地元近辺 ダーツの旅 本編
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秋晴れの空が澄み渡る、とある爽やかな日。
どこか物寂しい小さな公園には、人影もなく、風のさざめきだけが木々の葉を揺らしている。その公園の片隅には、時間の経過を感じさせる、少し色褪せたベンチがぽつんと佇んでいた。ベンチの上には、誰かが置き去りにしたのだろうか、奇妙な地図が一枚置かれている。
一見すると普通の地図のように思えるかもしれないが、目を凝らしてよく見てみると不可解な点が浮かび上がってくるだろう。中心に記された「名古屋市」の文字のすぐ側には赤色のピンが立っており、そこから赤い円が広がっている。円は北は岐阜、西は三重へと大きく県境を跨ぎ、極めて広範囲に渡って名古屋を囲んでいる。
地図の前方、それに対峙するは一人の男。年齢は二十代ほどであろうか、その猫背気味の背中には格言のような何かを背負っている。そしてその右手には鮮やかな赤色の矢が握られていた。指先に込められた力を受け赤い矢に伝わる僅かな震えからは、彼の緊張を感じ取ることができる。
彼の視線は地図の一点をじっと見つめたまま、やがて息を整えるように静かに前かがみになった。一枚の枯れ葉が風に舞い、彼と目標との間を通り抜ける。無限とも一瞬とも思える時間の後、とうとう鋭く右手を振り下ろし、男は矢を放った。
空を切り裂き、一直線に進む紅蓮の矢。
刹那の後、赤き矢が地図の表面に突き刺さり、その運動を止めた。一、二歩と男は歩みを進め、矢の刺さった位置を確かめにかかる。矢が到達したのは、地図上に象られたもう一つの赤き矢より数センチほど右の地点であった。
男の肩が重たげに落ちた。安堵か絶望か、或いはその両方か。複雑な色の混じった表情が、彼の疲れた目元からほんの一瞬零れた。それも仕方のないことである。地図上にしてたった数センチのずれが、男のその日一日の運命を決定づけてしまったのだから。
中心から矢が僅か3,4センチ外れてしまっただけで、
現実世界の距離にして約21キロの地、愛知県豊田市保見町なる場所までただひたすら歩いていくことが決定してしまったのだから。
――――千里の道も一歩から。男は一人、ゆっくりと歩き始めた。
7時間後…
着いた!!!!!!!!!!!!
遅めの!!!!!!!!!!!!
昼飯!!!!!!!!!!!!
終わり!!!!!!!!!!!!