片恋 #2000字のドラマ
登場人物
S1:伊藤が勤めるオフィス(日中)
女1「(資料を片手に)これ誰のコピーですかー?」
伊藤「(しばらく気づかず間)あぁごめん、オレだ。」
女1「あれ、これ先週のですよ、午後からの会議資料ですよね。」
伊藤「あれ(資料を確認)あーーー間違えた。」
女1「あと今週は共有で出すから資料不要ってメール書いてありましたよ。あ、事前チェックですか。」
伊藤「いや、違うな普通に間違えた。」
女1「伊藤さんなんかありました?なんか今日らしくないですね。」
伊藤「はは、昨日あんまり寝てないからかな。コーヒーでも買ってくるわ。」
伊藤「(独り言)らしくない、か。」
S2:居酒屋(夕方)
高山「わりぃ!遅れた!」
男1「おー遅えよ!ってえ、子連れ!?」
高山「嫁が仕事終わんないみたいでさ。お前らの顔も見たかったしちょっとだけ来た!すぐ帰るよ。」
藤沢「久しぶりー、元気そうだねー。」
高山「おーー!藤沢!(藤沢の横に座る。)お前、元気?じゃねぇよ、メール返せよ!元気なメールはオレずっと送ってんじゃん。むしろお前が元気なのかって話だよ。」
藤沢「元気元気ーちょっと高山構うの面倒だからスルーしてた。」
高山「おい!どうせモテにモテてオレのメールなんて返す暇ねぇんだろうよ。イケメンはこれだから。」
藤沢「いや高山のイケメンには負けるわ。イクメンも加わって最強じゃん。」
高山「韻踏んでんじゃねぇよ(笑う)。」
藤沢「(子供に)こんばんは、高山の友達の藤沢です。」
子供「こんばんは。」
S3:居酒屋近くの公園(夜)
高山「ありがとな藤沢。」
藤沢「ううん、全然。明日仕事だし、そろそろ抜けようかなと思ってたから。ちょうどよかった。」
高山「助かったわ。」
藤沢「奥さんから?」
高山「そう、仕事ひと段落したらしい。同窓会だったのにごめんって。謝んなくてもいいのにな、頑張ってんだからさ。(子供に笑顔で)さーーー帰るか!」
子供「いやだ、まだお兄ちゃんと遊ぶ!」
高山「もうお母さん帰って来るから、駅まで迎えに行こう。」
子供「えーーー。」
高山「お前すごいな、一瞬で懐かれてんじゃん。」
藤沢「まぁねー。奥さん、忙しいんだ。」
高山「そう、体壊さねぇかが正直心配。(子供の顔を見ながら)ぶっちゃけ今日ほんとはこっち顔出すのやめようかなと思ってたんだけどな。でもあとで俺が行けなかったこと、気にするだろうから。」
藤沢「何だこっちはついでかー。」
高山「いやそういうわけじゃねぇけど!」
藤沢「ははっ、わかってるよ。(少し間)奥さん思いなんだね。」
高山「(笑顔で)まぁなー。お前こそどうなんだよ彼女とか。」
藤沢「さーどうでしょ。」
高山「ほんと昔っから秘密主義だなー。じゃ行くわ、またな。お前ちゃんと連絡よこせよ!(子供と手をつなぎながら歩き始め、藤沢に手を振りながら笑顔で)じゃあな!」
藤沢「気が向いたらねー(笑顔で手を振る)(子供にも)ばいばーい。」
子供「(笑顔で)ばいばーい!」
S4:帰り道(夜)
S5:居酒屋近くの公園(回想)
藤沢「お父さんとお母さんのこと、好き?」
子供「うん、大好き!!」
S6:帰り道(夜)
藤沢「もしもし?」
S7:帰り道(夜)
藤沢「何、もしかして心配だったとか?ヤキヤキしちゃう感じ?」
伊藤「何だヤキヤキって(笑)」
藤沢「やきもちってことー。」
伊藤「わかんねーよ。」
藤沢「わかれよー。」
伊藤「(藤沢の顔を見る)大丈夫だったか?」
藤沢「(伊藤の顔を見る、少しの間)あぁそっか、そっちの心配か。」
伊藤「見かけによらず繊細だからな、お前。」
藤沢「見かけによらずは余計でしょー?」
藤沢「(少し考えたあと空を見ながら)全然大丈夫なんだよ、もうとっくに、そんなの。
やっぱかっこいいなーとは正直思っちゃったけど、思っただけで。行動に移す何かじゃないっていうか。思い出にちゃんと昇華してた。
あの頃の若者は、結構しっかり大人になってますよ。」
伊藤「そうか。」
藤沢「それにさ、こうやって心配して電話かけて来てくれる人が傍に居てくれる今が?最高に?幸せですし?」
伊藤「疑問形かよ。」
藤沢「あははっ(伊藤を振り返って)ありがとう。」
伊藤「(少しの間)おう。」
藤沢「行こ。」
伊藤「行くか。」