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【最終回】香水専門店がイソップの新作「イーディシス」をレビューします

こんにちは。ネット香水専門店CelesでSNS運用を担当している立井です。
この挨拶もついに最後ですね。いつにも増して哀愁が漂っているのが画面越しでもお伝わりでしょう。そして推しのガチャで爆死(10か月ぶり2度目)したので、なおさらこの悲嘆が伝わっていることを祈ります。

さて、この最終回も、Celesで最近リリースした香水のレビューをお届けします。
前回レビューしたのはメゾン マルジェラの「オータム バイブス」。秋としか言いようのない、万人がイデアとして思い浮かべる秋を具現化したような、どこかエモーショナルな香りでした。気になる方はこちら。

(阿部)
特にこの香りで不思議なのは、木のなめらかな甘さと落ち葉のドライな感覚が同時に感じられるところです。

(立井)
あ、少しわかるかもしれません! 全体的な香りとしては包み込んでくれるように優しい感じがするのですが、香りの要素としては道沿いに溜まった乾いた落ち葉の感じがします。
これが木を見て森を見ず、木を隠すなら森ってことなんですね。

(阿部)
存在しない探偵小説の記憶が蘇ってたりしますか?

初めて読んだホームズは「四つの署名」でした

最近は気温も下がってきて、だんだん「秋だな~」と感じるタイミングも増えてきたかと思います。半袖を着て夕方に後悔したり、長袖を着て昼に後悔したりしますもんね。「オータム バイブス」は、そんな「秋だな~」を「秋だな~~~~~~~!!!!!」に変えてくれる香りでした。


そんな今回は、10/9にリリースしたイソップの新作「イーディシス」をレビューします。

Aesop – Eidesis
(イソップ – イーディシス)

哀しき美少年ナルキッソスの香りのメタモルフォーゼ、イーディシス。森の妖精たちを冷淡にあしらい、復讐の女神によって報われることのない自分自身への恋の呪いにかかってしまったナルキッソス。囚われの水面や鏡硝子を暗示する秘められたフローラルノートは、異世界に光を当てた香りを象徴するかのようにダイレクトなフローラルではなく、ウッディノートに秘められたアクアテックな淡い余薫。そして、甘くメロウな木々とスパイス、ミステリアスなフランキンセンスが、恋に破れた妖精エコーのように肌からエーテルへと木霊し、芳しい魅力で人々を惑わせます。

なんだかすでに概念すぎますね。ナルキッソスといえば、湖面に映った自らの美しさに恋をして死んでしまうという、ギリシャ神話の美少年ですね。紹介文にもある精霊エコーは、ナルキッソスに恋をするも、相手の言葉を繰り返すしかできなかったゆえに見捨てられてしまうという切ないエピソードの持ち主です。
お察しかもしれませんが、私はwikiで神話を漁る中学生時代を過ごしていました。みなさんも洒落怖とか2chコピペたくさん見てたでしょう。同じですよ

これはいったいどんな香りなのでしょうか。最終回なので文章量モリモリでいきます。


ブランド説明

まずはブランドの紹介です。
今回紹介する香水のブランドはAesop(イソップ)初見ではアエソップと読みがちなことで有名ですね。(?)そういう意味ではアニエスベー系ともいえます。(???)

1987年に設立された、メルボルンに本社を置くオーストラリア発の高級スキンケアブランド。
有能な研究チームによる成分に徹底的にこだわった製品と洗練されたデザインは、男女問わず支持を得ています。

ブランド名はイソップ童話から由来している「嘘・偽りがないブランド」。

フレグランスもそんなブランドの精神を表すかのように、植物などの自然との調和を思わせるリラックスできる香りを中心としています。

先日、イソップの店舗でハンドクリームを買いました。メチャクチャ緊張した……ホスピタリティにあふれた対応ってすごくありがたいのですが、私のように気の小さい人だと、逆に一周回ってメチャクチャ馬鹿にされてるんじゃないかと不安になります。そんなわけないのですが……ないよな……? おいなんとか言ってくれよ……


レビュー

小心者には実店舗がハードル高い話をしたところで、香水のレビューに入りましょう。


コンセプト

「イーディシス」は、現実と想像の領域を行き来する“境界線上の空間”から着想を得たコレクション「アザートピアス」の新作。すでにかっこいい単語が渋滞を起こしています。プイプイ
アザートピアスってなんだ? 新しいピアスの開け方か? と思いましたが、英語のつづりだとothertopias、other+topia(=topos(ギリシャ語;placeの意))なので、「ここではないどこか」的な意味でしょうか。就活ジプシーのころを思い出しますね。

さて、そんな「イーディシス」のコンセプトは、「水鏡」
インスピレーションソースとなっているナルキッソスの神話の通りですね。


香水は神話が好きだなー😊


最終回だからかスタイリストが飛び出しました。
ちなみに、ソシャゲも神話大好きがちですよね。三段論法で行くと、

①香水は神話が好き
 ↓
②ソシャゲも神話が好き
 ↓
③香水はソシャゲ

最終回にして新説を発見してしまいました

確かに、ソシャゲは5万くらいで天井しても爆死したら悲しいし、香水は5万くらいでフルボトル買っても香りが合わなかったら悲しいですもんね。
香水ってソシャゲだったんですね。


香りについて

本編に入ります。
今回レビューするのはこちらの3人。最後なので豪華です。


チーフスタイリストの阿部さんです(香水強者)
スタイリストのさやかさんです(香水強者)
ショックを引きずっている立井です(香水初心者)

香水のプロ2人vs初心者1人、人数不利ですね。通信エラー起きてるので負け判定には入りません。みなさん安心して戦いましょう!
初心者でも塗りで勝利に貢献できるように、香水でも初心者だからこその素朴な感想は大切です。変に飾ったりしない率直な感想の方が、自分がどうしてこの香りを好き/苦手になったのかがわかりやすいでしょうし。(必死の自己弁護)
でもこのnoteで一番伝えたいのはここです。下手に言葉を飾る必要ないので、自分の素直な心で感じたことを大切にしていきましょうね。

それでは香りを試していきます。


なるほど、木ですね


もうちょっとなんかないですか?


あ、なんか急にスパイス来ました! カレーっぽいのでクミンかな?


私の肌でもクミンがよく立ちました! 一言でいえば、とてもスパイシーな香りだなと感じます。


最初めちゃくちゃ木で、「なんかこれ他のイソップに似た香りあるな……」と思っていたのですが、急にスパイスみ強くなりましたね。ちょっとカレーっぽい


さすがに食事制限の反動がきてますね
私は、とても複雑な香りに感じました。まずはスパイスの熱風に吹かれ、少し時間が経つと、木材の断面のような柔らかく甘いウッディの中にミネラル(塩)の香りを感じます。これが池の中に沈んでいる小石のようで、神秘的で静かなイメージを受けます。


ナルキッソスの神話をもとにしているだけあって、やはりそういった神秘的な雰囲気を感じますよね。
ナルキッソスは水仙の英名なので、水仙の香りを探してみたのですが、ムエットを鼻に近づけたほんの一瞬だけ、祖母の庭に咲いていた水仙のグリーンな香りをかすかに感じた気がします。気がするくらいのわずかな香りだったため別の日に再度試香しましたが、その日は分かりませんでした。(笑)


お花そのものというフローラルまでは感じませんが、確かに野生の水仙が咲いているような水辺のように、生ぬるい湿気の中にひんやりとドライな香りが印象的ですよね。


そうですね、私の肌でもフローラルな要素は出てきませんでした。
阿部さんの仰る通り、お花そのものというより土のあたたかい香りを彷彿とさせます。


スタイリスト同士の高度な会話の中口を挟むのも野暮かもしれませんが、そもそもこの香りにフローラルはあるんでしょうか? 私の鼻では感じられなくて……


それが、香料としては含まれていないんですよ。


なんだって?!


でも、要素としてはあるんです


なんだって??!!!?!


ジェネリック宇宙猫


ご説明すると、フローラルノートとしての香料は入っていません。ですが、おそらくウッディノートの香気成分としてフローラルを感じさせる要素が入っており、フローラルさを感じさせているのかな? という感じです。


なるほど。(?????)


複雑ですよね、お気持ちわかります。
なので、公式サイトやレビューなどで「フローラルな要素がある」と紹介されているとはいえ、それを期待するとギャップを感じるかと思います。
そのため、普段からアーシーなベチバーやブラックペッパーの刺激的な香りがお好みの方におすすめかなと。


逆に言えば、そういったフローラルの香りをダイレクトに感じさせない、「木々の中から見つけてみて」といじわるな神々に言われているかのような、遊びのある調香が粋な香りとも言えます。水面に映る向こう側の世界(アザートピア)をイメージしているんでしょうか。


香りって深いんですね……
私が初心者だからかわかりませんが、どうしても香りを試すときって、最初に自分で感じたことを香水の紹介文を見て答え合わせしがちで。だから今回、私がまったく感じなかったフローラルにお二人が言及されていて、「自分が香りに感じたことは間違っていたのかな?」と少し不安になってしまいました。


香りの楽しみ方はいろいろありますし、鼻の練度もそれぞれです。現実的なことを言うと、人によって肌タイプが異なり、それによって香り立ちも大きく変化します。同じ香水をつけていてもまったく別の香りに感じることすらあります。
なので、もし自分が感じたことと周囲が言っていることが違ったとしても、自分の感じ方が間違ってるだなんて感じなくていいんですよ!


もちろん香りの名前を間違えて覚えていることもあったりはしますが、自分が感じた香りに正解も間違いもありません。それに、こと香水においては、含まれている香料を公式がすべて開示していることはまれです。
そういった意味でも、周囲からの評価と自分としての評価が異なっていたとしても自信をなくす必要はありませんよ。


香水上級者、メッチャやさしい……ありがとうございます……
最終回にして本質情報をお伝えできた気がします。神回万バズバイブル化ハリウッドリメイクまったなしですわ……


せっかくいいこと言ってるので、もう少しだけ綺麗にまとめられませんか?


しんみりしすぎちゃうので、クオリティコントロールをしています。


なら仕方ないですね。



おすすめのシーンはありますか?


スパイスと木々のあたたかみが特徴の香りなので、季節としては秋冬、これからの時期がおすすめです!
クミンが入っていることもあり、インド的な要素をイメージする方が多いかとも思いますので、エスニックな装いに似合うでしょう。あえて夏の夜にごく少量を香らせるのもいいかもしれません。


かなりスパイス感強いので、夏の夜に香らせるのは確かにオシャレそうです! カレーも夏がシーズンですしね。


ちょっとそこは議論の余地がありますね。


夏はカレー、冬はシチュー、私はそういう生き方をしています
ちなみに、この香りはワンプッシュでもかなり存在感があるな~と思いましたが、おすすめの使い方はありますか?


仰る通り香り自体が強めなのと、日本は湿気が高いので、足首にワンプッシュ程度が適量かと思います。
ナルキッソスの神話がモチーフということもあり、池の静けさが感じられるため、お休みの日に一人で散歩をするとき、スパイスの刺激を活かしてアイディアを出したいときに楽しむのも素敵です。


そうですね、私も自分と向き合うときにおすすめしたいです!
リラックスしたいときやクリエイティブなことをしたいときなんかにいいですよね。


なるほど、お二方とも「自分に向き合う」シーンでおすすめされていますね。そんなところも、まさしく水面を覗いて自分に恋してしまったナルキッソスを思わせる香りですね!
ぜひ皆さん参考になさってください!



おわり

ということで、「イーディシス」をレビューしてきました。
木! スパイス! 秋冬! といった香りながらそれだけで終わらず、存在しないフローラルが存在するなど、非常にユニークな香りでした。その一方で自分の記憶が呼び起こされたり、自分自身と向き合えたりする、コンセプトにぴったりの香りでもありました。
「自分、フローラルいっすか?w」という腕に自信がある方の挑戦が待たれますが、ぜひみなさんもこの香りを試してみて、複雑な世界感を感じてみてください。


おわり(ガチのほう)

くぅ~疲れましたw これにて完結です!

いやあ終わっちゃいましたね……約6か月間という短い間でしたが、立井という香水初心者の目線から体験記事・レビュー記事をお届けしてきました。
初心者でも香水を楽しめるし、初心者なりの感想も大切だよ、というメッセージは伝えられているでしょうか。伝わっていなかったらいま受け取ってください。太字にしたので受け取れているはずです。

いろいろな事情があり、今後立井として皆さんに香水のレビューをお届けできないこと、とても悔しく残念です。筆を置いたら終わってしまうので、さっきからずっと文章を書いては消し書いては消しを繰り返しています。いたいけで可愛らしいですね。これがアイドルのライブだったら、いま背景のクソデカ液晶に「メジャーデビュー決定!」と出ていてもおかしくありません。推し、はよメジャーいかんかなあ。

個人の感傷はさておき、皆さん、「こんな香水初心者でも香りを楽しんでるんだよ~」という事実を胸に、これからも香りを楽しんでくださいね。
皆さんがより多くの香水と出会い、そしてその香りたちが皆さんの生活を彩り豊かなものにすることを、草葉の陰からお祈りしています。

最後に、これまで書いてきた記事を一覧にしておきました。別れを惜しみたい方、閲覧数稼ぎに協力してくださる方はぜひご覧ください。


アーカイブ

「Celes推し活」注文の仕方シリーズ

①:注文の仕方(理論編)

②:注文の仕方(実際に書いてみる)

③(おまけ):セレクトされた香水を試してみる


香水レビューシリーズ

①:エタ リーブル ド オランジェ - ゴースト イン ザ シェル

②:キリアン - コローニュ シールド オブ プロテクション

③:モスキーノ - トイ2

④:セルジュ ルタンス - ラルリジューズ

⑤:フレデリック マル - アウトレイジャス

⑥:ル ラボ - パチュリ 24

⑦:パルル モア ドゥ パルファム - ウェイクアップ ワールド

⑧:メゾン マルジェラ - オータム バイブス


さて、これで本当に終わりです。今まで本当にありがとうございました。
皆さんもよき香水ライフを!




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