システム開発業界に就業するにあたって。
というというゲイドルのぽたろうです。
年収300万といえば森永卓郎氏が思い浮かびます。何年前だっけ?
が、現実にはもっと深い闇が潜んでいるようで、世知辛いことに、1月末に「年収300万」「年収1500万」の話題が、Twitter上を賑わせました。
システム開発における多重請負構造についても言及されており、情報サービス産業に属する身として人ごとではないな、と思った次第です。
私も就活していたときに業界事情だとかを理解していなくて、片っ端から入社試験を受けていたのですが、これからシステム開発に携わる仕事につきたいと思っている方に、当時の自分が知っておきたかったことを記します。
俗にいうシステムインテグレータ(SIer)、ソフトウェアハウスが対象です。
1.ホームページで親会社と主要取引先を確認する
ホームページの会社概要(にない場合はIR情報やリクナビ・マイナビなど)で株主(親会社)と主要取引先を確認しましょう。沿革も大事。
親会社の種類によって、大きくはメーカー系・ユーザ系・独立系に分けられます。
メーカー系:親会社はハードウェアメーカー(ex.日立・富士通・NEC)
ユーザー系:親会社は事業会社(ex.金融、流通、製造など)
独立系:親会社を持たない
メーカー系は親会社から仕事を貰えるケースが多く、多重構造では一次請け、二次請けなど、比較的上位の立場で仕事が出来るイメージがあります。
ユーザ系は親会社のシステムの子守をしている場合は、親会社やシステム会社との調整役を担ったり、運用維持に関わることになります。
ユーザ系といっても、親会社以外のシステム開発に携わっているケースもあり(俗に言う外販)、その場合は独立系と大して変わらない感があります。
独立系は親会社のバックがありません。エンドユーザやシステム子会社から直接仕事を貰うか(プライム案件)、メーカー系・ユーザ系の下請けです。
注意してほしいのが、主要取引先が「●●システム」「●●ソリューション」のような同業(システム会社)ばかりの場合。黄色信号です。
特に親会社がハードウェアメーカー(日立・富士通・NEC)やNTTデータなどの情報サービス専業ばかりが取引先の場合は下請という意味では赤信号。
下請け(ビジネスパートナー:通称BP)として、人月単価の商売で売り飛ばされる可能性が高いです。
会社を通せば通すほど、ピンハネされて懐も厳しくなる。下にいくほど、プログラミングやテストといった下流工程の手を動かす作業が増えるので、多くの人がイメージする「システム開発」に近いといえば近いのですが、プログラミングは独自のパッケージやサービスを担いでいる会社だったり、近年増えつつあるシステム開発を内製化している事業会社でも出来ますよ。
2.多重下請け構造について
多重下請け構造を生み出すシステムがどういうものか考えたときに、多くの人を必要とするシステム(大規模なシステム)とも言えるでしょう。
階層構造をもとに人が大勢いて所属も役割もバラバラ。人を通せば通すほど背鰭尾鰭が連なって、伝言ゲーム状態なのではと推察します。
大規模なシステムほど、ちょっとしたズレが与える影響が大きく、炎上率が高い(難易度が高い)プロジェクトといえるでしょう。
炎上すると更に人がかき集められて火消しが大事になる、というのはこの業界では良く見慣れた光景です。遅延につぐ遅延。デスマーチ。
一般的にシステム開発の場合、システム子会社がない(通さない)ケースや二次請け以下がないケースもありますが、下のような構造が多いです。
・エンドユーザ(事業会社)
・事業会社のシステム子会社 ※俗に言うユーザ系
・一次請け
・二次請け(以下、省略)
親会社が事業会社のシステム会社(ユーザ系)の場合は、内販と呼ばれる親会社向けの案件であれば、システム開発の場合は、エンドユーザーやベンダーコントロールといったマネジメントの仕事が主になるかと。
情報システム子会社は規模の大きな事業会社の場合は保持率が高く、子会社を持たず親会社に情報システム部門を保持するところや双方保持(企画を親会社、開発・保守・インフラを子会社)しているケースもあります。
ユーザ系は多重構造の上位に位置付けられますね。
事業会社と取引するうえで商流としてシステム子会社を通さないといけないことが多いのですが、システム子会社の存在意義(食い扶持)を考えると宜なるかな。ただ、親会社と比べると立場的には弱いなあ、というのがいくつかの顧客と接してきた実感としてあります。
本来の情報システム部門は間接部門で事業部門と違って利益を生まないし、そのなかで雨後の筍のごとく出来上がったシステム子会社の成り立ちを調べていただけると良いかと思います。
情報子会社に関しては、日本IBM、NTTデータ、富士通などが買収したり出資したりして競争力を高めているケースもあります。(事業会社、買収元双方にとってはwin-winに見える。在籍者にとっては悲喜こもごもかしら)
最近ではなにかと話題のデジタルトランスフォーメーション(DX)がらみで、事業会社とSIerが合弁会社を作る流れも加速していきそうですね。
多重構造のようなシステムの場合、一次請けはハードウェアメーカーやNTTデータのほか大手SIerが多いでしょうか。
大手の場合は営業力と知名度(浸透度)が違うわけで、役所とか公共系のところに行くとパソコンのF社率高いなあなんて思ったりすることもある。
独立系なんて会社名聞いて知っている会社は皆無に近いわけですから、余程差別化出来る製品を持ってれば別で、一次請けの会社が営業してとってきた仕事を貰わないと大手企業のシステム開発に携わるのは難しいでしょう。
3.契約形態について
契約形態については入社してしばらく経ってから知りました。
大きく分けると、派遣、準委任、請負という契約があります。
派遣:派遣先企業が業務に関する指揮や命令を出す。成果物責任なし。
準委任:所属企業が業務に関する指揮や命令を出す。成果物責任なし。
請負:所属企業が業務に関する指揮や命令を出す。成果物責任あり。
成果物責任というのは完成責任とも言われることがありますが、請け負ったシステムを完成させ納品する必要があります。不具合があると瑕疵(2017年民法改正で契約不適合)による担保責任を負うわけです。
成果物責任なしのケースではあくまで業務を委託することになります。詳しくは以下のサイトなどをご参照くださいまし。
契約形態の話を出したのは、勤務場所に大きく関わってくることが多いからで、派遣や順委任の場合は客先常駐、請負の場合は自社開発が主です。
古今の情勢で上記に関わらず在宅勤務が増えてきておりますが、客先常駐の場合は自社のみならず客先の都合やセキュリティの問題にも左右されます。
客先常駐の場合は、休日なども客先に合わせながら取得することになり、工場を持つ製造系企業の場合は連続休暇が設定されていることが多いようです。常駐先によって大きく環境が変わるのですが、なかなか自分で選べるものではないのでガチャ感がなきにしもあらずといったところでしょうか。
4.やりたい仕事ってなんだっけ?
私が学生の頃イメージしてたシステムエンジニアやプログラマーは、パソコンに齧りついて黒い画面カタカタ言わせているオタクでした。
実際、就業してみると、プログラミングはシステム開発のなかの1フェーズに過ぎず、要件定義したり、設計書作成したり、テストしたり、運用のなかで問い合わせを受けたり、関係者の中立をしたり、試算や計画をしたりと様々なことに関わる機会がありました。
いわゆる多重下請け構造のような大規模プロジェクトと違って小規模プロジェクトを担当している経緯もあるかもしれません。
ガジェットオタクではあったけれど、プログラミングにそこまで興味がなく、残念なことに向上心とか好奇心も低めなことが災いして、テクニカル、もとい技術方面に明るくないわけですが、本当にプログラミング以外にもやることはたくさんあります。
そして、多重構造の位置付けや経験年数などによっても、携わる仕事が変わってくることが往々にしてありますので注意してほしいのです。
SIerでは大きくスペシャリスト(技術専門職)とマネジメント(管理職やプロジェクトマネージャー)のキャリアパスが示されていることが多いですが、スペシャリスト一本で活躍されている方はかなり少ないように感じます。コーディングやテクニカルスキルよりもプロジェクト管理やスタッフ管理が求められるケースが多く、コミュニケーション力はマジで重要です。
上流のシステムインテグレータ会社は若手のうち(入社後ほんの僅かだったりする)は経験のため、プログラミングやテストにも携わったりするようですが、ゆくゆくはエクセル方眼紙職人として進捗管理や顧客折衝したり、人を使って動かす上流工程にシフトしていきます。プログラミングやテストは、パートナー会社(下請け)にお願いするわけです。
もし、プログラミングをやりたいと真面目に考えている場合は、赤信号を出した下請けに自ら飛び込むか、趣味としてやるか、OSS活動など課外コミュニティに属して外部との接点を広げていくなど、一度考えた方が良いです。
プログラミングだけが全てじゃないよ、とも重ねて言っておきます。
あとは自社製品やパッケージソフトを製作している会社に入るというのもひとつの手だと思います。担ぎ出しているサービスが自社製品の顔をした他社OEMだったりする場合がありますのでくれぐれも気をつけてねん。
ちなみに大塚商会やダイワボウ情報システムといった会社(特に後者)は、システムインテグレーションというよりIT製品を扱う商社のイメージが強い。システム構築に関連するサーバやネットワーク機器などのハードウェアだったり、ソフトウェアを購入する際に、大変お世話になっております。
というわけで、改めてやりたいことを考えて就活してみると良いかも。
志望動機に繋がるかもしれないし。常に人手不足。それでは失礼します。