うみかぜひかり「ひとつ星」のゆいなちゃんに心持ってかれてしまった為ここで書かせて下さい
先月の文フリで買って読んだ作品の感想です。「うみかぜひかり」は文フリ京都、またオンラインでも販売されます。これから読むよーー、1ミリも情報いらん、という方はここでブラウザバックをお願いします。そして無垢な状態で作品にしてやられることを推奨いたします。
もしほんの出来心で人を傷つけてしまい
相手の心の安寧を祈ることも命の継続を祈ることもしてこなかったとして。
過ちを忘れてそのまま大人になってしまうこともできるかもしれない。
服についてしまったシミを上着などで隠して過ごすのと同じだ。
言わなければわからない、へーきだよ。
でも傷つけたことも謝らなかったことも消えてなくなることはない。
学校に行かれなくなった可哀想な子。
優衣奈ちゃんの家に注がれるのは同情と好奇の視線。
学校での優衣奈ちゃんは周りの誰よりもキラキラしていたはずだ。
だからこそ10代の女の子がガラリと変わる表記は辛かった。
老婆心ながら書き手の心を心配したぐらいだ。
たった一行。たった一言で私は主人公ではない優衣奈ちゃんに
感情移入してしまった。そのくらい抉られる一文だった。
何様かと思わるだろうがその一文への書き手の覚悟まで見てしまった。
家で過ごす日々に優衣奈ちゃんの家庭ではどんな空気が流れていたのかにまで想像を巡らせてしまう。
そして嫌でも思い起こさせるのだ。
私にもある記憶の奥のシミ。消えない乾ききった汚れを。
主人公たちは前に進み始める。
彼女らが優衣奈ちゃんの「これから」と交錯するかは分からない。
優衣奈ちゃんの心や身体に流れる時間は同級生からも世間からも置き去りにされるかも知れない。
それでももし救いがあるとすれば優衣奈ちゃんが自らの意思で主人公の前に姿を現し大きな十字架をその手で突き付け刻印した事だろう。
優衣奈ちゃんがかつて主人公にされたように。
上記が関かおる氏の著作「ひとつ星」と掌編「さよなら」を読んだ感想だと言うのならかなり的外れな内容になる。
作品は田舎の町の伝説に思春期の少女のわだかまりを絡めたストーリー。私が感情移入してしまった優衣奈ちゃんは主人公ではない。
だが氏によって極限まで描写された優衣奈ちゃん(しかもたった一文で)は主人公のほんの出来心の重大さと誰もが持つであろう「脛に疵」をぐすぐすと疼かせるのだ。