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住民税のあれやこれやに関する考察

はじめに

今日、仕事の休憩がてらTwitterを眺めていたら興味深いツィートが流れてきた。いわく「毎月の給与から住民税を天引きされているにもかかわらず、役所から督促状が来た」とのことらしい。

失礼ながら全く存じ上げない方ではあるのだが、「会社が天引きしているのに未納付の督促状が会社ではなく個人宛……妙だな……」という所から興味を惹かれ、もし会社が悪さをしているのであればどうやった可能性があるだろうかと何の気なしに呟いたところ思わぬ反響を得たので、改めて論点整理を行った上で思いつく限りの可能性について考察していきたいと思う。

なお、本記事は本人の証言に嘘偽りがないことを前提にしているので

・毎月の給与から住民税相当額が天引きされている
・天引き分含め、会社としてこの方の住民税は一切納付していない
・にもかかわらず会社には未納の督促状は来ていない
・現時点で普通徴収

という前提のもとに考察を進めていく一種の思考実験であり、本人、会社共に何ら貶める意図が無いことをご了承いただきたい。

住民税決定の流れ

まず本題に入る前に住民税の1年間の流れをざっくり整理する。

1.給与支払報告書の提出


会社は令和4年1月~12月支給の給与・賞与を集計し、令和5年1月末までに給与支払報告書という形で各自治体に源泉徴収票を提出する。この際、会社は各従業員の新年度の住民税納付方法について、特別徴収(給料から天引き)か普通徴収(個人で支払)かを選択できる。

なお、最近は取りっぱぐれが無いように普通徴収での提出は結構難しくなっており、自治体によっては普通徴収で出しても勝手に特別徴収にしてくる所もある(後述する事とも関わってくる)。

2.確定申告

副業をしている人や給与所得以外の所得がある人は確定申告を行うことによって最終的な所得が決定。この所得を元に自治体は住民税の金額を算出する。

3.住民税決定通知書

大体5月頃、各自治体から会社に住民税決定通知書というものが届く。この中に特別徴収の各従業員の、1年間に納付する税金とそれを12分割した金額(=毎月の天引き額)が記載されており、会社はこの金額を毎月給料から天引きして翌月10日までに納付する。
ちなみに住民税の新年度は6月分からである。

4.普通徴収の人

普通徴収の人は個人宛に自治体から住民税決定通知書と納付書が届くので、これを年4回に分けて個人で住民税を納付する。

以上が住民税の一年間の流れとなる。論点整理をしていて重要なことに気付いたのだが、特別徴収にしろ普通徴収にしろ個人分の税額通知書を受け取る(会社経由または自治体から直接)はずなので、これをどのような形で受け取ったかでも可能性を絞り込むことが出来るだろう(詳しくは後述)。

天引き額の把握方法

「毎月の給与から住民税が天引きされていた」ということで、最初の疑問にして論点は毎月の天引き額をどのように知ったのかということだ。ここでは2パターンの方法が考えられる。各パターンごとに会社がどのような行動をとった可能性があるかも含めて考えてみよう。

1.給与支払報告書を特別徴収で提出

この場合上記の流れの通りで、最もシンプルなパターンと言える。流れとしては

①給与支払報告書を特別徴収で提出
②会社に住民税決定通知書が届く
③毎月の天引き額を把握したタイミングで特別徴収→普通徴収への異動届を提出する
④何食わぬ顔で毎月の給与から住民税を天引きし続ける

これはTwitterで最初に呟いた方法だ。問題としては異動届の提出に際して普通徴収にする理由を記載する必要があることだろう。

特別徴収→普通徴収の異動届

2.給与支払報告書を普通徴収で提出

次のパターンは給与支払報告書を普通徴収で提出する方法だ。この場合住民税の天引き額が分からないと思われる人もいるかもしれないが、電話一本であっさりと教えてくれる。理由としては「給与支払報告書を普通徴収で提出したが、特別徴収に切り替えたいので毎月の天引き額を教えてくれ。」とでも言えば良い。もちろんその上で普通徴収→特別徴収(上とは逆)の異動届は提出しない

この方法の問題点は最初の給与支払報告書を普通徴収で提出するという所にある。昨今自治体では住民税の取りっぱぐれが無いように、給与支払報告書を普通徴収で提出するのが難しくなっているからだ。自治体によっては普通徴収で提出しても勝手に特別徴収に切り替えてくる所もある。私が最初のツィートで特別徴収前提の方法論を呟いたのもこの為だ。ただし普通徴収で提出する方法が無い訳では無い。

普通徴収の提出方法

上記の通り昨今給与支払報告書を提出するにあたり、普通徴収(本人納付)で給与支払報告書を提出するのは難しくなっているのだが、普通徴収となる理由を記載して提出することによりそれが認められる。以下に所沢市の給与支払報告書のリンクを貼っておく。

所沢市では普通徴収で提出する際の理由として

①従業員が少ない
②別の事業所で特別徴収している
③給与が少なくて天引きできない
④給与が不定期
⑤事業専従者
⑥退職者・休職者

の6つが記載されている。ここで注目なのが④の給与が不定期だ。本来は船乗りや派遣社員、アルバイトなど、実際に給料が不定期で毎月天引きするのが難しい人が前提となる理由だが、勤務実態まで役所が把握している訳では無いので実情としては④の理由で普通徴収で提出できるケースも多い。

給与支払報告書を特別徴収で提出し、後から特別→普通の異動届を出す1のパターンであっても同様の理由で提出すれば良い。

会社に非が無いという可能性は無いのか?

ここまで本人の証言、またそれに基づく前提をもとに会社がどのようなことを行った可能性があるのかを考察してきた。

いずれにしてもこれが本当であれば現在普通徴収、かつ毎月の給与から住民税が天引きという矛盾した状況を成立させるためにはどこかしらで会社の意図が介在せざるをえず、会社の経理事務がうっかりしていましたということは中々考えにくいのだが、それでも会社に非が無いという可能性は本当に無いのかも最後に合わせて検証しなければならないだろう。

可能性として一番考えられるケースは以下の通りだ。

①給与支払報告書を普通徴収で提出
②普通徴収から特別徴収への異動届を提出
③実際には特別徴収へ切り替わっていないにもかかわらず、天引きし続けていた

この中でポイントは②だ。法人の場合基本的に顧問税理士が付いているため、異動届の提出も顧問税理士を通して提出するケースが考えられる。この際税理士事務所がうっかり異動届を出し忘れていた場合、当然ながら特別徴収に切り替わることは無い。

また、特別徴収への異動届を提出した段階で本来会社の毎月の住民税納付額は変わってくるのだが、経理に疎い零細企業などでは最初に来た納付書を毎月支払えばOKと考えている会社はごまんといる。また同時に給与からは税理士事務所伝に聞いた毎月の住民税を言われるがままに天引きする。それでいて役所からは特に何も言われないのだから会社としては問題に気付くはずもない。

この様なミスにミスを重ねたケースをあり得ないと思う人もいるかもしれない。しかし書いていてなんだが実際意外とこういう状況は無くはない。当然この場合一番悪いのは税理士事務所となる。

おわりに

いかがだろうか。会社が主体となって悪事を働いていた可能性、会社に非が無い訳では無いが、ミスにミスが重なって起こってしまった事故の可能性。様々な可能性について考察をしてみた。

一見本人のあずかり知らぬ所でこのようなことが起こっているというのも恐ろしい話ではあるが、ただ一点この人に瑕疵の可能性があったとすれば個人宛の住民税決定通知書はどうした?ということだ。

特別徴収であれ普通徴収であれ、会社経由または自治体から直接本人宛に個人の住民税額通知書を受け取ることになる。それが普通徴収(年4回)の通知書であればその段階で気付くべきだったかもしれない。なお、逆に特別徴収(年12回)の通知書を会社から受け取っていたにもかかわらず普通徴収になっていたのであれば完全に会社側の意図的な犯行だ(仮にそれすら受け取っていないという事であればなおのこと質が悪い)。

いずれにしても与えられた情報から私が推測できるのはこの辺りまでとなりそうだ。私の知識不足故に何か重大な見落としがあった場合にはどうかご寛恕いただきたい。

また、あくまで本記事は与えられた情報を元にした「こうなったらこういう可能性がある」という思考実験の類であり、本人・会社双方共に何ら貶める意図はないことを重ねて申し上げておく。続報を待ちつつ本稿の締めとしたいと思う。

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