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【違った視点でPowerPointを見る】航空会社のパワーポイント5選

みなさんこんにちは。
資料デザインのリサーチや分析に取り組むパワーポイントのスペシャリスト、パワポ研です。

今回は、日本の航空会社に焦点を当て、その中から上場している企業の決算説明資料(決算補足説明資料)を4社紹介いたします。また、参考までに海外の航空会社のスライドも取り上げ、比較・解説していきます。

最近スタートアップやの紹介記事を増やしていましたが、久々に業界ごとのパワポ紹介もやってみようかということで、今回はコロナ明けで盛り上がり始めた航空業界をチョイスしました。
過去には「海外ハイブランド」や「鉄鋼・非鉄業界」などの解説もしていますので、あわせてご覧ください。

それでは早速見ていきましょう。

ANAホールディングス

ANAホールディングス(株)は航空事業を中心に旅行事業や商社事業なども手掛けるエアライングループです。スターアライアンスに加盟するANAに加え、LCCのPeach、2024年2月から就航予定の中距離国際線AIR JAPANを参加に収め、運営しています。ANAといえば、「空マイラー」「陸マイラー」「SFC修行」などの言葉が存在することからも分かるように、ANAマイルを基軸として顧客のエンゲージメントを高めており、典型的なロイヤリティプログラム戦略を取る企業だと言えます。
パワポのデザインに関しては、良い意味でも悪い意味でも「最低限」という印象を受けます。webサイトや出稿されている広告は、視認性や高級感を高める工夫がなされておりますが、決算資料説明資料はあくまで投資家用の説明資料と割り切って、デザインの統一を図っていない可能性があります。また、ほぼ全てのスライドに「メッセージ」が存在せず、数字の羅列がメインとなっているため、口頭で話す内容の補助資料として捉えた方が良いかもしれません。

参考資料:2023年3月期決算説明資料

日本航空

日本航空(株)ANAと並び、国内外に広がる路線ネットワークを有するJALを中心に、旅客輸送や貨物輸送、航空関連サービスを手掛ける企業です。2009年に事業再生法の適用を申請し、破綻しましたが、再生プロセスを経て2010年に企業再生法からの脱却を果たしました。ANAと同様にマイレージを軸としたロイヤリティプログラム戦略を採用しており、ワンワールドのアライアンスに加盟しています。
パワポに関しては、2ページ目の目次が特徴的です。一般に目次ページには、スライドの内容をシンプルに羅列することが多いですが、日本航空の目次ページには、SKYTRAX(航空運輸格付け会社)やAPEX(Airline Passenger Experience Association)、経済産業省などから受けた表彰の数々やESGに関する評価などが所狭しと羅列されています。これには賛否両論あるかと思いますが、一度経営破綻をしている以上、経営の数字以外の指標も重要視しているというメッセージにはなり得るかと思います。
スライドはメインカラーの赤を中心に、近似色のオレンジや黄色を織り交ぜながら、うまく濃淡を活用し色数を減らす工夫がなされています。一方、全体的に余白が狭く、必要以上に太字も多いことから、窮屈な印象を与えてしまっている点に関しては改善の余地があると言えるでしょう。

参考資料:2023年3月期決算説明会資料

スターフライヤー

(株)スターフライヤーは本社を福岡県北九州市に有する、2002年に設立された日本の航空会社です。主に福岡と本州を結ぶ国内線を運行しており、一部台北との国際線も就航しています(現在は運休になっている模様)。ブラックとシルバーを基調とした機体デザインが特徴的で、これはANAのメインカラーである青、JALのメインカラーである赤を意識した戦略のようにも見えます。
パワポに関しては、6ページ目の「常識を覆すブランド戦略」が特徴的です。このスライドではANA、JALという2大フルサービスキャリア(FSC)が存在し、各LCCが勢いを増すなか、LCCよりも高品質なサービスをFSCよりも安く提供するという独自のポジションに在ることを分かりやすく説明しています。またスライド全体を通してこのような図形や画像が数多く挿入されており、文字の大きさにもメリハリがあるため、日本航空と同じく余白は狭いものの、それほど圧迫感を感じないのが、参考ポイントとなりそうです。

参考資料:2023年3月期決算説明会資料

スカイマーク

スカイマーク(株)は本社を東京都大田区に有する、1996年に設立された日本の航空会社です。2010年代に経営難となり、2015年には民事再生法の適用を申請しましたが、その後の再建プロセスを経て、2022年の12月に東京証券取引所グロース市場に上場を果たしています。現在は神戸や羽田を中心に低価格帯の国内線を全国各地に就航しています。
スライドに関しては、スカイマークのロゴである「青」と「黄色」をメインカラーとして、この二色を上手く使い分けています。差し色として時折見られる赤がバランスを崩していて少しもったいない印象を受けますが、総じて色数が少なく、視認性の高いスライドと言えるでしょう。同じく国内線をメインに運営するスターフライヤーが「高級感」を演出している一方、スカイマークのスライドからは「親しみやすさ」を感じ取ることができ、各々のブランド戦略の違いが明確に見て取れるのが面白いですね。

参考資料:2023年3月期 決算補足説明資料

(番外編)United Airlines Holdings

United Airlines Holdingsはスターアライアンスに加盟するユナイテッド航空を有するアメリカの航空会社です。今回、日本の航空会社で上場している企業が4社しかなかったため、番外編として取り上げることにしました。2002年12月に一度経営破綻していますが、再建後の2010年10月にコンチネンタル航空と合併し、現在は旅客キロベースで世界最大の航空会社となっています。ANA同様MileagePlusというマイレージプログラムを運営しており、日本のマイレージ通はこっそりユナイテッド航空のマイルを貯めていたりするほど、日本でも馴染みのある会社です。
パワポの構成に関しては、アメリカの会社らしく「枚数少なめ」かつ「シンプルな経営指標」を押し出す形となっており、ANAやJALなどと比べてもスッキリとした印象を受けます。一方で6ページ目の競合比較スライドなどは、非常にきめ細かな内容で自社の優位性を示すものであり、デザインのシンプルさと情報量の多さが両立したデザインであると言えます。

参考資料:4Q22/FY22 Earnings Call

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本国内の航空会社は価格帯やサービスに明確な差があるため、その特徴がパワポに一部反映されていることが確認できたと思います。ANAやJALのパワポがwebサイトや広告などと同様に高級感のあるものに仕上がっているかというと、必ずしもそうではなく、デザイン性向上の余地があることが伺えました。一方で、スターフライヤーやスカイマークなどの中堅企業は、自身のキャラクターを常に考えなければならないポジションにいるためか、それぞれ全く違う方向性の特徴を打ち出していることも分かりました。今回、海外の企業は一社のみに止めましたが、また参考になりそうなシリーズがあれば、積極的に紹介していきます!

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