僕が地域おこし協力隊を辞めたわけ⑦
はじめに
この記事は、北海道が好きすぎて移住し、道内のとある自治体で地域おこし協力隊として採用されたものの、たった半年で辞めた僕の体験談です。
この記事が、現役協力隊の方やこれから応募を検討している方、また、募集する自治体や地域の方にとって少しでも参考になれば幸いです。
前回は、やるも地獄、やらぬも地獄なSNS開設編でした。
このシリーズも終盤を迎え、7回目にしていよいよ始まるお仕事編。
今回はこれまでと違ってノーストレスなはずです!それではどうぞ!
本編に入る前に、自治体には僕自身に対する悪意等は一切ないということと、役場の方々も良い人ばかりであったこと。そして、あくまでもこれがこの地方自治体にとっての普通であるということを明記しておきます。
そして苦しい生活を続ける中、町民の皆さんとフォローアップに来てくださったAさんには本当に助けていただきました。この場で心からお礼申し上げます。
正規業務を探そう
さて、個人的にSNSを開設し、空き時間を使った簡単な情報発信を始めたわけですが、それは僕の正規業務ではありません。
何かちゃんとした業務をしていないと役場にいる時間が辛すぎます。
とりあえず同僚の方に何か手伝えることはないか聞いてみます。
「特にないですよ」との返答。
どうやら直属の上司から、僕は将来起業する人材なので通常業務は極力させないようにと部署全体にお達しがあったようです。
ありがたい気もしますが、それならば僕がこの場所に配属された意味が全くない気がします。観光協会とかに出向した方がまだ良くない?
そういえば初日に、町の資料を読み込んで欲しいとパンフレットを渡されたことを思い出しました。
さっそくデスクからパンフレットや統計資料を取り出し、目を通します。
ただ、パンフレットや数字を見たところで町のことは何も分かりませんし、解決すべき問題なんて見つかりません。それはそうですよね。
見ただけでわかる問題点があるのなら、それはただの欠陥です。
僕はとりあえず、町のホームページに目を通すことにしました。
雇用条件通知書にもホームページ作成業務とありましたしね。
今まで見えないふりをしてきましたが、書いてあるのだから取り組んでみないといけません。
他にすることもありませんし。
見てわかる問題点。欠陥だらけのホームページ
さてさて町のホームページを覗いてみると、昨年、「数十万以上かけて新しくした」というトップページはシンプルなデザインで良さげです。
町内の美しい写真の横に観光情報の文字が目立ちます。
おもむろにそのリンクをクリックします。表示されたのはこんなページ。
もはや懐かしさすら覚える画面です。インターネットが一般に広く普及し、小学校の授業に登場し始めた頃はこんなホームページばかりでしたよね。
写真やイラストなどなく、ただ文字が羅列しているだけ。一貫性もなく、無造作に並べられている雑多な情報の数々。TOPからワンクリックで20年前にタイムスリップです。
よくお役所仕事を「あるだけまし。つくったらつくりっぱなし。」と表現されることがありますが、こういうところなんでしょうね。
数十万というお金をかけて外面だけ綺麗にしても、最も重要な中身が整っていなければ、何の意味もありません。
売れない商品を集めて福袋に入れて販売したところで、誰も喜ばないのと同じです。
このまちで僕にできることは何か。
とにかく、自治体が情報発信をしない姿勢である以上、せめて興味を持った人が情報にたどり着けるようにしておかなければなりません。
自治体名でググってもウィキペディアしか出てこない町に、いったい誰が訪れようと思うでしょうか。もしかして秘境ハンターとか呼びたいの?
それっぽく書かれた僕の使命を要約すると、
「まともな観光情報と移住者支援」が一切ない町で、「情報発信をせず」に、関係人口を増やして移住定住をすすめる。
ということです。
ひのきのぼうと100ゴールドで魔王は倒せませんが、それでもまっすぐ向き合います。この町に僕ができることは何か。
それは、観光情報をきちんとまとめることです。
では、まとめた観光情報はどこに集約させるべきでしょうか。
一番簡単なのは、観光協会に依託してしまう方法です。
そうすれば、役場の負担は何もありません。何なら僕も必要ありません。
ところが、この自治体の観光協会サイトはかなり独特で、町内の観光地や飲食店がほとんど記載されていません。
・・・いったい誰のための観光協会なんでしょうね。
さて、こうなってしまっては致し方ありません。
僕がこの町の観光情報をまとめるのです。
観光情報サイト作成へ
さて、取り組むべき業務が決まったら、まずは上を説得しなければなりません。
勤務開始後4日で放置されてから、約1ヶ月ぶりの上司との会話にのぞみます。
こと、僕のような協力隊員が自治体に勤めてきた方を説得するのは比較的簡単です。
「賢い人がこう言っています」と「他所はみんなやっています」
明確な数値とデータを揃えて、この2つの言葉と組み合わせれば良いのです。
僕の場合は、観光サイトを作る根拠を示すために、北海道内すべての自治体のホームページと観光サイト、及び自治体ごとの移住定住対策と、ついでに自治体で使われている公式SNSを調査し、それをデータ化。
ダメおしに観光客の購買行動に関するマーケティング理論にそれっぽく当てはめ、なるべく多角的な視点から道理が通るように、かつ若干専門的な論理を加えてプレゼンします。
プレゼンで提案を通すコツは、プレゼン中にやるべきことを10提案し、そのうち6をその場で削り、残った4割の将来性を主張することです。
大体それで説得できます。
こうして、観光サイトの作成にGoサインが出ました。
サイト構築は役場とズブズブの業者が作成し、僕は取材や入力を担当します。業者には数十万の費用を払いますが、取材先の店舗には謝礼どころか取材費もありません。撮影する料理などは無償提供させろとのお達しです。
長く飲食業に携わってきた身としては、無償で当然というスタンスの役場に対する憤慨と、飲食店の方に対する申し訳なさでいっぱいでした。
ただでさえコロナ禍だというのに、この町は一体何を考えているのでしょうか。この無頓着さに怒りを通り越して呆れてきます。
飲食店になるべく負担をかけないために、観光協会に連絡し、過去に取材をした店舗に関してはその時の写真データを送ってもらいましたが、それでも全てとはいきませんでした。
撮影のために協力していただいたお店並びに、快く取材を受けてくださった町内の皆様には深く感謝しております。本当にありがとうございました。
とにかく僕は、晴れて外回りにいく正当な理由を手に入れました。
そこからは、町内店舗への挨拶と取材申し込み、日程調整をして取材と撮影、文字を起こして記事作成、校正と入力作業に打ち込みました。
今にして思えば、僕がこのころ我武者らに町内をまわっていたのは「少しでも役場から離れていられる時間を作るため」だったのかもしれません。
自分でも気がつかないうちに、僕の心はすり減り続けていたのでした。
まとめと次回予告
今回は役場での紆余曲折を経て、観光サイト作成という正規業務をつくった回でした。最初に書いた通り、珍しくノーストレス回だったのではないでしょうか。(え?違う?)
それでは今回のまとめ。
・売れない商品を詰めた福袋はゴミ
・その自治体のホームページを見れば、本気度が分かる
・役場の常識は世間の非常識。世間の状況に無頓着な自治体には要注意
このシリーズも今回を含め、あと3回ほどの予定。
セミラストとなる次回は、みなさんお待ちかねなお金の話。
次回「初任給。俺詰んでないか編」!!
お楽しみに〜
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?