見出し画像

令和に三冠馬は現れるのか

1.90年代の競馬が好きな平成生まれ

私の趣味の一つに競馬があります。
毎週メインレースを500~1000円程度買い、当てたり外したりして毎年数千円程度のプラスに持っていっています。
毎週やるようになった最初の頃は、YouTubeで2011~2013年のJRAレースCMを毎日のように見ていました。

2011年「20th Century's Boy」編
https://youtu.be/7AiJq_Kg-bs

2012年「The Winner」編
https://youtu.be/HlnOCruVH0U

2013年「The Legend」編
https://youtu.be/ccgU4uiGY9k

最近のものでは、「夢の第11レース」や「夢のvs」も同系統で好みです。

「夢の第11レース」
https://youtu.be/kcv3D26GjWA

「夢のvs」日本ダービー編
https://youtu.be/fNtyk4DiGBk

このように「90年代の日本競馬って面白かったんだなあ…」と思いながら今の競馬を毎週観戦していると、ふと一つの考えが浮かんできます。

それは、「令和に三冠馬は現れるのか?」ということ。

2.令和に三冠馬は現れないかもしれない

三冠馬。
それは、その年に3歳になった馬たちで争われる
・皐月賞(中山芝内2000m)
・日本ダービー(東京芝2400m)
・菊花賞(京都芝外3000m)
の三つのレースを全て制した馬に与えられる称号です。

昨年亡くなったディープインパクトをはじめ、昭和に4頭、平成に3頭の三冠馬が誕生しています。
昨年は4月開催の皐月賞がまだ平成だったので、2020年は「令和最初のクラシック三冠チャレンジ」が行われる年となります。

果たして、この令和の時代に三冠馬は現れるのか。競馬ファンなら、一度は考えたことがあるかもしれません。
しかし、私の考えは「無理かもしれない」です。

3.菊花賞のプレゼンスの低下

一番大きな理由は「菊花賞のプレゼンスが下がった」ことにあると思います。

競馬の世界も多様性の時代を迎えています。日本ダービーを終えた3歳馬は、必ずしも菊花賞を秋の最大目標とせず、天皇賞・秋やマイルチャンピオンシップといった中距離路線、マイル路線へ殴り込みを入れるケースが増えています。

具体的にデータの話をしますと、2010~2019年までの過去10年間で、日本ダービーの上位3頭が菊花賞に出走したケースは、30頭中12頭。上位3頭が全頭菊花賞に出走したのは、2011年が最後です(奇しくもこの年は、オルフェーヴルが三冠を達成した年でもあります)。
特にダービー馬は、2015年から直近の2019年まで連続して未出走です。

この結果、皐月賞や日本ダービーで好成績を残した馬が菊花賞には出走しない、というケースが年々増えてきています。これでは三冠馬は誕生しようがありません。

4.日本馬は世界に羽ばたいている、とはいえ

一方、日本ダービーを目指した3歳馬が秋に中距離路線・マイル路線を目指すようになったこの傾向は、昨年日本馬が海外のGⅠ競走を8勝した活躍を考えると、「世界に通用する馬づくり」という点では成功していると言えます。
長距離戦を強いる菊花賞をいつまでもクラシック三冠レースの一つに設定すること自体が、国際的な競馬の潮流に合っていない、そういう声が上がっても不思議ではありません。

しかし、一介のしがない競馬ファンとして、私はそれでもなお「京都芝3000mの菊花賞を勝った三冠馬」が令和の時代に現れるのが見たい。淀の坂を二度下らなければ三冠馬ではない、とさえ言いたい。
それは長距離戦を観るのが好きだという理由もありますが、「菊花賞を勝てないと、凱旋門賞はなおさら勝てないのでは?」と考えているからでもあります。

5.凱旋門賞という壁

昨年日本馬が勝った8個の海外GⅠ競走のうち、凱旋門賞は含まれていません。
それどころか、凱旋門賞を勝った日本馬は未だいません。

凱旋門賞はパリロンシャン競馬場の芝2400mを舞台として行われる、世界最高峰のGⅠ競走の一つですが、同じ芝2400mで行われるGⅠ競走である日本ダービーやジャパンカップとは求められる適性、というよりスタミナの量が異なります。

よく好時計が出る馬場を「コンクリート馬場」と揶揄する人がいますが、好時計が出る馬場とは馬にとって走りやすい馬場であり、それはつまり足が着地したときの衝撃が小さい、十分な長さを持った芝が均等に生えそろっている状態を指します。
東京競馬場の芝は、馬場造園技術の発達もあり馬が故障しにくく、走りやすいように年々改良されています。一方、パリロンシャン競馬場の芝は東京競馬場よりも短く、土も固い。その上アップダウンも激しい。
(参考文献:小島友実『馬場のすべて教えます~JRA全コース徹底解説』競馬道OnLine選書)

同じ芝2400mでも、東京競馬場よりもパリロンシャン競馬場の方がよりスタミナを要求するコースであり、東京芝2400mを好走できる馬がパリロンシャン芝2400mを好走できるとは限らない。
むしろ、菊花賞を勝つくらいのスタミナがあるくらいではないと、太刀打ちできないのではないか――これが私の持論です。

(ちなみに、近年日本馬が多くの白星を獲得している香港のシャティン競馬場やドバイのメイダン競馬場は、東京競馬場のようなゴール前の上り坂もパリロンシャン競馬場のようなアップダウンもなく、平坦なコースです。)

6.チグハグに映る海外遠征

最後に私が指摘したいのは、近年の日本競馬界全体の潮流が中距離やマイルのGⅠで勝てる馬づくりに向かっていく一方で、それと全く毛色の異なる競走である凱旋門賞で勝つことも並行して目指していることです。

もっとも、競馬に携わる人たちは非常に多岐にわたりますし、香港やドバイに行く馬と凱旋門賞に出る馬は同じではないので、「ドバイで勝ちたい」と「凱旋門賞を勝ちたい」という相異なる目標が並立するのも不思議ではありません。
しかし、そうであれば、ドバイを勝つための馬づくりと並行して、凱旋門賞を勝つための馬づくりもなされるものではないでしょうか。

私は馬産関係者ではないので実情は分かりませんが、日本の馬場で芝2400mを上限として走ってきた馬が凱旋門賞に挑戦して惨敗するのを毎年見ていると、素人目にはどうも、凱旋門賞を勝つための馬づくりがなされているのかが分からない。
菊花賞を回避してまで凱旋門賞惨敗馬を量産するくらいだったら、クラシック三冠をきっちり菊花賞まで走れるようにして、その上で古馬になってから凱旋門賞を目指す方がはるかに勝率が上がりそうなのに、どうしてそれをしないんだろう?(オルフェーヴルみたいに)」と、メンバーが手薄になった近年の菊花賞を見るたびに思います。

令和の時代には、馬産技術がさらに向上して、私の疑問が雲散霧消するような、素晴らしい名馬が生まれることを期待したいですね。

以上、東西金杯を両方とも外した腹いせで書きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?