツに昇格。昇格後はやや打撃成績を落とし、64試合で打率.257、9HR、 OPS.773とまずまずの成績。一方で17盗塁を決めるなどスピードは階級が上がっても健在で、15試合でセンターも守るなど守備での多様性も示しました。
ぱっと見からもわかるように筋肉質な体型でパワーポテンシャルがあり、Statcastのデータにおいてもコンスタントに100マイル以上の打球を放ち、110マイル以上の打球を何度か放つなど、パワーに関しては楽しみな存在。マイナーではスピードツールも存分に発揮しており、現状は4番手外野手が天井ですが、今後の成長次第ではバリューアブルなプロスペクトになる可能性も十分。
Andres Chaparro
右投右打 サード 185cm 90kg 1999年5月4日生
2021年成績(2階級合計)
101試合 打率.267 出塁率.381 長打率.468 OPS.849
15HR 93三振 60四球 4盗塁(失敗4)
2015年にインターナショナルFAでヤンキースと契約しましたが、当時のヤンキースは、前年に多くの選手を青田買いし、ボーナススロットを大きく超過したため、ペナルティーが与えられており、30万ドル以上の契約を禁止されていました。そんな状況なのでおそらく高評価はされていなかったと思われます。
入団後は毎年OPS.600〜.700前後の打撃成績を残すなんとも言えない状態で、昨季までは最高でA–止まりでした。しかし今季は開幕をA級のタンパ・ターポンズで迎えると、65試合で打率.270、7HR、OPS.812とこれまでより明らかに打撃成績が向上。これまではよく覚えていませんが、今季のStatcastのデータを見るとコンスタントに100マイル以上の打球を放ち、110マイル以上の打球も放つなど力強い打球が多く出ていた為、成績向上も納得。上記の好成績もあり8月にA+級のハドソンバレー・レネゲーツに昇格。
昇格後はA級での打撃を上回るペースで打ち続け、36試合の出場ながら打率.264、A級を上回る8HR &OPS.914と好成績を残し、これまで全く注目されていなかったのがやや気になる存在に。
今オフにルール5ドラフトの対象になる選手で、今季は成長を見せましたが、プロテクトするほどかと言われると微妙なところですね。個人的には好きになりましたけど。
Tanner Myatt
右投右打 投手 201cm 99kg 1998年5月21日生
2021年成績(2階級合計)
15登板 18.1イニング 防御率5.89 被安打10 三振25 四球16
死球0 暴投4 被本塁打0 WHIP1.418
前回紹介済み(下記リンクのTanner Myattの項目参照)
Zach Greene
右投右打 投手 185cm 97kg 1996年8月29日生
2021年成績(2階級合計)
34登板 59.2イニング 防御率3.17 被安打39 三振91 四球21
死球4 暴投1 被本塁打6 WHIP1.006
カレッジではリリーフ登板が主で、年々成績が向上していてところ、2019年MLBドラフトにおいて8巡目指名でヤンキースが指名&契約。
プロ1年目はルーキーリーグ&A–級において、全て救援で14試合に登板し、18イニングでERA1.50、奪三振率12.0、四球率2.0、WHIP0.866の好成績。スリーパープロスペクトとして(私の)注目を浴びました。
今季は開幕をA+級のハドソンバレー・レネゲーツで迎え、9試合に登板し、20.1イニングでERA2.21、被安打率2.7、奪三振率14.6、WHIP0.689とほぼアンヒッタブルな投球でA+級の打者を圧倒し、6月中旬には2A級のサマーセット・ペイトリオッツに昇格。
昇格後は25試合に登板し、39.1イニングでERA4.35、被安打率7.6とやや打ち込まれる場面が増えたものの、奪三振率は13.3と階級が上がっても依然として高く、三振奪取能力を示しました。
伸びのある速球を武器にマイナーでは三振を量産していますが、球速自体は92-93マイルとさほど速くなく、MLBで通用するかは未知数ですが、残している成績自体はかなり優秀で期待せざるを得ないですね。
Harold Cortijo
右投右打 投手 188cm 81kg 1998年9月29日生
2021年成績(2階級合計)
8登板 12.1イニング 防御率7.30 被安打11 三振14 四球14
死球3 暴投0 被本塁打1 WHIP2.027
2017年のMLBドラフトで14巡目指名を受けてヤンキースに入団。身体能力が高く、当時は投手だけでなく野手としても高く評価されており、フロリダ州セミノール州立大学(短期大学)へのコミットがありました。
入団年こそリリーフ中心の登板でしたが、翌2018年からは先発として起用され、2018年・2019年と好成績を残し、スリーパー・プロスペクトとして密かに名前が知られる存在に。
しかしA級のタンパ・ターポンズで迎えた今季はシーズン初登板で2回持たず6失点の大炎上で降板すると、その約2週間後にすぐにIL入り。その後リハビリ登板を経て9月に復帰するも、頻繁に走者を出す微妙な投球が続き、シーズン成績もイマイチ。
健康であれば平均92〜93マイル、最速95マイルのフォーシームに、スライダー、カーブ、チェンジアップといった変化球を制球よく投げ分けられる投手ですが、復帰後はフォーシームの球速が平均89〜90マイル、最速91.6マイルしか出ておらず、毎登板四球を出すなど制球も良くなかったことから、今回のアリゾナ・フォール・リーグ参加は、球団が現在のCortijoの状態がどのようなものなのかを見極めたいという意図があるように思われます。(あくまで私の推測です。)
Clay Aguilar
左投左打 投手 185cm 95kg 1999年3月26日生
2021年成績(2階級合計)
22登板 52.0IP ERA1.90 被安打30 奪三振71 四球11
死球7 暴投4 被本塁打3 WHIP0.788
2018〜2020年はアメリカン・アソシエーション・カンファレンスに属するヒューストン大学で主に先発投手として活躍した(計25登板18先発、105イニングでERA3.26、奪三振率9.2、四球率2.9)ものの、速球の球速が90マイル程度と球威がなく、また所属するカンファレンスがトップクラスではなかったこともあり、5巡目まで短縮された2020年ドラフトでは指名されず、再度大学に残留することも考えましたが、ドラフト外でヤンキースと契約。
2020年はCOVID–19によるシーズン休止でプレー機会がなかったものの、2021年はA級のタンパ・ターポンズに配属され、シーズン当初はリリーフ登板がメインだったものの、途中から先発も経験(といっても2〜3イニングしか投げてませんが)。結果、A級では21登板(4先発)、46.0イニングでERA2.15、奪三振率12.9、四球率2.9、WHIP0.826の好成績を残し、9月14日にA+級のハドソンバレー・レネゲーツに昇格。1試合だけ先発として登板し、6回3安打無四球無失点、5奪三振の好投を見せました。
先に述べたように、速球の球速自体は90マイル程度で変化球は他にスライダー、チェンジアップを投じます。スライダーとチェンジアップには特に目立つものはないですが、速球に関してはStatcastのデータでスピンレートを見ると、多くは2100〜2200rpmほどですが(時折2900〜3000rpmと高回転数を記録しており、一般的な投手のカーブと同程度の回転数なので完全な誤計測と思っていたのですが、何度も記録しているのでちょっと頭が混乱していました。しかし6月になると回転数が落ち着いていたのでやっぱり後計測のようですね。)、頻繁に速球で空振りを奪っているので、カレッジ・マイナーでも高い奪三振率を記録しているのはこの速球による効果が大きいのかなと。
Blane Abeyta
右投右打 投手 190cm 83kg 1998年9月4日生
2021年成績(2階級合計)
17登板 55.1IP ERA6.02 被安打43 四球35 奪三振71
死球6 暴投8 被本塁打4 WHIP1.410
2017年〜2018年の2年間をモデスト・ジュニア・カレッジで過ごし、2年間でリリーフ中心に82イニング、ERA3.95、82奪三振を記録した後、2019年シーズンからはネバダ大学に転校。2019年はCOVID–19によるシーズン休止により、全てリリーフで7登板・8.0イニングにとどまったもののERA3.38、奪三振率13.5とリリーフとしてはまずまずの成績。しかし、四球率6.8、WHIP1.875と制球不足により無駄な走者を出す場面が多く、またリリーフ専ということもあり、2020年ドラフトでは指名されず、ヤンキースとドラフト外で契約。
実質プロ1年目である2021年はA級のタンパ・ターポンズに配属され、6試合に登板したが、コンスタントに失点し、ERA8点台と不調だったこと、また12.1イニングで16四球と制球が壊滅的だったこともあり、フロリダ・コンプレックス・リーグ・ヤンキースに降格。降格後もERA6.00とイマイチだったが、先発としての経験を積み、制球難が改善されたことで、7月下旬に再びA級に昇格。復帰後は好不調の差は大きかったものの、シーズン序盤よりも投球内容が改善され、復帰後の8登板(34.0イニング)でERA4.23、奪三振率11.6、四球率4.23とまずまずで、制球もシーズン当初のA級所属時よりは纏まっていました。シーズントータルですと普遍的ですが、8月20日の5.1イニング無安打無失点8奪三振(リリーフ)、9月3日の6.0イニング1安打無失点9奪三振(先発)と好調時の支配力は無視できないもので、アリゾナ・フォール・リーグ派遣もこの辺が評価されたのかなと(あくまで推測。)。
速球の球速は91〜92マイル、最速94マイルを記録しますが、スピンレートは平凡で、球威は平均的。変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップを投じますが(スライダーとカーブが同一か投げ分けてるかは分かりませんが)、スライダー&カーブは球速は80マイル前後であるものの、好調時はよく空振りを奪っており、威力は高め。チェンジアップは投球割合は多くないものの、好調時はうまく空振りを奪うことも少なくはなく、さらなる向上に期待したいところ。まあ変化球に関しては全て好調時の話ですが。
大学時から制球はかなり悪く、不調時には大体四球から崩れているような印象。ですが、シーズンが進むにつれて制球は少しではあるものの良くなってはいるように思います。
以上、アリゾナ・フォール・リーグに派遣されるヤンキースのプロスペクトを紹介しました。まあ、本来はアリゾナ・フォール・リーグが始まる前に記事を書くべきなんでしょうけど、完全に遅かったですね。