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思い出のホットクが食べたかった【たべもの備忘録】
結論:あの美味しさにはもう二度と出会えない
まずは思い出語り。
ホットクとの出会いは学生の時でした。
当時のバイト先の焼肉屋にいた韓国人留学生ソーさんが作ってくれたのです。
バイト先は社長が韓国人の飲食店で、接客ダメゼッタイな私は厨房で働いていました。
社長が年に数回語学留学生の面倒を見ていたのかなんだかで、その留学生をバイトとして雇っていたような気がします。
彼女たちは日本語が話せないので厨房に投入されていたので、
お互い伝わっているか怪しい英語で仕事を教えたり、雑談なんかをしていました。
彼女が韓国語で私の名前を書いてくれた紙っ切れを、今でも大事に持ち歩いてます。
そんな彼女が帰国する前のある日、
先に仕事をあがった彼女が突然生地をこねこねとしだした。
こねた生地に何かを包み、
フライパンと謎の道具を駆使して生地を焼いたのです。
香ばしさと甘さがミックスされたいいにおいが徐々に厨房内を漂い始め、
私のまかないを待つ空っぽの胃を刺激したのを覚えています。
「腹ヘリMAXの私に拷問を仕掛けてきてるのか?」と理不尽にも思ったこともしっかり覚えています。
「今までのお礼」と、焼き上がったものを差し出されました。
それがホットク。
それは初めて見るたべもので、平たくて大きなおやきかと思った。
出来たてのそれははあったかくて、
ひと噛みすれば中から甘くて溶けた砂糖が溢れてくる。
「デブ、コレ、スキ。トテモオイシイ」
外カリ中フワの生地と甘く染み出す餡、時折感じるナッツの食感。
あまりの衝撃的な美味しさに食べる手を止められず、
おかわりまで頂いてしまいました。
できることならもう数回おかわりしたかった。
(ちなみに仕事中だったけど、自由にやらせてもらっていたので)
(社長も横にいたから問題なし)
わざわざ材料を用意して作ってくれたことは、
私にとってホットクの美味しさと同じくらい衝撃的な体験でした。
知人友人から何かを贈ってもらうという経験は、
義務的に行われるお土産配りやら誕生日プレゼントやらしかなく、
感謝の気持ちで何かを贈ってもらうことは本当に初めてだったんじゃないかと思います。
思ってもいなかった人から、思ってもいない贈り物をもらったことで、
ホットクという存在が深く記憶に刻まれました。
そんな経験から月日は流れ。
業務スーパーで衝撃の再会を果たしたのです。
ソーさんにつくっていただいてから、出会うことのなかったホットク。
まさか家の近所で会えるとは。
出会って以来、数回リピートしています。
フライパンで焼くだけで、美味しいホットクが食べられる、なんて幸せなんでしょう。
1枚だけのつもりが、気がつけば2枚を焼いているデブ。
美味しいから仕方がない。
一方、人とはどんどん欲深くなるのです。
冷凍品は十分だけど美味しいけど、思い出のものとはなにか違う。
できたてを食べればその違いがわかるのではないか。
外に出るくらいなら家で作ってやる!
そしてついに出会ってしまったホットクミックス。
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混ぜて包んで焼くだけで、できたてほやほやのホットクが食べられるというではありませんか。
ということで、できたてのホットクに出会うことができました。
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包むのが下手くそ過ぎて、押し付けて焼いている間に中の餡がほとんど溢れ出てしまいました。
油を使わず焼いたのに、表面テッカテカ。
それでも、冷凍のホットクとは違った美味しさを感じることができました。
冷凍のものも美味しいけど、できたてでしか満たせない何かがある。
ソーさんが作ってくれたものとはクオリティに大きな差はあれど、
出来たてのホットクは美味しかったです。
美味しかったけど、思い出の味とは違ったようで。
材料云々、できたて云々ではなく、ソーさんが作ってくれたからあの美味しさだったのでしょう。
誰かが”私のため”に作ってくれる。
それだけでたべものは美味しくなる。
私が私のために作っているかぎり、あの美味しさには二度と出会えないのでしょう。
あの思い出のホットクをまた食べたかったな。
また作ろう。
それでは、