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片恋 #2000字のドラマ

登場人物

☆伊藤(30・男)
サラリーマン。真面目な性格で社内でも信頼が厚い。
☆藤沢(28・男)
頭の回転が速く器用。誰とでも分け隔てなく、笑みを絶やさず接するが、秘密主義な所も。
☆高山(28・男)
藤沢の大学時代の友人。明るくさっぱりとした性格で男女問わずモテる。
学生結婚した妻と小学1年生の男の子がいる。

S1:伊藤が勤めるオフィス(日中)

コピー機に出しっぱなしの資料を見た女1がオフィスを見渡す。
伊藤はデスクに座りパソコンに向かっている。

女1「(資料を片手に)これ誰のコピーですかー?」

伊藤「(しばらく気づかず間)あぁごめん、オレだ。」

女1「あれ、これ先週のですよ、午後からの会議資料ですよね。」

伊藤「あれ(資料を確認)あーーー間違えた。」

女1「あと今週は共有で出すから資料不要ってメール書いてありましたよ。あ、事前チェックですか。」

伊藤「いや、違うな普通に間違えた。」

女1「伊藤さんなんかありました?なんか今日らしくないですね。」

伊藤「はは、昨日あんまり寝てないからかな。コーヒーでも買ってくるわ。」

伊藤、自販機に向かう中、立ち止まる。

伊藤「(独り言)らしくない、か。」

S2:居酒屋(夕方)

貸し切りの部屋では同窓会が開かれている。人数は男女合わせて10人ほど。

高山「わりぃ!遅れた!」

高山がふすまを開ける。
様子を伺うように小学生の男の子が顔をのぞかせる。

男1「おー遅えよ!ってえ、子連れ!?」

高山「嫁が仕事終わんないみたいでさ。お前らの顔も見たかったしちょっとだけ来た!すぐ帰るよ。」

子供は同窓会メンバーと会話をしている。
藤沢、高山に声をかける。

藤沢「久しぶりー、元気そうだねー。」

高山「おーー!藤沢!(藤沢の横に座る。)お前、元気?じゃねぇよ、メール返せよ!元気なメールはオレずっと送ってんじゃん。むしろお前が元気なのかって話だよ。」

藤沢「元気元気ーちょっと高山構うの面倒だからスルーしてた。」

高山「おい!どうせモテにモテてオレのメールなんて返す暇ねぇんだろうよ。イケメンはこれだから。」

藤沢「いや高山のイケメンには負けるわ。イクメンも加わって最強じゃん。」

高山「韻踏んでんじゃねぇよ(笑う)。」

子供が藤沢に近づいてくる。

藤沢「(子供に)こんばんは、高山の友達の藤沢です。」

子供「こんばんは。」

S3:居酒屋近くの公園(夜)

子供と藤沢がブランコに乗っている。
高山が居酒屋外で電話が終わり、二人に駆け寄る。

高山「ありがとな藤沢。」

藤沢「ううん、全然。明日仕事だし、そろそろ抜けようかなと思ってたから。ちょうどよかった。」

高山「助かったわ。」

藤沢「奥さんから?」

高山「そう、仕事ひと段落したらしい。同窓会だったのにごめんって。謝んなくてもいいのにな、頑張ってんだからさ。(子供に笑顔で)さーーー帰るか!」

子供「いやだ、まだお兄ちゃんと遊ぶ!」

高山「もうお母さん帰って来るから、駅まで迎えに行こう。」

子供「えーーー。」

高山「お前すごいな、一瞬で懐かれてんじゃん。」

藤沢「まぁねー。奥さん、忙しいんだ。」

高山「そう、体壊さねぇかが正直心配。(子供の顔を見ながら)ぶっちゃけ今日ほんとはこっち顔出すのやめようかなと思ってたんだけどな。でもあとで俺が行けなかったこと、気にするだろうから。」

藤沢「何だこっちはついでかー。」

高山「いやそういうわけじゃねぇけど!」

藤沢「ははっ、わかってるよ。(少し間)奥さん思いなんだね。」

高山「(笑顔で)まぁなー。お前こそどうなんだよ彼女とか。」

藤沢「さーどうでしょ。」

高山「ほんと昔っから秘密主義だなー。じゃ行くわ、またな。お前ちゃんと連絡よこせよ!(子供と手をつなぎながら歩き始め、藤沢に手を振りながら笑顔で)じゃあな!」

藤沢「気が向いたらねー(笑顔で手を振る)(子供にも)ばいばーい。」

子供「(笑顔で)ばいばーい!」

S4:帰り道(夜)

藤沢歩きながら帰宅中。

S5:居酒屋近くの公園(回想)

子供が乗るブランコを押しながら会話する藤沢と子供。

藤沢「お父さんとお母さんのこと、好き?」

子供「うん、大好き!!」

S6:帰り道(夜)

藤沢、歩きながら少し笑みを浮かべる。
するとスマホに着信が来る。

藤沢「もしもし?」

S7:帰り道(夜)

藤沢と伊藤が並んで歩いている。

藤沢「何、もしかして心配だったとか?ヤキヤキしちゃう感じ?」

伊藤「何だヤキヤキって(笑)」

藤沢「やきもちってことー。」

伊藤「わかんねーよ。」

藤沢「わかれよー。」

伊藤立ち止まる。つられて藤沢も止まる。

伊藤「(藤沢の顔を見る)大丈夫だったか?」

藤沢「(伊藤の顔を見る、少しの間)あぁそっか、そっちの心配か。」

伊藤「見かけによらず繊細だからな、お前。」

藤沢「見かけによらずは余計でしょー?」

藤沢ゆっくり歩き始める。伊藤後ろに続く。

藤沢「(少し考えたあと空を見ながら)全然大丈夫なんだよ、もうとっくに、そんなの。
やっぱかっこいいなーとは正直思っちゃったけど、思っただけで。行動に移す何かじゃないっていうか。思い出にちゃんと昇華してた。

あの頃の若者は、結構しっかり大人になってますよ。」

伊藤、藤沢の背中を見つめる。

伊藤「そうか。」

藤沢「それにさ、こうやって心配して電話かけて来てくれる人が傍に居てくれる今が?最高に?幸せですし?」

伊藤「疑問形かよ。」

藤沢「あははっ(伊藤を振り返って)ありがとう。」

伊藤「(少しの間)おう。」

藤沢「行こ。」

伊藤「行くか。」

二人並んで歩き始める。(終)