5日間かけて北海道の鉄道廃線代替バスを乗り回した話
2022年の9月9日~14日に、北海道の鉄道廃線代替バスを乗り回してきました。
乗った路線や使った切符などをメモしておきたいと思います。
0日目 前泊
【0日目の行程】
・自宅から羽田空港へ
・ADO037便
20:15羽田空港発→21:45新千歳空港着
・到着後「HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊きっぷ」を買う
・翌日の指定席特急券を確保する
・千歳線快速エアポート221号小樽行き
22:05新千歳空港発→22:45札幌着
・宿に到着(JRイン札幌北2条)
鋼の意思で仕事を定時に切り上げ、当日のうちに北海道入りしました。
昔なら寝台特急で上野から1日目のスタート地点まで直行できたんですけど、まあないものは仕方ないし、そういう違いを楽しむ旅でもありますからね。
夜の空港って宇宙みたいで好きです。
現在JR北海道では「HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊きっぷ」というお得なきっぷが発売されているため、新千歳空港駅に到着した瞬間に買いました。
https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Otoku/006811/
これは、JR北海道が北海道庁の助成金事業「ぐるっと北海道・公共交通利用促進キャンペーン」を活用して発売しているきっぷで、
①指定した日付から6日間、JR北海道管内の在来線特急・快速・普通列車の自由席が乗り降り自由。
②指定席券を4回まで無料で発券することができる。
③ジェイ・アールバス北海道のも乗り降り自由(ただし、札幌~小樽間以外の高速バスを除く)。
これだけの効果を発揮しながら値段が12,000円という恐ろしいきっぷです。
昨年同様、今年の夏季もものすごい速さで当初販売予定枚数を売り切りましたが、9月1日より再販されています。
えきねっと等での予約ができず、JR北海道管内の駅窓口や指定席券売機でのみ購入でき、しかも買った当日から使い始めることはできないきっぷですので、行ってみなければ買えるかどうかわからないという点で利用難易度が若干高いです。しかし効果は絶大ですので、前泊してでも入手した価値はあったと思っています。
なお「ぐるっと北海道・公共交通利用促進キャンペーン」では、鉄道以外に飛行機、フェリー、バス、タクシーでも割引クーポンを発売していますので、一般の旅行や帰省にも活用できる機会は多いでしょう。
新千歳や札幌発着の高速バスの往復きっぷが安いのは、帰省にはもってこいなんじゃないかと思いました。
詳しくは以下の特設ページへ。
https://www.hokkaido-rail-k.jp/guruttohokkaido/
余談ですが、今回の旅行のホテルはすべて大浴場付きです。
社会人が金で買える人権を惜しんではいけません。
1日目 胆振線・岩内線
【1日目の行程】
・函館本線特急北斗6号函館行き(指定席1回目使用)
8:43札幌発→10:28伊達紋別着
・道南バス胆振線倶知安行き
10:50伊達紋別発→13:14倶知安着 ¥1,760
・函館本線普通小樽行き
14:10倶知安発→14:22小沢着
・ニセコバス小沢線岩内ターミナル行き
15:05小沢発→15:29岩内ターミナル着 ¥470
・ニセコバス小沢線倶知安駅前行き
15:40岩内ターミナル発→16:04小沢着 ¥470
・函館本線普通倶知安行き
16:18小沢発→16:32倶知安着
・函館本線特急ニセコ札幌行き(指定席2回目使用)
17:33倶知安発→19:26札幌着
・十五夜だったのでJRタワー展望台でお月見
・ホテルへ
1-1.胆振線
翌日から鉄道廃線代替バスの乗り回しがようやく始まりました。
まずは昨日指定席を確保した北斗に乗って伊達紋別へ。
伊達紋別~倶知安間を結んでいた胆振線の代替バス、道南バス胆振線に乗りました。
伊達紋別から乗った場合、有珠山を眺めながら壮瞥町に入ります。標高が上がると電波も入らない真の一面のクソミドリに分け入り、広島峠で胆振から後志に地方が変わります。
すると今度は羊蹄山が見えるようになり、羊蹄山を後方にやり過ごすと続いてニセコ連峰が見られるようになり、ほどなくして倶知安駅に着きます。
景色の良さは今回の旅行の中でも屈指でしたが、「鉄道で広島峠を越えるのはしんどかっただろうな…有珠山も鉄道開業以来たびたび噴火したし、もしJR北海道が引き継いでいても2000年の噴火で間違いなく廃線だったろうな…」という感想を抱きました。
やはり自然は厳しい。
なお、道南バスは車内での運賃精算にPayPayが使えます。
1-2.岩内線
旧岩内線は、ニセコバス小沢線がその機能を代替しています。
岩内~雷電海岸~寿都、寿都~黒松内も通っていますので、未成区間をめぐることもできます。
私の出身が横須賀なので、港町にたどり着くと心なしか落ち着きます。海が見えて、かつそこに人の生活があるという安心感をおぼえます。さっきまで一面のクソミドリの真っただ中にいたからでしょうね。
1-3.特急ニセコ
さて1日目のメインディッシュは、特急ニセコでした。
ノースレインボー編成で倶知安駅にやってきた特急ニセコは、既に乗っていた鉄道ファンとこれから乗るファンでにぎわっていました。
※本記事ではなるべく鉄道ファンに対する表現を穏当なものにとどめたいと思います。
いやこれほんと、指定席が取れて幸運でしたよ。これに乗った機会は最初で最後になるんだろうな…
札幌に着いた後は、ちょうどその日が中秋の名月だったため、JRタワーの展望台で月を眺めながらラウンジで買ったサッポロクラシックを飲みました。
HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊きっぷを提示するとなんとこの展望台に無料で入場できます。札幌の夜景はいい(語彙)。
2日目 幌内線・羽幌線
【2日目の行程】
・函館本線特急オホーツク1号網走行き
6:56札幌発→7:23岩見沢着
・北海道中央バス22系統幾春別町行き
7:40岩見沢発→8:39幾春別町着 ¥570
・北海道中央バス22系統岩見沢行き
9:00幾春別町発→9:57岩見沢着 ¥570
・函館本線特急ライラック11号旭川行き
10:25岩見沢発→11:05深川着
・留萌本線普通留萌行き
11:10深川発→12:07留萌着
・沿岸バス留萌豊富線豊富行き
12:44留萌十字街発→16:04幌延着
「萌えっ子フリーきっぷ」使用で¥1,900
・宗谷本線特急サロベツ1号稚内行き
16:29幌延発→17:23稚内着
・ホテルへ(ドーミーイン稚内)
2-1.幌内線
2日目は羽幌線を乗り通すことを先に決めていました。しかし札幌の出発が少し遅い(9時台は「少し遅い」なのか?)のが気がかりだったため、札幌~深川間の廃線跡を巡ることができないか検討し、幌内線代替バスに乗りました。
幌内線代替バスは日曜日の朝でもイオン三笠店への利用者がそれなりの数いて、2人掛け座席の荷物占有も含めると座席は埋まっていました。
各地から小まめに乗客を拾い集めるのはバスの方が得意ですから、この地域はバス転換によってむしろ利便性が増したのかもしれません。
炭鉱が閉山しても街が生き残っている風景は、筑豊地方に似た雰囲気を感じます。
2-2.留萌本線
キモイ本線でした。
せめて立ち客はカバンを降ろすか網棚に乗せるかしてもらいたかったですね。自分の家の周りの路線でできることがなぜ旅先ではできないのでしょう。
周辺利用者が少なくなったから廃線になるとはいえ皆無ではなく、周辺利用者がいるからこそ我々もこうしてまだ鉄道の旅が続けられるのだということを、鉄オタはゆめゆめ忘れてはなりません。
2-3.羽幌線
沿岸バスが運行する羽幌線代替バスは、一部の便で豊富駅までの延長運航を行っています。ただそうすると駅到着から列車乗車までの待ち時間が短くなるので、本来の終着駅である幌延駅で降りました。
沿岸バスは全路線が1日~2日間乗り放題になる「萌えっ子フリーきっぷ」を販売しています。
通常価格でももちろんお得なのですが、先述の「ぐるっと北海道・公共交通利用促進キャンペーン」により3割引で販売中です。
1日券が1,900円となり、留萌→幌延の片道運賃(¥2,720)より安くなります。
絶景領域・萌えっ子フリーきっぷ(ぐるっと北海道割) (hokkaido-rail-k.jp)
留萌豊富線は羽幌線の鉄道遺構をそこかしこに発見できたほか、まるでスコットランドの海岸線のような日本離れした風景に癒されました(スコットランド行ったことないけど)。
この沿線風景は、フィリップ・スパーク《ハイランド讃歌》を聴きながら楽しんでもらえると嬉しいです。
ハイランド讃歌<br>演奏:ヨークシャー・ビルディング・ソサエティ・バンド<br><br>Hymn of the Highlands【ブラスバンド CD】 | CD/DVDブルーレイ,ブラスバンド | 吹奏楽専門ショップ「バンドパワー」 (bandpower.shop)
幌延からは特急サロベツで稚内へ向かいました。
キハ261系基本番台です。
なお、稚内は日曜定休の飲食店が多いので、夕食には少し苦労しました。
ただ何とかして出会えたお寿司屋さんが美味しかったので結果オーライです。今度は日曜日以外に行って、ほかのお店にも入ってみたいですね。
3日目 天北線
【3日目の行程表】
・宗谷バス天北宗谷岬線音威子府行き
9:39稚内発→14:25音威子府着 ¥4,070
・宗谷本線特急サロベツ4号旭川行き(指定席3回目使用)
15:03音威子府発→16:49旭川着
・富良野線普通富良野行き
17:47旭川発→18:57富良野着
・ホテルへ(富良野ナチュラクス)
3-1.天北線
天北線の廃線代替バスとして宗谷バスが運行している天北宗谷岬線は、2023年10月から浜頓別~音威子府間の運行を予約制のデマンド運行とすることが検討されています。
「天北宗谷岬線」新たな交通体系について | マイ広報紙 (mykoho.jp)
このような事実上の運行系統短縮の報を受けて「天北線乗りてえなあ」となったのが、今回の旅行の発端です。
乗り通す場合の運賃は4,070円ですが、稚内駅前の営業所で乗車券を購入できるので、降りるときに財布をバリバリゴソゴソする必要がありません。
声問から天北線を離れて宗谷岬へ向かい、その先は荒涼とした原野を抜けて鬼志別へ向かいます。
途中休憩は鬼志別・浜頓別・中頓別の3回。食事をとれる時間も店舗も近くにないので、昼食は乗車前に買っておくことをおすすめします。
4日目 池北線・相生線
【4日目の行程表】
・根室本線普通東鹿越行き
7:17富良野発→8:01東鹿越着
・根室本線代替バス新得行き
8:06東鹿越発→9:14新得着
・根室本線普通帯広行き
9:25新得発→10:20帯広着
・根室本線普通釧路行き
10:26帯広発→10:52池田着
・十勝バス陸別線陸別行き
10:58池田発→12:49陸別着 ¥1,880
・北見バス訓子府・陸別線北見行き
12:55陸別発→14:29北見着
北見バスフリーパスチケットで¥2,000
・北見バス開成・津別線津別行き
14:50北見発→15:42津別着
・北見バス美幌・津別線北見行き
15:55津別発→17:06北見着
・ホテルへ(ドーミーイン北見)
4-1.根室本線未乗区間
当初3日目は旭川に泊まろうと考えていました。
これは旭川→帯広間を拓殖バスの高速バス「ノースライナー」で移動しようと考えていたからです。
ノースライナーは三国峠経由が1日1往復、狩勝峠経由が1日3往復走っており、三国峠経由の便は十勝三股、糠平、上士幌と士幌線跡を疑似的にトレースすることができます。
ノースライナー号(帯広~旭川:予約制) - 北海道拓殖バス公式ホームページ (takubus.com)
さすがにタウシュベツ橋梁まで見学することはできませんが、十勝バスの一般路線バスでは糠平までしか行けませんから、十勝三股を経由できる経路は魅力的でした。
しかし、結局は根室本線の未乗区間である富良野~新得間をHOKKAIDO LOVE! 6日間周遊きっぷで乗り通すことにしました。
ノースライナーは恐らく今後数年で廃止されることはなさそうな一方で、根室本線の未乗区間は廃止が確定しているからです。
そうなると旭川から移動を開始した場合5時台になってしんどいので、乗車済み区間である富良野線を3日目の夜に回して宿を富良野に取りました。
通学時間帯だったこともあり、富良野~東鹿越・東鹿越~新得は座席のボックスがすべて埋まる程度に混雑していました。
まあ代替バスが近くの高校で学生を降ろした後は鉄オタしかいなかったのですが。
空いていればボックス席を占拠しても構わないんでしょうが、周辺利用者が来たら荷物を片付け、反対側の座席に置いていた足を床に戻すべきです。鉄道の存否はオタクの愛着ではなく周辺利用者の多寡によって決まるのですから、周辺利用者を蔑ろにする態度は乗車マナーに反すると言えるでしょう。
4-2.池北線
さて、根室本線で普通列車等を乗り継いで池田駅までやってきました。
続いての廃線巡りは池北線、またの名をちほく高原鉄道ふるさと銀河線です。
池北線跡は陸別以南を十勝バスが、陸別以北を北見バスが運行しています。
道東地区の交通機関は「ひがし北海道交通ネットワーク」を共同で構築しており、WILLER TRAVELで一般路線バスの乗車券も事前購入できます。
バスや鉄道で旅するひがし北海道交通ネットワーク|WILLER TRAVEL
阿寒湖や摩周湖、知床や納沙布岬へも行けますし、各地の空港から主要駅や観光地にも直接行けますから非常に便利です。
北見バスではフリーパスチケットが販売されており、これはジョルダン乗換案内のアプリで購入できます。
北海道北見バス 北見バスフリーパスチケット1日券 | ジョルダンモバイルチケット (jorudan.co.jp)
4-3.相生線
北見バスで運行している美幌・津別線が、相生線代替バスとして機能しています。せっかくフリーパスを買ったので津別まで行きました。
北見相生方面へは、津別町営バスがスクールバスの一般客混乗便として運行しています。(一部便は要予約)
バスについて (town.tsubetsu.hokkaido.jp)
今回は時間が合わなかったため見送りましたが、相生まで行けるというのが分かったのは収穫でした。
ちなみにこちらの津別町営バスターミナルですが、阿寒バスの特急「釧北号」が発着します。こちらもWILLER TRAVELで乗車予約できます。
北見地方はタマネギの収穫シーズンだったほか、大豆畑や甜菜畑も実りの時を迎えていました。
5日目 名寄本線・深名線
【5日目の行程表】
・石北本線特急オホーツク2号札幌行き
6:46北見発→7:41遠軽着
・北見バス遠軽線紋別行き
8:00遠軽発→9:25紋別着 ¥1,330
・北紋バス雄武線雄武高校行き
10:04紋別発→10:50興部着 ¥730
・名士バス興部線名寄行き
10:50興部発→12:20名寄着 ¥1,790
・JRバス深名線深川行き
12:56名寄発→16:13深川着
・函館本線特急カムイ32号札幌行き
16:19深川発→17:25札幌着(指定席4回目使用)
・千歳線快速エアポート176号新千歳空港行き
17:36札幌発→18:15新千歳空港着
・SKY726便羽田空港行き
19:10新千歳空港発→20:50羽田空港着 ¥12,640
5-1.名寄本線
5日目が最終日でしたが、待ち時間のなさという点では一番タイトだった気がします。欲張りました。
とはいえ昼飯も食いっぱぐれて新千歳で食えたのが吉野家というのはストイックすぎたので、次回からはもう少し食事時間を取りたいと思います。
名寄本線は3社のバス会社が以下の区間を運行しています。
・遠軽~紋別間:北見バス・北紋バスの共同運行
・紋別~興部間:北紋バス
・興部~名寄間:名士バス
一時期は名寄本線区間全線を乗り通せるフリーパスポートが発売されていたのですが、現在は発売されていません。
名寄線代替バスフリーパスポートのご案内について|組織|紋別市 (mombetsu.jp)
北見バスは湧網線の網走~常呂間、北紋バスは興浜南線と渚滑線、名士バスは美幸線の廃線代替バスも運行していますから、第2回廃線バス旅でもお世話になるはずです。
紋別~興部間の海沿いの区間には一部遺構が残っていました。
ちなみに行程表には興部での乗り換え時間が0分となっていますが、接続できるよう組まれていますのでご心配なく。
5-2.深名線
名寄ではJRバスに乗り換え、深名線を乗り通しました。
HOKKAIDO LOVE! 6日間周遊きっぷはJRバスにも乗れます。
幌加内町のそば畑はまさに収穫期で、黄金色の水田と赤銅色のそば畑の対比が美しかったです。
深川からは休みなく移動してしまい、気づいたら自宅にいました。
結果的には寂しくなって帰りたくなくなってしまうのを抑えられてよかったのかもしれませんが、今度行くときはもう少し新千歳空港あたりでゆったりできてもいいように思いました。
まあそう言いながらもまた無茶な行程組むんでしょうね、私は。
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