にゃあ日記11
階段下でにゃあが佇む姿を撮影した日付は四月十五日。
写真フォルダのにゃあは、こちらを見てはいるようで何処か遠くを見ているよう。
にゃあが忽然と姿を消して意気消沈する私に、今まで封じ込めが機能していたと思えたコロナは、この頃から遠慮がなくなり容赦なく生活に影を落とす。
<まさかこんなことになるとは。>
弱り目に祟り目
感染者が増えるとともに、街から人が消え電気が消え外に怪物
でも徘徊しているのかと思うほどに静寂が際立った。
辛さに順位をつけることほど
不毛なことはないが
医療従事者や感染者に並んでBAR経営者も辛い状況にいる人上位に入るのではと馬鹿な考えもした。
<いよいよピンチ>
個人事業主、特にお酒を取り扱う飲食店はだんだんと追い詰められるなか、国が救済策として事業支援という体裁で対象者には一定額の給付金を付与することとなる。
まさに渡りに船、船に乗るにも船賃がいるこを思えば
大変ありがたい救済策だと思って
マスターは船に並んだ。
季節は五月
給付金の申請に間違いがあるから不備を確認するよう促すメールが届く。
これで二回目の間違いだと不備のやり直しに意気消沈する。
「何が間違っているのかもよくわからん」
この時期、全国にはこんな人が沢山いたことだろう。
仕事はできない、しちゃいけない
そもそもこの状況下で呑ませてくれと馴染みの客から連絡などあるわけもなく自分には、人望がないのではと自信も消失した。
以前、にゃあも姿を消したまま。
給付金の受け取りも未だ叶わず
世の儚さを憐れむバーテンダーは
蝶の鍵束を眺めて寝落ちした。
12へつづく