「ラジログって知ってる?」

最初は奥さんからの質問だった。

そのころ、フォトログというものをやっていた。写真のブログだ。ブログになんとなくバリエーションが出てきた頃である。携帯電話からブログを更新するのをモブログと呼んだりもしていた。iTunesで聴いている曲を公開する音ログなんていうサービスもあった。

ラジログという単語は聞いたことはなかったが、すぐに「ラジオ+ブログ」だろうと想像ができた。知り合いのブログでラジログというのを見かけたようで、4〜5年使ってる自宅のMac環境でもできるだろうかという相談だった。

ちょうど、いつも見ていた「Going My Way」のkengoさんが、ブログでPodcastingを始めてみたという話題を見かけたところだった。見たというか、聞いたわけだ。kengoさんは「COULD」というブログを書いていたヤスヒサさんが、「Inflame Casting」というpodcastを始めたのをみて、やってみたということだった。

このお二人が2005年1月にPodcastを始めている。奥さんからの質問が、この1月だったのだ。なので、ラジログとはPodcastのことだな、すぐにそう思ったのだった。

ポッドキャストの仕組み

ただ、ラジログは、単純に音声をブログに貼り付けて配信するもののようで、Podcastはというと、リスナー側が効率よく音声配信を聴くまでの仕組みまでを言っているようだった。

ネット上にあちこち存在する音声配信のブログに、いちいち訪問せずに更新情報をチェックして、更新されてたら自動でiTunesにダウンロードして、音楽プレイヤーの iPod に転送までしてしまおう、という仕組みがPodcastのようだった。つまり、音声配信のための仕組みというよりは、聴く側のための仕組みなのだ。

Podcastというのは、iPodとBroadcast(放送)を組み合わせた造語。ラジオの機能もなければインターネットに接続する機能もなかった、ただの音楽プレイヤーであるiPodで、ラジオのような仕組みを実現したものがPodcastだった。配信者が決まったルールで配信することで可能にしていた。

当時は、充電をするためにパソコンにiPodを繋ぐと、あらかじめ「アグリゲーター」と呼ばれるPodcast用のソフトで、更新されている音声ファイルをダウンロードし、iTunesを経由して自動的にiPodに転送されるようになっていて、あたかもiPodに向けての放送が実現したかのような仕組みだったのだ。

今でこそ、パソコンのiTunesやiPhone、iPadのポッドキャストアプリだけで実現している機能だが、当時は複数のアプリなどで擬似的に実現していた。そして、この頃のPodcastはApple社は関係なく、いちiPodユーザーが勝手にアグリゲーターと呼ばれるソフトを作って始めたもの。iPodで友人の音声配信を自動収集したい。そんな中からできた仕組みなのだ。

奥さんからの「ラジログができるかどうか」という質問よりも、この草の根で出てきた新しい機能の方に魅了され、勝手にPodcastを自宅のMacでできるものかどうかを調べだしたのだった。

ちなみに、「Going My Way」はすでにサイトが公開されていないようだった。「Inflame Casting」も公開はされていないが、ヤスヒサさんは現在は「Automagic Podcast」という番組を配信している。

残念ながらkengoさんにはお会いしたことないが、ヤスヒサさんには数回お会いしたことがあり、2014年1月に私の主催したイベントでスピーカーとしてお招きすることができた。この頃から聴いてた声と喋り方を直接聞くと、なんとも不思議な安心感と感動がある。ほんと数回しか会ったことがないのに懐かしいのだ。面白いものだ。

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