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勇気のお好み焼き 2024.10.17
朝5時起床。仕事へ。忙しいが午後は退勤できた。布施のヒザキ酒店に寄って、タコにチャジャンをかけたやつと、バーベキューを食べる。
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バスで阿倍野まで出て本屋でいくつか本を買う。時間を見ると18時過ぎで、今から高槻まで出て盤石に行こうかと思ったがそんな気分でもない。とりあえず家に帰るか……と歩いていると良い匂いが漂ってくる。
去年、一時期通っていた角打ちからだった。インフルエンザになったり、仕事が忙しくなったりでいつの間にか足が遠ざかって気まずくなっていた角打ち。つい一ヶ月前に、お客さんがほとんどいないタイミングで入店はしたものの、やはりまだ気まずさはある。
暖簾の向こうを覗くと、以前仲良くしてくださっていた常連のTさんの姿が見えた。少し気が引けて一度は店から離れたが、今日勇気を出さないと多分これから先も出せないだろうなと思って暖簾をくぐった。
店の戸を開けた瞬間、Tさんと目が合って、みるみる瞳が大きく見開かれていく。
「生きとったんか!」とTさん。
「すみません、ご無沙汰しております」と僕。
Tさんは覚えてくださっていた。それだけでも驚きなのに、
「悪いことして捕まったったんちゃうやろな!何せ急に来んくなるから心配しとったぞ!しかも今日は特別な日や、お好みあるで!」
良い匂いの正体は女将さんの焼くお好み焼きだったのだ。Tさんは以前、女将さんのお好み焼きが絶品で、食べられる日は限られるけど絶対に食べて欲しいと言っていたのだ。そのことをTさんは覚えていたのだ。ありがたい。忘れられていなかったんだ。
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女将さんにお好み焼きをお願いすると、鉄板で丁寧に焼かれたそれが運ばれて来た。ざっくりとしたキャベツに豚バラ、隠し味は牛すじだろうか?表面はこんがりと焼かれているのに中はふんわりと風味豊かで、ああこれが食べたかったんだなと思った。
Tさんと話に花が咲いて次から次へと酒を飲んでしまう。しこたま飲んで、恥ずかしい話だがどうやって家に帰ったのか記憶になかった。気づけば夜中で家の中で寝ていた。何故かシューズボックスが全開になっていて、革靴が二足落ちていた。スウェットを履いていたがなぜかノーパンだった。
財布や家の鍵は落としていなかった。財布を確認すると、ちょうど角打ちで代金を払ったであろう分だけ減っていたのでお会計もちゃんとやっている。記憶が飛ぶのが久しぶりゾッと肝が冷える。それに恥ずかしすぎる。さらに頭痛が酷すぎる。
せっかく勇気を出せたのにまた後悔に苛まれながら布団を被った。