『Hello! Project 2020 Autumn ~The Ballad~ Extra Number』ハロプロは武道館で咲く希望の花

武道館は東京オリンピックに向けての改修工事などで長らくコンサートでは使われなくなっていた。しかしそのオリンピックもコロナ禍で中止となった。以降、9月10月になっても武道館で客入れをしたイベントは一切行われないままだった。

そんな10月12日(月)にハロプロがコロナ禍の武道館ではじめて観客を入れてコンサートを行うことになった。ハロプロはこの夏、どこよりも早く徹底した感染対策のもと全国のホール会場でも観客を入れたコンサートを開催し、今のところ無事に演者もスタッフ、もちろん観客も含めて感染者を出していない。

そしてコロナ禍のコンサートではじまった「全メンバーがJPOPのバラードをソロで歌唱する」という試みも大成功を収めている。

もともとがアイドル以前にキチンと歌手としてのスキルを求められるハロプロ、いやアップフロントという音楽事務所の特性、もはやガラパゴス化ともいえる音楽に対する真面目で頑固で昔堅気な気質が、コロナ禍という未曽有の事態にも臨機応変に対応できる下地を作っていたのだ。

50人以上いるアイドルの子たちが、全員曲がりなりにもソロで歌うだけの力量を持っていることなんてハロプロ以外では宝塚くらいじゃないだろうか。まあ、宝塚こそ当たり前の話だろうが、だがそれくらい当たり前にハロプロも歌うことを基本スキルとして全ての所属アイドルに徹底してきた。

武道館の前にもテレビ朝日との企画でソロ歌唱バトルをハロプロは放送している。ハロプロの楽曲をメンバー自身が選び、演出含めてセルフプロデュースで発表するという企画も大成功を収めていた。

そんな実績と自信があるからこそ、この状況下でも武道館で有料観客動員に踏み切れたんだと思う。僕はフジテレビTWOでの視聴だったんだけど、放送はじまって武道館が映し出された時、その沢山の観客の姿に驚きを隠せなかった。本当に沢山の人が入っていた。

Jリーグなどスポーツ観戦も観客を入れるようになっている。ただ、スポーツ観戦の特性もあるのかもしれないが、けっこう中継を観ていてもファンの声が聞こえてくることがある。ざわつきやどよめき、時に野次が飛び交うのも観ている。声を出さないで観ること、これはファンが出来る唯一の感染対策への協力だと思うのだが、これがなかなか難しい。

翻って昨日の武道館である。普段なら聞こえる開演前のヲタのざわつき、会話の声は一切なかった。クラシックコンサートよりも静かだった。MC中の声援や笑い声、途中の換気休憩(30分近く)で登場した上々軍団に対する普段のお約束であるブーイングすら一切ない、本当に無音の客席だった。

コンサート中、聞こえるのは拍手のみ。ペンライトの振り方すらも胸の高さを維持して、全ての面でソーシャルディスタンスを徹底したヲタクの鏡のような集団が武道館には集結していた。

よく同調圧力という言葉をコロナ禍で聞くようになったが、ハロヲタに関しては「周りがしているからする」という受け身な考えではなく「自分がバカなマネして感染したら愛するハロプロに迷惑がかかるから徹底するのだ」という、ある種の使命感のような意識の高さがあるのだと思う。

そういう気持ち悪い使命感(褒めています)が、コロナ禍でもハロプロが全国規模でコンサートを普通に出来ている理由なんだと思う。もう狂信的ですらある。カルト集団だ。だが、これほど演者とファンがお互いのことを想い、心で繋がっているコンテンツはなかなか無い。

20年以上の歴史があるからこそ、脈々と受け継がれている文化、伝統があるからこその賜物だと思うのだ。この他者を想う精神があれば、世界中が平和になるのにな。本当につんく♂の歌詞こそがハロプロを形作っているんだな、と最近あらためて思うことが多い。

そうだ 言われたからするでなく
みんながしてるからでなく
この手が掴む元気な未来
Love & Pease

武道館での3時間にも及ぶハロコンは、そんな想いの集大成だったように感じた。

■ P.S.

個々のパフォーマンスに対する評価は細かく書いてもなぁと思ってしまったのだけど、現ハロプロにおいて2004年前後に生まれたメンバーの子たちにはコンサートの度に驚かされてばかりだ。

笠原桃奈、伊勢鈴蘭、橋迫鈴(アンジュルム)
北川莉央、岡村ほまれ、山﨑愛生(モーニング娘。'20)
工藤由愛、松永里愛(Juice=Juice)
岡村美波、清野桃々姫(BEYOOOOONDS)…舞台で不参加

今年15歳から17歳の若い子たちのパワー、そして物怖じしない度胸、個性豊かなキャラクターにはハロプロの未来が詰まっている。特にモーニング娘。の北川莉央とアンジュルムの伊勢鈴蘭の二人。研修生ではなくオーディションから加わってきたメンバーの存在感は昨日の武道館において、宮本佳林、高木紗友希、小田さくら、竹内朱莉、段原瑠々など並み居る歌唱力の猛者たちにも引けを取らない魅力に輝いていた。

次世代のエースと目されている段原瑠々、井上玲音、上國料萌衣、山﨑夢羽の更に次の世代、お笑い第7世代が彼女たちだとしたら第8世代的な子たちが既に一定の地位を築きだしているのだ。

しかし、そんな若手を簡単には「台頭させないぞ」と昨日も圧巻のデュエットを披露した小田さくら、高木紗友希の大人げないパフォーマンスも「最高だなぁ」と同時に楽しめるのがハロプロの深みなんだと思う今日この頃でありました。

ハロプロっていいなぁ。

いいなと思ったら応援しよう!

円衣めがね
全て無料で読めますが、「面白かった!」「すき!」なんて思ってくれたら気持ちだけでもサポート貰えると喜びます。

この記事が参加している募集