現役高校生・大学生が「ばね」製造の"ウラガワ"を徹底調査!Part.01 "ひと"と「ばね」
こんにちは!Potentialの取材担当のまりこです!現在高校3年生で、来年度から大学生になります✨。前回の金剛鋲螺株式会社様への取材に引き続き、Potential 代表の“るな”と共に現地取材をしてきました!
今回の取材先は、「ばね」を専門に加工、販売していらっしゃる「フセハツ工業株式会社」様です。現役高校生と大学生の視点から「ばね」製作の"ウラガワ"を徹底調査します!
企業情報
ばねの総合メーカーフセハツ工業株式会社様は圧縮ばねや引張ばね、ねじりコイルばねなどの大小様々なねじを取り扱い、多様なユーザーに合う商品を販売している。「弾む原理を進化させ小さくても大きな使命と責任感を持って社会に貢献すべし」を経営理念とし、シンプルだが、時代に合わせて進化する「ばね」を一つ一つ大切に作っている。
〒577-0046 東大阪市西堤本通西1丁目3-43
TEL 06-6789-5531
FAX 06-6789-5536
Email fhk@fusehatsu.co.jp
営業時間 8:30〜17:30
詳しくはこちら↓
フセハツ株式会社様公式HP
現地でインタビュー!
2月5日月曜日、フセハツ工業株式会社様の一部屋をお借りして、代表取締役社長の吉村篤様にお話を伺いました。
創設秘話
まりこ:フセハツ工業株式会社様は、いつからばねの仕事をなさっていたのですか?
吉村:私の祖父らが作った会社なのですが、元々沖縄の奄美大島の龍郷村に住んでいたんです。
まりこ:かなり遠いところから移住したんですね。
吉村:戦争が終わってから創業したそうです。こちら創業メンバーです。当時は町工場も多く、ばねの会社も多かったそうです。創業当時はまだ日本ではなく、アメリカに占領されており、食べるものも仕事もありませんでした。だから、大阪に来て仕事を始めました。密入国みたいな感じです。(笑)
まりこ:かなりドラマチックですね。
吉村:皆さん、苦労して創業されて、この中の何人かは独立してばね屋さんを開いて、創業当時は十数人がいたそうです。祖父は独立の支援をしていました。中央左で腕組みしているのが祖父です。
まりこ:写真からすごく威厳を感じます!
「フセハツ」の由来
吉村:今は「フセハツ」のように名にカタカナを使っていますが、元々は株式会社布施発條工業所と書いていました。
現在、ここは東大阪市ですが、創業当時は布施市といわれていました。
まりこ:会社名は地名から来ているんですね。
吉村:また、発條(はつじょう)は「ばね」のことを指します。あんまり聞き馴染みないかもしれませんが、日本一大きなばね屋さんは日本発條といって、上場会社なんですよ。
「ばね」のあれこれ
まりこ:ばねと聞くとはくるくるしているイメージがあるんですが、螺旋状だからばねという訳ではないのですか?
吉村:そんなことはありません。板バネや空気バネという物もあります。例えば、空気バネという空気のクッションを利用した産業用のばねは、中の空気を圧縮して、ダンパーや車のドアを緩くするためのばねです。
まりこ:こんな「ばね」もあるんですね。
押しばね
吉村:空気ばねは我が社では製造していませんが、ばねの形状として代表的なものは「押しばね」です。名前の通り、押して使うばねです。
線が太いと強くなり、細いと弱くなります。
中心径が大きくなると緩くなり、小さくなるとキツくなります。また、隙間が多ければ緩くなり、少なくなるほど固くなります。
引っ張りばね
吉村:また、代表的な形状として「引っ張りばね」があります。自転車のスタンドなどについているもので、名前の通り引っ張って使います。
まりこ:言われてみないと、分からないです。
私も学生で自転車に乗る機会があるので、一気に身近に感じます。
まりこ:押しばねと引っ張りばねの作り方の違いなんですか?
吉村:「押しばね」は押し上げてつくり、「引っ張りばね」は引き上げてつくります。また、引っ張りばねはフックがあるのも特徴です。引っ張り上げる密着部分の力をどれだけキツく押さえることで力の調整をしています。設計次第でキツく巻くこともできれば、弱く巻くこともできます。
まりこ:どうやって隙間の調整をしているんですか。
吉村: ピッチツールという部品で(ばねの間に刺さるようにして)隙間を調整しています。上から鎖をつけるような形でつけています。
ねじりばね
吉村:また、我が社では「ねじりばね」も製造しています。両端を引っ掛けて捻って作っています。
産業機械に使われることが多いですが、女性が髪をまとめるために使うクリップにも使われています。今髪につけているものも「ねじりばね」が使われていると思いますよ。
まりこ:あっ。ほんとだ。
リングばね
吉村:そしてこれは「リングばね」です。隙間を開いたり閉じたりして使います。
まりこ:キーホルダーに使われるものですか?
吉村:二重リングとかはそうですね。
うちが作っているのは一重リングで洗濯バサミとかに使われています。
まりこ:あー!ありますね。洗濯ばさみの真ん中に使われてますよね。あれって、ばねなんですね。
吉村:そうなんです。あんまりばねが使われているというイメージがないですよね。割と知らない人も多いんです。
最近の洗濯バサミのばねは海外で使われているんですけど、日本でも一部は作ってます。
吉村:今では国産はほとんど我が社が作っています。巻いたものを安く済ませないといけないので、納品するのは神戸や大阪の刑務所の囚人の方にです。彼らに内職として組み立ててもらっています。
吉村: リングばねは上から止めるように切断します。スピード勝負ですね。
一つからもつくる「あなたの求めるねじ」
吉村:量産だけでなく、一個からの部品も作っているんです。例えば、バイクが趣味という人はオリジナルのサスペンションを作ったり、個人的に面白いなと思ったのは、ラジコンの世界選手権があるので、そのデバイスを作ってほしいと言われた時です。
まりこ:ラジコンのコントローラーですか!?
吉村:そうです。これよりもうちょっと軽くとか、なんでも、自分だけがわかる作動感覚を希望していらっしゃって。
るな: 翌日変わってそう。(笑)
りこ:ここまでくるとオーダーメイドでつくってらっしゃいますね!
オーダーメイドのばねはいつも使っている機械を使うんですか?
吉村: そういうときもあります。基本的に機械ごとに何をつくるのか決まっていまして、小さいばねを作る機械、太いばねを作る機械も少し違います。機械は量産する物なので量産する時は機械を使いますが、ラジコンのばねのような個数が少ないときは手巻きの時もあります。
まりこ:手巻きってどうやってするんですか?
吉村:昔の職人さんみたいに、ピンセット一本で器用に巻いているんです。そういう技術分野があって、今でも金属ばね製造技能士資格の試験にも手加工の試験があります。持っていく物は定められているんですが、自分の道具は自分で持っていき、ばねをその場で作ります。
まりこ:他にもオーダーメイドのような注文はありましたか?
吉村:実際にF1のレースに必要なばねの注文もありました。そのばねが使われた車体にはうちの会社のステッカーも貼りました。それは機械で作ったのですが、それこそ「ばね」は色んな産業の中で皆さんが気づかないところに使われていると感じました。
職場を人に合わせる
吉村:これは我が社の従業員の年齢分布です。
左の円グラフは私が社長に就任した当初のものでして、20代はたった一人でした。そして、二人に一人は60や70代の職員の方で高齢化が進んでいました。今では男女、各年代満遍なくいらっしゃいます。20代、30代が半数ぐらいで、女性の比率が34%で三人に一人が女性です。パートではなく現場の技術者としてや中には、製造部長の方もいらっしゃいます。
まりこ:すごいですね!!そうなると、男性がやるような力がいる作業は大丈夫なんですか?
吉村:昔は男の人しかできなかったですが、微妙な調整作業でできるようにするなどの色々工夫して、今では女性でもできるようになりました。
まりこ:逆に男の人しかできない作業はあるんですか?
吉村:あります。例えば、太いばねを最初曲げるのは大変なので、最近ちょっと女性陣増えすぎて男性陣を増やして欲しいと言われているんです。笑
基本誰でもできるように作業台を作ったり、ここ改善できないか相談したら、働きやすいように改善しています。得手不得手があるので、小さいバネも器用な人は男女関係なくつくってくださっています。
まりこ:では、障害を持ってらっしゃる方は特定の仕事が決まっていたりはしないんですか?
吉村:障害を持っているから、特定の仕事につくということはありません。皆さん正社員ですし、給料も同じです。たまに会話が上手くいかなかった時は、間に人が入って三角話法で会話してます。全員で四人いらっしゃいますね。でも、本当に障害者の方なのかな?と思う時もあります。また、60代程からの採用も行なっています。
まりこ:シニアからの採用があるんですか?採用と聞くと、学生さんからの採用が思いつきやすいですが。
吉村:確かに基本的に新卒採用をメインでしていますが、大阪府がシニア世代をの採用を進めているんです。熟練工というわけではなく、ものづくりに興味がある人や大企業から早期退職した人などがいらっしゃいます。色んな年齢の人を縁があれば採用するという形で行っています。
変えるところは変える
まりこ:会社をお父さんから継いだんですよね。
吉村:そうですね。でも、変えるところは変えて。経営理念以外は全部変えました。
まりこ:かなり大胆なことだと思うんですが、大変じゃなかったですか?
吉村:大変でしたよ。でも営業も高齢化してて、お客さんもいらっしゃいますし、小さい頃からずっとみてきたので、守っていくために動きました。まず、一人でもできることから始めました。会社紹介が軽くある形だけのホームページを作成しなおしました。
まりこ:反響はいつ頃から出始めたんですか?
吉村:ホームページをページ数を増やしてから増えてきたと思います。土台となるホームページをしっかりしていました。
るな:地道にやっていって、何かに繋がればいいなという思いでやってらっしゃったということですか?
吉村:そうですね。
ものづくりを知らない人が多すぎる?!
まりこ:確かに最近はものづくりに関して知らない人が多い気がします。私もこの仕事をするまで、ものづくりに関する知識や経験はなかったです。特に東大阪などのいわゆる下町と言われる所は近寄りがたい感じがして、工場などには行ったことなかったです。何か学生や子供向けて何かイベントとかやってらっしゃいますか。
吉村:例えば、「こーばへ行こう!2023」というオープンファクトリーを開いて自由に見学しても大丈夫なようなイベントが東大阪で行われていて、それに参加しました。今年は34社ほどの工場が参加していて、約1万人の方が参加していたそうです。
吉村: 地元の小学校にものづくり体験教室を行いました。NPO法人が東大阪市から委託されたイベントがあって、紙をつかった工作でした。
紙にもばねの力を蓄えて放出する力があるので、設計次第でばねになります。
点線とかが書いてあって、作り方を教えていました。
まりこ:これは誰が設計したのですか?
吉村:私が設計しました。のりとハサミがあればできるワークショップでして、もし遅れている子がいたら、協力して作りましょう。失敗したら最後までやりましょう。という思いで行っています。
まりこ:素晴らしいですね!!✨
なんだか虹色の階段を落として遊ぶおもちゃ(レインボースプリング)に似ていますね。
吉村:そうですね。皆さんの周りにあるような紙でも「ばね」になるんですよ。
「ばね」でドラマ出演!?
まりこ:かなり地域の方との交流をなさっているんですね。他に何か活動はなさってるんですか。
吉村:そうですね、東大阪市を舞台にした朝ドラの「舞い上がれ」のポスターにモデルの一人として出させていただきましたね。左にあるのが私ですね。
まりこ:本当だ!すごい!東大阪市一丸となって盛り上げているのが伝わりますね。
吉村:日韓の韓国のボーイスカウト。学生のインターンシップ。SDGSのビジネスの大会にも製造業では我が社だけが参加しました。また、FC大阪というサッカーチームのスポンサーもしています。また、NHKで2日にわたって放送された番組に関わりました。
まりこ:そんなことあるんですか!?
吉村:南海トラフをテーマにしたドラマ仕立ての番組で、我が社の工場がドラマの現場に使われたんです。町工場の専門家として監修しました。専門用語とかも出てくるので、町工場の職員としての演技指導も行いました。
まりこ:工場での仕事や活動がそんなところに繋がってくるんですね。
活動根源は楽しいから。
まりこ:TwitterやYouTube などのSNSで発信を頻繁になさっていますが、モチベーションはどこからきてるんですか。
吉村:そうですね、やっぱり楽しいですね。反応があるので。
まりこ:そうなんですね。でも、すごく共感できます。私もInstagram やってるんですけど、いいねきたら嬉しいです。
吉村:X(旧:Twitter)は6万2000人ほどフォローしてくださって、色んな人が感想をくれるのが嬉しいです。そこで繋がることもあります。
ねじの仕事の魅力
まりこ:ねじ製造の魅力は何だと思いますか。
吉村:色んな産業に使われていて、目に見えない力をコントールして行うのはばね一つの大きな特徴なので、それが面白いと思います。これからもどんどん変わっていきますが、なくなることないですから。
まりこ:なくなったら、生活に困りますもんね!
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