見出し画像

スタンダードブックストア 2023.06.10

朝7時起床。寝相が悪かったのだろう、右足を圧迫した状態で寝ていたので感覚がない。しかし寝ぼけていたのと、二日酔いの頭痛に意識を引き摺られていたのだろう、それに気づくことなくベッドから下りる際に右足から踏み出すと足に力が入らず激しく転倒。右足首を強く捻り、テーブルに頭を打ち付ける。朝から悶絶し絶叫する。

なんとか動けるようにはなったものの足首はズキズキと痛い。それでも宅配便を受け取り、洗濯をし部屋の片付けをする。しばらくのちに残してきた仕事に手をつける。

15時過ぎに外出。足を引き摺りながら天王寺まで歩いて、そこから今宮駅まで環状線に乗る。グッドナイトという喫茶店で、梅田哲也・豊田道倫・YTAMO「うたの光景、音の情景」を聴きに行く。受付を済ませて会場のソファ席に腰掛ける。

店内に入ると、梅田哲也のモチーフの一つである銀色の回転式スピーカー。そこからは先日の「入船」の音声が流れている。ビールを飲みながら、あの船に乗って大阪の川を巡った日に引き戻されるような感覚。会場では開演前から梅田哲也さんが音を紡ぎ、YTAMOさんの静謐なピアノの音色が会場を撫でるように響いていた。
16時になり、豊田道倫さんが登場。ギターを手にして無骨な声で街の人々を歌う。三者の音はそれぞれが全く違う方向性を持っているのに、重なり合うと不思議な音の場がそこに生まれる。豊田の歌の間から梅田が作り出す音が、その残響の隙間から微かなピアノが。それぞれが奏でる音が妙に心地よく、ウトウトしながら聴く。
1時間半ほどで終演後、梅田哲也さんが「もっとよくするにはどうしたらいいだろう」「もっとバチバチとやりあってもいいかもしれない」と19時からの公演に向けた提案が始まる。面白かったのが「雷でも落ちてくれるとよかったんだけど」と梅田さんが言っていたことだ。

グッドナイトを出て天王寺へ。スタンダードブックストアで柿内正午さんとスズキナオさんのイベントがある。11日で閉店してしまうスタンダードブックストアの最後のイベント。Twitterを見るとスタンダードブックストアで使用されていた什器が販売されているらしい。

持ち帰ることができる人限定ということだったが近所なので問題ない。何度もイベントで座ったスツールと、下のカフェで形が好きだった椅子を購入する。家の近くにスタンダードブックストアという本屋があったことをいつでも思い出せるように。

イベントの開始まで時間があるので店内を見て回るが、ところどころ空白が目立ち始めた棚が終わりを告げている。もの悲しい気持ちになる。

このスツールが家に来るんだ

会場でナオさん、ガキさんと合流してコンビニで一本買って飲む。外で飲んでいるとナオさんが「こうやって飲むこともなくなるのかあ」と呟いたあとで「いやずっとこうやって飲んでるか」と笑っていた。
開始が近くなってスタンダードブックストアに戻ると、山琴さん、はやとさん、ことさら出版のHさん、カニさんと見知った顔が並ぶ。ヤマコさんの隣に座り、いつものシステムで500円でビールを購入する。

スタンダードブックストアのスズキナオ登壇イベント恒例の投げ銭酒。これもしばらく見納めか。

トークイベントは柿内正午さんの『会社員の哲学』を中心に話が進むが、柿内さんがものすごく理論的にかつ分かりやすく話をしてくれるのでめちゃくちゃ面白い。しかも内容がいかにして仕事をサボるか、というものなのだ。

途中、中川さんが作ってくれたハイボール

トークイベントで面白かった言葉。
柿内「エリートサラリーマンみたいな語り口で意識の低いことを書いている」
柿内「自分より給料のいい人に迷惑をかけていくのが会社。残った時間は自分のために使うべき」
柿内「まともでない人はまともでないやり方でするのがまともなやり方だと思う」
スズキ「会社員時代、道玄坂でモニターのアンケートに答えると500円の図書カードがもらえた。それを金券ショップに持っていって450円で買い取ってもらう。それで酒を飲んでいた」
柿内「会社は演技をする場。演技じゃないことはない。演じる場なので会社ではイコール自分になるのが嫌」
柿内「保坂和志『プレーンソング』はスズキナオ」
柿内「本はどこで買ったかどこで読んだかまでが読書」

話を聞きながら、保坂和志『プレーンソング』と宮沢章夫『時間のかかる読書』を買おうと思う。
あっという間に時間が過ぎる。

終演後の店内でみんなとダラダラ話しながら酒を飲んだ。ことさら出版のHさんからはインセクツにサインを求められて恐縮。それと初対面の方に「今野ぽたさんですか?」と声をかけられてさらに恐縮。
それにしてもスタンダードブックストアで過ごすこの時間もしばらくは得られなくなるのかと思うと否応なしに悲しい。今月号の「あまから手帳」と稲泉連『サーカスの子』を購入。それから酔いが回っていて、みんなと話しながら座っていた椅子の手触りが恋しくて、もう一脚購入してしまう。1Kの手狭なアパートにこんなにも椅子が置けるのか分からないがそれでいいんだ。

僕にとってスタンダードブックストアは、ほんの1年住んだ街の近くにある本屋で、そこを気に入って通うようになり、そこで人と出会い、酒を飲み、本を買う場所だった。この街に住んでよかった中心にこの本屋があったことは間違いない。もう部屋着でふらっと来て、そのまま花野商店か半田屋で飲んで帰る、そのお気に入りのルートがもうできないのはただただ惜しい。

終演後にガキさん、はやとさん、ヤマコさん、Hさんとてんしば近くのファミマで飲みながら駄弁る。Hさんの教えてくれた徳永憲「メタルが好きだ」という曲をみんなで聴いた。

挫いた足の痛みがでてきたので退散させてもらう。またまた調子に乗ってファミマで海苔巻きを買って家で食べてしまう。湿布がなかったので保冷剤をタオルで巻いてそれを足首に括りつけて眠った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?