転がってきたボール
私という人間はとてもめんどくさくて、わかりづらい。
夫と散歩に出ると、必ず行く公園がある。池があって、そこにはカモや亀、鯉がいる。
先日の散歩中、いつものように池にいるカモたちに会いに行こうと公園の階段をくだっていると、上の方からにぎやかな声と音が聞こえた。
見上げると、すごいテンションでボールを蹴り合いながら走っている兄妹らしき2人。年齢はおそらく中学2年生と小学5年生くらい。
あ〜もう、嫌な予感しかしない。
はい来たよ。ボールが転がり落ちてきた。やっぱりね。私にはわかってた。だからここに立ち止まって待ってたのよ。ボールを止めてあげようという優しさではなく、急に頭にぶつかってきたら怖いからボールの動きから目を離さずにいたのさ。
そしてその瞬間の2人の表情を瞬時に読みとってしまった(と思い込んでる)。
「あ〜あの人ボールとってくれそう。めんどくさい。しゃべりたくない」
いまそう思ったでしょ?そうだよね。そういうお年頃だよね。わかるよー。
でもボールを止めないわけにはいかないよ。すぐ下にはお昼寝している猫もいるし、池に落ちちゃったらそれはそれは大変でしょ。それこそ他の大人たちの力も借りることになってさらにめんどくさいことになるよね。
だから私はボールを止めたのさ。けど喋りたくない気持ちがすごくわかる。だから私はボールを止めるだけ止めて、立ち去ったのさ。
すると少し前にいた夫がなんの迷いもなく
「え、渡してあげないの」と私に言うのと同時にボールを拾いあげて、中学2年生のお兄ちゃん(決めつけ)にひょいっと軽い感じでとてもスマートに投げ渡した。
小さな声で「ありがとうございます」と受け取り、そそくさと階段をかけ上がっていくお兄ちゃん。
私は心のなかで「わたしだってあなたに優しくしたかったんだよ」とつぶやいたけど、その気持ちが伝わることは一生ないでしょう・・・