午前3時のコンクリート
硬くて冷たいコンクリートの上に寝ている。
植え込み越しに見える空は星ひとつない曇り空だ。
清掃車やバイクが何度も道路を走る。
眠らない町なんだなと思った。
コンビニのトイレに行った。
深夜1時でも人が街灯の下を歩いている。
大学前の通りはいつもごった返しているのに、この時間は異世界のように人の気配がない。
どうして夜の10時から並んでいないといけないんだろう、と愚痴を言いあった。ネット予約か、せめて整理券にすればいいのにね。
シオリとマナノとヤマちゃんと私がコンクリートの上に寝そべっている理由は、サークルの部屋を取るための列に並んでいるからである。
サークルで使用する場所が朝8時に予約開始であるために、夜の10時から外に並んで、一夜を明かし、場所を確保するのである。
硬くて冷たいコンクリートの上に寝ている。
植え込み越しに見える空は星ひとつない曇り空だ。
夜中の3時にふと目を覚ましたら、誰も起きていなかった。他のサークルの人も段ボールに包まっている。
風が意地悪で、袖から出ている手が冷たくなっていた。上下ヒートテックを着ていても寒かった。
前で寝ているあの人はパーカーしか着てないけれど風邪を引かないのだろうか。
硬くて冷たいコンクリートの上に寝ている。
植え込み越しに見える空は星ひとつない曇り空だ。
早朝の5時を過ぎて、空が白みだした。日の出まであと1時間弱である。
兼サー先の深夜練を終えたジロウが、様子を見に来てくれた。シオリとマナノとヤマちゃんと私が先輩からもらった差し入れをジロウに分けた。
突然、陽の光が頰に当たった。
たいして眠っていないのに、目が覚めた。
シオリとマナノとヤマちゃんと私は、たいした話もせずに、眠ったり起きたりしながら、寒い一夜を明かした。
私たちは、浅くもなく、それでいて決して深くもない関係で、大事なサークルの仲間だなぁ
としみじみ思った。
硬くて冷たいコンクリートと過ごした、二度とはやって来ることのない、大学2年生10月末の夜10時から朝8時。
寒くて暗くて、硬くて冷たくて、あんまり眠れなかったけれど、
すぐに美化されて
美しい青春の1ページになるはずに違いない、大学2年生の10月の終わり。