#2【ズーム/見えない参加者】
※本編の内容に触れる部分があります。
ロックダウン中だからオンライン飲み会ホラーってありきたりだなぁ。B級感強いし、変なCGとか使われてたら萎えそう。
生意気にも、最初はそんな風に考えていた。
それぞれが別の場所にいて、各々が怪奇現象に見舞われていく様をあの小さな画面越しに見たところで、何が起こっているのかわからなくて置いていかれそうだと思った。映画に置いていかれてしまうと、途端に現実へと引き戻されるあの感覚が本当に嫌だ。
しかし、ネタにできるならそれも一興ということで結局観てきた。交霊会へ参加させられることになるとも知らずに。
本編映像はずっとPC画面である。どうしてもNetflix映画の『search』を連想してしまうが、あくまでオンラインミーティングアプリのみで展開されていくので、見ている感覚は若干異なる。というよりも、徐々に異なってくることに気づいた。序盤では恐らくいちばん最初に登場する女性のPC画面なのだろう、などど勘繰ってしまうが、そんな意識はミーティングが進むに連れて薄れていってしまうのだ。
映画館のスクリーンとはいえ、見ているものはzoomのあの画面である。つまり一人称視点だ。ミーティングに参加している誰かが、実際にPC画面を見ている視点で、事件は進行していく。参加者が手を繋ぎ、輪を作っているイメージをすると、私もその輪の中にいた。ここまできてようやく、自分も参加者のひとりであることを知る。
交霊会はルールを守れば安全らしい。
特に重要なのは、霊に敬意を払うこと。
しかし、それが最も難しいことは観客の誰もがわかっていただろう。子どもの頃にこっくりさんを召喚しようとしたことのある日本人は多いのではないだろうか。私はやった。何も起こらず、ただの思い出として風化しているだけの記憶だが、この映画の登場人物の心境を理解するには充分だった。
真面目にやってね、と主催の女性が友人たちを注意する。霊媒師のような女性も釘を刺した。参加者たちは、初めての儀式への参加に明らかに浮き足立っていた。頼むからちゃんと言うこと聞いてくれよ、と思う私。それでも、やはり起こる事件。
なぜこのような展開になってしまったのか考えるとき、やはりオンラインミーティングというツールが問題であることは間違いないだろう。
各々が安心できる自室におり、ミーティングを開始する直前まで営んでいた私生活のテンションを引きずっている状況で、気持ちを通わせることなど不可能に近い。同じ場所で顔を突き合わせていれば読める空気がある。しかし、オンラインでは読む空気が各々で異なってしまう。それ故に、この作品では事件が起こってしまったのだ。
オンライン飲み会ホラーなんておもしろいの?
馬鹿言え。オンライン飲み会でしか作れないホラーがあるじゃないか。
安全なはずの自宅が、何者かによって恐怖の監獄へと変わる。変なものが見えたり、家具が自分に向かって飛んできたりする。逃げようとしても捕らえられ、吊るされ、突き落とされる。ひとりずつ、順番に。
次は誰だ?
次は…自分?
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いい感じに締められそうだったが、まだ言いたいことがある。
スタッフロールの出し方! 最高だった。作風へのこだわりに感動した。
それから、最後に流れるメイキング映像…。
確実にあそこまでが本編だった。本当にメイキングかどうかかなり疑ってしまったし、正直今でも疑っている。メイキングであれ。
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映画館を出た後、時間を確認するためにスマホを取り出した。そこには「久しぶり! 年も明けたしオンライン飲み会でもしない?」というメッセージが、画面中央に表示されていた。
痺れるような映画体験だった。