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ウルトラマン史上最大の問題作と、コロナ差別と
コロナウイルス問題を機に、差別が拡大しつつある。
日本国内で、感染者とその家族への差別が。
世界中で、日本人含むアジア人への差別が。
蘇る過ちの記憶
歴史的に、社会が混乱したときには人々の負の感情が噴き出してきた。
差別感情もそのひとつ。
パニック状況下では、人々の心に宿った恐怖心が犯人探しを始め、排斥に向かう。
矛先となった者は白い目で見られ疎まれるだけでなく、場合によっては暴力で排除されることもある。
関東大震災のおりに朝鮮人が多数虐殺されたのはその最悪な例だ。
お蔵入り寸前となったウルトラマン
このままでは、世界中で人種や国籍による分断が進み、感染者とその家族への迫害がいたるところで起こりかねない。
差別の加害者にならないために、そして抑止していくためにという思いを込めて、「差別」をテーマに扱った“ある作品”を紹介したい。
ウルトラマンシリーズ第3弾『帰ってきたウルトラマン』の第33話「怪獣使いと少年」だ。
この作品では、宇宙人だと疑われた少年が首まで土中に埋められて泥水をかけられたり、せっかくつくった食事を地面にぶちまけられ踏みにじられたりと、陰惨ないじめを受けるシーンが描かれている。
宇宙人への恐怖から暴徒となった市民(警察官含む)が、罪もなく無抵抗な老人を虐殺する描写もある。
本作ではそんな行動に走ってしまう人間を、登場人物のセリフを借りて次のように糾弾している。
「日本人は美しい花を作る手を持ちながら、一旦その手に刃を握るとどんな残忍きわまりない行為をすることか」
衝撃的な差別描写や、それに対する強い問題意識が詰め込まれた本作は、放映前からTBS上層部で大きな物議を醸し、一時は放映が危ぶまれたそうだ。
「怪獣使いと少年」が特別公開中
そんな「怪獣使いと少年」の脚本を担当したのは、上原正三さん。
沖縄出身の上原さんは、アメリカや本土に支配されていた立場から、マイノリティーの視点と差別への問題意識をずっと抱えていた。
その意識が強く反映されたのが、「怪獣使いと少年」だった。
その上原さんが、今年(2020年)1月に亡くなった(享年82歳)。
上原さんの逝去をうけ、円谷プロのサイトでは現在、「怪獣使いと少年」が特別公開されている。
日本と世界を差別の暗雲が覆わんとしている今、観れるうちにぜひこの貴重な映像を観てみてほしい。
特別公開『帰ってきたウルトラマン』第33話「怪獣使いと少年」
追伸
上原正三さんが亡くなる2年前のインタビュー記事がある。
自身の戦争体験やマイノリティーとしての意識について詳細に語られており、過ちを繰り返さないためにこちらもぜひ目を通してみることをおすすめしたい。
上原正三「戦争と想像力」
追々伸
たしかにコロナウイルスはおそろしい。
しかし、それを恐れるあまり他者に疑心暗鬼になり、排除や暴力に打って出ることはもっとおそろしい。
いま必要なのは、人類みんなの連帯だ。
「我々が恐れなければならない唯一のものは、恐怖そのものである」
フランクリン・ルーズベルトのこの言葉をあらためて肝に命じておきたい。