読書日記(3)
ゲイドルのぽたろうです。
会社にいる時間が長くなって去年の記憶がフラッシュバックしかけている。
2020/06/15(月)
6時に朝風呂を浴びて30分後にはチェックアウトして家路へ。電車のなかで高野ひと深「私の少年」の最新刊を読み始める。
聡子と真修の二人の関係を、周囲の人物からすくい上げる描き方が抜群にうまい。純愛のなかに生まれる嫉妬や疑惑が、二人の関係を静かに引き裂こうとするけれど、より強固な関係性が生まれていく。聡子には後ろめたさもあって、老婆心というか母性愛というか真修への接し方への戸惑いが少しずつ形になっていくのが愛おしい。
いつも通り8時30分には出社して仕事を始めるが、週末の自家発電がすぎて眠気が執拗に襲ってくる。昼寝を挟んでも眠気は治らず、早く帰りたいところを22時前まで仕事をしたがぼんやりとした一日だった。
帰宅後に「私の少年」を最後まで読み終えた。途中、先週迄の読書日記にも登場したプラトン「饗宴」が入っているのには驚いたが、過去に囚われて生きてきた聡子が真修を一人の男性として見て、真修の父親と対面するに至ったところは涙腺が緩んできた。真修も高校生で街角で目立つイケメンになられて、物語はいつまで続くのだろうか終わってほしくないと思いながらも、美しさは引き際があってこそとも思いいたたまれない気持ちになった。
2020/06/16(火)
太宰治「女生徒」を読み始めた。といってもこの日も昨日の疲れが抜けきれなくてほんの触りのところだけ。朝についての語りが、共感しかなくて、日常のことでここまで人の心を動かすって凄いなと思った。
2020/06/17(水)
「女生徒」の続きを読む。のろのろと読む。独白だけでここまで文章を費やせてそれを読ませるというのが凄い。文体がとても女生徒というわけではないけれど、女性のように感じさせるエモさは現代的でもあり、「斜陽」に引き続き感嘆してしまいました。
2020/06/18(木)
23時過ぎまで働いてましたので本は読んでおりません。
Switch向けに「メダロット クラシックス プラス」の発表があり、メダロット熱が冷めていたのと過去作の寄せ集めなのに気づいたらポチってた。
あと筑摩書房80周年セールだかで、ちくま新書を10冊強ぽちりました。
2020/06/19(金)
22時前まで働かせていただき、社内審査でノーをくらったりお客様から指摘事項(第一弾)が届いたり、ご意見賜れるのは有難いことです。
「女生徒」を少しだけ読んだ。家族の事柄について書かれている。近所付き合いで母親が豹変して八方美人になるエピソードが共感の嵐でした。
2020/06/20(土)
先月から読んでいた佐藤優「交渉術」を読み終わった。
佐藤優氏の本ははじめて読むのだけれど、外務省勤務時代の実体験が緻密に骨太に描かれていて、我々の世界とはかけ離れた世界なもんだから、ノンフィクションとしても面白いし、外交の最前線で日本やロシアの要職(あたしなんかでも知っている有名な方も出てくる)と仕事をしてきた著者にしか書けない本という意味では、交渉術というテーマを抜きにして興味深い資料なのであった。人物名も固有名詞で出てくるし、政治家と官僚の駆け引きだとか、交渉術としての実例が、ビジネスに役立つかはともかく、男のロマンともいうべきインテリジェンス版島耕作ともいえなくもない。
インテリジェンスとは知性のことだが、ウオトカを飲みながら我慢比べをしてロシアのお偉方との交友関係を築いていく佐藤氏の胆力と記憶力は敬意に値する。文筆家として売れるのも納得でした。機密情報や過去の反省点については、事あるごとにお詫び申し上げる、という姿勢も事務的な印象になるかと思いきや、逆に私なんかはそれすらも面白く読めた。色仕掛けにあってみたいものだわ。昼前にiPad ProとApple Pencilが届いたけど開けるのめんどい。キーボードに悩んでいて、純正のトラックパッド付きが高いけどカッコいいけれど重さがあってMacbook Proと変わらなくなってしまう。Apple純正のBluetoothキーボードにしようかと思ったけど、タッチ感が好みではなく結局のところ中途半端な買い物をしてしまったかのかと思いたくない。
給付金のためにコンビニでコピーをとって、CCCでTカードの更新手続き。未だにはがきで案内が来て、来店せなあかんことに驚いた。寝る前に「阿Q正伝」の続きを読んだ。敗北が勝利に変わる瞬間、夢でも見ているような気分になる。女を連呼するあたりから、金持ちになって戻ってきて、掌返しが二度続くところをみると、人ってわかりやすいなと思えた。
2020/06/21(日)
5時過ぎに起きて身支度して東京駅まで。スーパーホテルの日帰りテレワークプランが7時から23時まで利用できる優れものなので利用させていただく。受付で大浴場はご利用いただけませんタオルは有料ですという説明を受け、小雨で濡れていたからかタオルを出してくださってなかなかの接客だった。国会議事堂のアパよりも照明は暗めで雨なんてきいてないわよ。そういえば高校の頃に男子寮に入っていて、夏休みの長期休暇中は一部閉鎖されて、部活生とて帰省するのが当然だったのだが、私は某衛星予備校に通っていたので連泊で数週間スーパーホテルに泊まって健康朝食を味わっていたのを思い出した。いまにしてみれば貴重な時間なんだけどオナ2して終わってたな。成城石井のレジ袋のなかには昨日買ったクロワッサンが入っていて、太るのはわかっているのだけどパンはやめられない。ミルフィーユとかミルクレープとか視覚の重層構造がたまらなく好き。
魯迅「阿Q正伝」を読み終わった。革命がやってきて、自分は呼ばれなかったというところから捕まって署名させられて、字が書けないというくだり。掌返しはまだあって、卑しかった者が先生になって、最期まで阿Qは幸せだったのだろうか。なんともいえない読後感がおそった。
感傷的になったのでベッドで発電してから太宰治「女生徒」を読み終わった。意識から過去のことを様々と思い出して、愛おしいものをほふほふと掴むような感覚だが、無駄がないし余っているところもない。女生徒の1日を描いて大きな出来事もないのにここまで書けるのはすごい。
カアは、可哀想。けさは、意地悪してやったけれど、あすは、かわいがってあげます。
(太宰治「女生徒」より引用)
カア萌え。小娘がいじらしい。もうどうでもよくなってしまった。
正午に八重洲を出たらすぐに日本橋で三越があって日銀があって気づいたら神田で地理感覚が掴めない。高架下の洋食屋さんの匂いに惹かれたけど、お腹はすいてなくて秋葉原のヨドバシカメラまで。フィルムよりも貼りつけサービスのほうが良いお値段でiPad用にペーパーフィルを購入したらRetinaディスプレイの美しさが損なわれてしまった。iPadの裏側が汚れてるわん。
雑誌のバックナンバーを探しに秋葉原から淡路町、小川町の方を歩いて南下して大手町から半蔵門線で渋谷の東急本店の丸善ジュンク堂書店へ行く。行き帰りの電車で「熊本くんの本棚」の「熊本くんの小説」を読んだ。タカハシタクミが生まれてから、滑り止めの男子校での中学時代水泳部のホモソーシャルな物語も欲望を隠蓑にしたポルノグラフィーでないのか。
雑誌のバックナンバーのほかに思いつきで本を購入して、電子書籍が出てるのに紙の本を買って浪人時代や学生時代の豊かさを思い出すようだ。渡部直己「私学的、あまりに私学的な」冒頭の高校国語教員についての文章を読む。渡部氏といえば数年前に報じられた出来事が頭をかすめるが、キレのある文章に心を打たれる。もう一冊、はやみねかおる「めんどくさがりなきみのための文章教室」の冒頭も読んでみる。はやみせかおるさんの本は浪人時代に「都会のトム&ソーヤ」を貪るように読んだ。田舎から大阪に出て授業そっちのけで大型書店に入り浸っては、ヤングアダルト小説棚と文芸評論棚を訪れるあたり15年くらいたってもまったく成長していない。
夜までだらだらと過ごした後、電車で家まで帰って、気づいたら文章教室を読み終わっていた。物語の形式をとっていてとっつきやすく、小中学生が楽しく読める工夫がしてあってさすがだなと思った。その後、寝つけなくなって谷崎潤一郎「痴人の愛」を読み始めた。カフエエの給仕ナオミとの出会いから引き込まれていく。比較的一文が長めなのにつらつら読める。この調子だと今週も寝不足に陥りそうだ。