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リング100本試着したらアイデンティティを彩りたくなった話

昨年の11〜12月にかけて、私がせっせと励んでいたのが豪奢品試着の旅🎄🎁💍

豪奢品(ごうしゃひん)とは「非常にぜいたくで、派手な品」のことだよ

©️あきやさん

コスメに続いて解像度の低いジュエリーの世界を覗いてみようと、物理的にも心理的にもややハードルの下がるホリデーシーズン(ジュエラーはフルラインナップ揃えてバッチこい、客も多いからパッパと着けてさっさと出やすい)、勢いでリングを100本ちょい試着してみた

第一目的はひたすら目を肥やし、もし次にお迎えするならどんなリングがいいか条件とイメージをはっきりさせること。必ずしも買うことが目的ではない。

…とくればまぁ、大方の予想通りの展開。結論から言うと、欲しいリングの条件ははっきりしたのだけど、その条件に全く合致しない別のリングに今強烈に心惹かれている。ちなみにマイ誕生日は2月。ヤバいよヤバいよ!

というわけで、とても近い将来血迷ってあっさりカードを切らないために、まずはここに100本試着の記録を認めることにした次第。よろしければひとつ、お付き合いのほどを。

いつものごとく、特に印象に残ったリングについては画像を貼らせていただいています。全て公式サイトからお借りしました。


【1-10】TASAKI・FRED・ポメラート

記念すべき試着1本目は、TASAKI バランス。

つけた瞬間、気象衛星ひまわりの映像が浮かんだ。数メートル離れた姿見でもツヤツヤのパールがぽわんと手から浮かび上がっているのがわかる。3粒より5粒の方がより衛星みが強くて好き。ただし、私がつけるとぶつけまくって3日でギッタンギッタンになること間違いなし。

FREDでは、絶妙なカーブを描く地金のつけ心地の良さに感動。ポメラートでは、コロンとした色石の台座部分にまた別の石を敷いて色を透過させる、という発想にびっくり。みんな違ってみんな凄まじい。めくるめく、高級ジュエラーの洗礼だ。

【11-20】CHANEL・TASAKI(再)・ショーメ

お次は「皆が良きといふものを我もしてみむとてするなり」モードでCHANELへ。CHANELといえばやっぱあれでしょ、えーと何だっけ、そうそうココクラッシュ! …くらいのノリなので、知っていたのは名前だけ(ごめんなさい)。

なのに、迎え撃つ店員さんが完全にプロだった。いや、仕事人と呼ぶべきか。

今ある私の数少ない装備はことごとく左手に集まっていて、全てシルバーカラー。プラチナ&メレダイヤの結婚指輪と、プラチナ&マベパールの演歌リング、そして腕時計はシルバーカラーのタンクフランセーズ。なのに私がホワイトゴールドのココクラッシュには見向きもしないことを見てとって、こう提案された。

「結婚指輪の下に、ベージュゴールドのココクラッシュミニを重ねてみては?」

予想外の仕上がりに悶絶。写真がないのが悔やまれる(興奮しすぎて撮って良いか聞くのを忘れた)。

CHANEL独自のベージュゴールドが何とも良い色で、時計のフェイス(ピンクの蝶貝)とプラチナの結婚指輪を自然に繋げてくれている。しかも結婚指輪がゆるくウエーブしたデザインだから、ココクラッシュとの間にチラッと地肌が見える。これがちょうど良い抜け感を出しつつ、より色味を馴染ませる役割も果たしている。

「それで、イエローゴールドのミニをもう一本。…大きな鏡で是非ご覧下さい」

…あれ?仕事人じゃなくて、魔術師でしたかね?

信じられないくらい、良かった。全身鏡で見てもはっきりわかるくらいキラッッッキラなんだけど、全然いやらしくない。「こういうデザインのリング、確か他社さんにありましたよね」なんて思わず言い合ったけれど(某ブシュロンの某キャトルだね)、ベージュゴールド〜地肌〜プラチナ〜地肌〜イエローゴールド、という組み合わせがあまりにも完璧すぎて、これで完成では?となった。繰り返しになるが、チラ見えする「地肌」の存在がかなり大きい。

とは言え、試着旅はまだまだ序盤。「この1本!」と言える存在感のリングを探すことばかり考えていた私は、重ねづけ前提でリングを買う、という発想にまだそこまでピンと来ていなかった。ましてココクラッシュ2本だなんて、おいそれと買えるもんじゃないし。

【21-40】ティファニー・ブシュロン・Fuligo

11月下旬、なかまちさんさやさんと一緒に銀座へ繰り出して、わいわいお話ししながらザクザクモリモリ試着に勤しんだ。とっても楽しかった上に、とにかくやたらと運が良かった😋詳しくは是非さやさんレポにて(丸投げスタイル)。

この試着旅で一番印象に残っているのは、ティファニーのパロマ・ピカソ、オリーブリーフのバイパスリング(何だか呪文めいている)。

オリーブの枝モチーフで、裏から見ても茎がしっかり。細部まで行き届いたデザイン…という以上に、指に接地するのが茎部分の細い地金だけになっていて着け心地がすごく楽。こういうデザインと機能の両立(しかも超細かい)にグッとくる。そして人差し指につけてもパカパカせずにピタッと馴染んでくれて、マウス操作の邪魔にもならなさそう。良い。

ブシュロンでは、まさかこの身に着けられようとは思ってもみなかったこちらを。

もはやファンタジーかと思える神々しさ。「魔法、使えそうだね」と言いながら3人で代わる代わる着けさせていただいた。ものすごいボリュームなのだけど、驚くことに着け心地は意外なほどスッキリ。存在感はあれど違和感はない。思うに、手を真上から見た時に視界に入るのがこの姿↓

だから、比較的(?)ギョッとはしない気がする。でもヒラヒラ手を動かすと、チラチラしまうまと目が合う。これがもうたまらん。眼福でございました!!

この行脚で、自分がリングに求める条件が少しクリアになった。

・インパクトあるデザイン
・右手人差し指か中指にする前提で、ピッタリ指に密着すること
・細部へのこだわり(機能性・デザイン両方)
・ストーリー、この1本じゃなきゃダメな背景

最後の「ストーリー」が我ながらなんとも曲者。パロマ・ピカソはそれ以外全部クリアしているのだけど、「じゃなきゃダメ」とまでは行かない。じゃあ何だったら行くんだろ、というのは自分でもまだわからない。

【41-50】エルメス・DIOR

エルメスでは、カシシルを包んでいただく待ち時間に「あっ!リングの在庫聞いてみたらいんじゃね?!」と急に思いつき、無理矢理試着させていただいた(もうそろそろ退店するよね、的な流れに逆らって唐突にお願いしてしまい、ちょっと申し訳なかった)。

ずーっとシェーヌダンクルに漠然と憧れていたものの、いざつけてみると、もっとシンプルに「造形!」みたいな(語彙)インパクトあるデザインの方が好きだなと思った。ただし、ブシュロンしまうまの神に引っ張られてる疑惑あり。

ちょっと重いけどね

DIORではBOIS DE ROSEを。

これは正直、華奢すぎて物足りなかった。やっぱりインパクトを求めていることを再確認。今思えばこれは、完全にパロマ・ピカソの残像に引きずられてたね…。

【51-70】ブルガリ・カルティエ

からの、ブルガリ様で雷に打たれる。

バリエーションがありすぎて事前に候補を絞り込めず、「セルペンティとディーヴァが気になる」とざっくり言った私にパッと出していただいたこちらが大ヒット。着けて鏡を見た瞬間、久しぶりに語彙が飛んだ。鏡を見て、店員さんを見て、また鏡を見て、「◯◆◎※△ーーーー?!」と叫んで(?)しまった。

近くでじっくり見ても、遠目に全身鏡で見ても、完璧。

写真だと分かりにくいのだが、扇型のモチーフ同士の間がほんの少ーしだけ空いていて、わずかながら抜け感がある。それが独特な浮遊感を生み出していて、どうしようもなくツボだった。しかもカラーレッスン後に思い返すと、地金のピンクゴールドと蝶貝のオイスターホワイトは最強に似合う色だし、ツヤよりマット派閥だからメインが蝶貝というデザインはドンピシャ。おまけに着け心地まで最高。

しばらく、外せなかった。外したくなかった。惚れた。…まぁ、55万円ですけど。

しかし帰宅後思い返すと、あまりにも完成されすぎていることが逆に気になった。1本で世界観が完結してしまい、他に何を合わせていいかわからない。それに重量感あるシンメトリーなデザインは中指にピッタリだったけど、ボリュームがあるから隣指にリングをつけると干渉しそうなのも気にかかる。

ならばこれ1本でいい!と断言できるほどのストーリーがあるかと聞かれれば、正直そうも言い切れず。店員さんにモチーフの由来を聞いてみたら、古代ローマはカラカラ浴場のタイルの模様だとのこと。それも素敵なんだけど、聞いた瞬間「風呂場のタイルか」と思ってしまったことをここに白状します…。

ジュエラーとして一番好き!と感じたのは、次に入ったカルティエ。うっとりするくらい高貴なのに、デザインは意外なほど遊び心に溢れていることを初めて知る。中でも一番心惹かれたのは、この一風変わったクラッシュ ドゥ カルティエ。

なんて優美なメリケンサック。店頭にあったサイズの都合で薬指につけてみたら、華奢と大胆のバランスが絶妙だった。多分、人差し指や中指ではこうはならない。可愛いのにパンク、中指立ててる(概念)のに上品。「こんなに似合う方がいらっしゃるんですねぇ」と言われてめっちゃご満悦なワタス。ウキウキと品番を控えていただいたら、88万円で白目を剥いた。

あと、つけてみたらめちゃくちゃキュートだったので載せておきたいのがこちら。「迫力あるマダム」の印象が強いパンテール、一度は実物を拝んでみたい…!と出していただいた。

真正面からコンニチハしたヒョウのお顔が可愛いのなんのって。しかも一見ゴツそうなのに、輪に切れ目があるから抜け感があって、意外といける。調子に乗って色違い・型違いで試着したところ、ピンクゴールドだと私の指には埋もれてしまい、ダイヤ付きだと一気にプラス20歳くらい迫力が出て慄いた。以上、社会勉強の巻。

【71-76】ブシュロン(再)

銀座本店では時間がなくて試着できなかったキャトルを見に、仕事帰りにふらりと地元百貨店にて再訪。が、たまたま店員さんが出してくださったこちらに全部持って行かれた。

セルパンボエム アクアプレーズ。息を呑むくらい美しかった。台座がないから石が光を透過していて、その光り方が昔見た夏の地中海を思い起こさせた。いつまでも見ていられそうだった。揺らめきながら奥へ奥へと誘うような石の輝きに、今にも吸い込まれてしまいそう。

店員さんの説明では、このデザインは蛇を象徴しているらしい(石が頭で、地金の模様が鱗)。でも、パッと見ただけでこれを蛇だと思う人はそんなにいない気がする。実際、涙型が好きだという理由で買われた方もいらっしゃいます、とのこと。それを聞いて、思った。

私はジュエリーにストーリーを求めていたけれど、ジュエラーの作品ってむしろ、イメージを限定しないように出来ているんじゃないか?世界観の概要は確かに提示されているけれど、具体的にどう捉えるかは個人の自由、つまりはアート。考えてみたら、あのカシシルに海を見出したのだって、完全に私の主観だ。

そうか。だったらジュエラーで語られるデザインの由来は、そこまで気にしなくていいのかもしれない。むしろ、ストーリーは私の中にある。私は、一目見ただけで自分の中の「何か」が呼び覚まされるようなリングを探していたんだな、と気がついた。それって一体…?

答えは、存外早く明らかになった。

【77-97】drama H.P.FRANCE

ここまで高級ジュエラーを中心に周っていたので、趣向を変えてデザイナーズや一点ものはどうだろう?と思い、立ち寄ってみたのがdrama H.P.FRANCE。ここで出会ったのが、mmmの茉莉華さんを思わせる凄腕の神店員さんだった。

「どんどん写真撮ってくださいね!」と言いながら怒涛の勢いで試着させてくださり、しまいには自ら進んで私の上半身を撮影してくださった。提案力も凄まじく、彼女のおかげで貴石リングの魅力と「組み合わせの妙」を知る。インパクトとストーリーのある「1本」にずっとこだわってきたけれど、ここで手トータルでバランスを取る、という視点に初めて気づかされたのだ。

シルバーとゴールドを重ねたり、嵌める指を入れ替えてみたり、左右の手のバランスを考えてみたり。何これめっちゃ楽しい。でも私の指は短いから、隣同士だとリングがぶつかってガチャガチャしがちで…思わずそうぼやくと、店員様がサッと出してくださったのがこちら。

細い地金と形状のおかげで隣のリングに全く干渉しない。なのに、あるのとないので印象が全く変わる。「この1本」視点だと全く候補に上らなかったデザインだけど、こういうタイプを足していくことで、手全体が立体的になる気がする。服でいう、インナーの重要性に気づいた感じだ(これはルミ10で買ってしまいそう)。


それで、この人差し指にしてる指輪ですよ。


鉱物感の強いサファイア。インパクトは超弩級、青とゴールドも大好きな組み合わせ。本当はもうちょい抜け感のあるデザインが好きなのだけど、それでも目が離せなくて、かなり長い間つけたままにしていた。なんでこんなに気になるんだろう、と思っていたら、店員さんに「地球みたいですよね」と言われ、あぁ…となった。

というのもこの日、たまたま家に忘れていた私の演歌リングがこちら。

これ、「月の雫」をイメージした作品なのだ。

月と、地球。手元に、宇宙爆誕。

すでに持っている大事なリングに新しいリングを掛け合わせることで世界が立ち上がるって、これこそまさに私が求めていたストーリーなのでは?そう考えると、あの細身のゴールドリングも何だか惑星の軌道みたいに思えてくる。静かに雷に打たれながら、地球リングの試着姿を撮っていただいてこの日は帰宅したのだった。

ところが。後から上半身全体の写真を見返すと、どうにも手が寂しい

カラーレッスン的な観点で言うと、残念ながらこの青が私に似合う色ではない、というのが一つ。でもそれより大きいのは、地球じゃ月を照らせないし暖められないからじゃないか、という気がした。

…急に厨二になったのには理由がある。

月は、占星術的にはインナーチャイルドの象徴。それを知ったのは、先日のあすみさんのお話会でのこと。そうとは知らずに自分が「月の雫」を選んでいたことに気づき、私は密かに震えた。雫は、ずっと満たされずに寂しい思いをしていた幼い私が流した涙でもあり、大人になり母になった自分が今流している浄化の涙でもある。まさしく「アクセサリーはアイデンティティ」だ。

だったら、涙を流している月にふさわしいのは、地球というより太陽なんじゃないだろうか。暖かい陽の光で優しく月を照らし、より一層輝かせる…そんな世界観を手元で表現できちゃったら、ものすごくいいんじゃないかな。

…ああ、うん。そうだ。キタね、これ。

【98-105】GUCCI・ブシュロン(再々)・ポメラート(再)

そんなわけで、私にふさわしいのは太陽を思わせるインパクトあるリングじゃい!と、そりゃもう意気揚々と再度リサーチに乗り出した。

結果、サイトで見つけてうおぉぉぉぉぉ!!!となったのは、このあたり。

【ブシュロン】セルパンボエム ロードライトガーネット
【ポメラート】ヌード ガーネット
【ポメラート】ヌード ジュレ シトリン&カーネリアン

もちろん、試着しに行った。


……違った😇


セルパンボエムのガーネットは、写真だとかなり透明度が高そうなのだけど実物はもっとずっしり重厚感があって、いい意味で年齢を重ねてもつけられそう。ポメラートのガーネットも然り。どちらも大変素敵な品ではあるけれど、太陽ではない

ポメラートのオレンジのジュレがもしツヤツヤした石だったら、かなりイメージに近かったかも!でも、これはフロストだからこそ魅力的。マット派閥としてはむしろめちゃくちゃ似合うデザインだと了解したけれど、いかんせん、太陽ではない

うーーーん。惜しい!!!

そこから今日現在に至るまで、イメージドンピシャのものには出会えていない。これはちょっと、かなり厳しい戦いになりそう…というか、一点ものとの奇跡の出会い系、なんならルースと出会って仕立てていただく系かもな、という気がしている。とりあえず、気になるデザイナーブランドさんをコツコツ覗きながら気長に探そうかな、と思っている。


と、ここまで延々書いてきてアレなのだけど、


冒頭に書いていた「条件に全く合致しない別のリング」への熱は、今もって全く冷めていないことを自覚しました。


…どういうこと😇


本稿はすでに長くなりすぎたので、そのリングについては改めて試着に行った上で、頭を冷やすべく別記事にさせていただく所存です(←フラグ)。



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