にゃあ日記3
元号が変わっても住まいの周辺環境に何も変わりはなく、住居はそれなりに騒がしい場所にあった。
自宅は大阪と和歌山を繋ぐ主要幹線道路の側にあり駅こそ遠いが車でのアクセスは比較的恵まれた場所にある。
周りは古い戸建てと小さな畑が隣接してあってベランダからは寂れた公園も一望できた。
世帯数はそれなりのマンションだが皆一様に他人に無関心な様子で、マスターもご多分にもれず同じムジナで正直なところ今の住まいはあまり好きではないと言う。
集合ポストには、ファミリー向けの記載はあるものの子供はほとんど見かけない。
また河川の高架橋から分岐した
一方通行の側道がこの区画の数少ない侵入口で、幹線から聴こえる騒音に反して住居エリアは、車の往来が少ない辺鄙な場所で時間の進み方が他所とは違う錯誤すら感じる。
マスターはこの辺鄙なマンションの二階に住んでいて、令和になっても例の猫は決まって畑方向から忍んでやって来た。
畑には物置や幾つかのプランターが置いてあり、猫は普段その何処かに身を隠しているのだろうか。
秘密の隠れ場より颯爽と現れ面格子で囲んだマンションの階段を駆け上がる。
人間とは違い足音なく二階までやってきていつも通り私にだけ関心を向ける。
あいも変わらず姿を見せるが近づくなと距離をとる。
〈あなたは特別です。〉
できれば見るだけにしてください。
そんな態度をとりつつも、猫は距離を少しずつ詰めてきて存在を誇示するようになった。
これはコロナ禍以前のお話、ソーシャルディスタンスは今のところ問題なし。
4へつづく