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200冊のメモ帳

会社を辞めて2年目の春が、もうすぐそこまで来ました。

私は今、絵を描いています。

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いつの間にこんなに時間が経ったんだろうな。
とっくに明けてましたね、初めまして2019年。

会社辞めたの、2017年の夏だったんだよなぁ。
こんなに長く会社勤めをしない生き方をしてると思わなかった。

もっと早くポッキリ折れて、お金に目が眩んで、「平凡な幸せを」とか言って、これで本当に良いんか自分、って思いながら
でも仕事もそれなりに楽しかったりするんだよな、って思いながら
淡々と、ゆるい波風を受けながら、日々、淡々と
また日常に戻ってるんだと思ってたよ。

戻れなかったよ、うまく行かなかったね人生。

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会社辞めた時「お前はもっと好きなことして生きれば良いよ」「少し休めば良いよ」っていろんな人に言われたけど、
もう好きなことなんて何もなかった私は、生きていちゃいけないって言われた気がしたんだよ。

何かしようと思っても、なかなか気分が乗らなかったし、身体も重たかった。
今やりたいことがないなら、昔好きだったことをやってみようと思って久々にペンをとって絵を描いたら下手くそすぎて絶望した。
自分が長いこと放置して手放したくせに、好きだったことにさえ裏切られた気がして、酷く苛立ち勝手に傷ついた。

それでも毎日描いた。
他にできることも大してなかったし。
落書きだけの日もあれば、色付けまでする日もあった。
SNSにも上げた。

半年ほど経った頃、twitterでたまに話していた子から twitterのヘッダーを描いて欲しいと依頼があった。
仲良くさせてもらっていたし、私の絵を気に入ってくれたのが嬉しくて、無償で受けた。
一年近く経つけど、その子のヘッダーは今も私の絵だ。
無償とは言え、初めての依頼で、嬉しくて家で舞った。


絵を描いて生きたいと思った。

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会社辞めて一年くらい経って、バイトもはじめてなんとか月々の生活費くらいは稼ぐようになって貯金を食い潰すことも減った頃、今度はInstagramに上げた一枚の絵を見た方から「絵を描いて欲しい」という依頼を受けた。

10年近く会っていない、高校生の頃の同級生だった。

正式な絵画依頼は初めてだった。
「お金がかかるけど大丈夫?」恐る恐る聞いた。
値段を言ったら「大丈夫!!何描いてくれても良い!!貴方の好きなもの描いて欲しい!」と返ってきて泣いた。
新婚だったその子の家のリビングルームに飾ってくれているらしい。
私が人生で初めてお金を貰って描いた一枚だった。


絵を描き続けていくにはどうすれば良いか、本気で考えるようになった。

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初めて絵を売ってから数ヶ月と経たない時に、前職でお世話になった方から別会社でのコンサル依頼を貰った。
週2回ほどだったし、今のバイトとも両立できるし、半年ほどの短期依頼だったので受けた。
お世話になった方からの依頼だったからとは言え、前職と類似した仕事をするのは正直抵抗もあった。
しんどみ半分、懐かしさ楽しさ半分といったところだ。
結局好きだったんだよな、前職も。

ある日、その会社の工場長に聞かれた。
「似顔絵は描けるか?」

咄嗟に答えた。

「描けます。フリーランスでイラストレーターしてます。」

これが去年の年末頃の話。

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コンサルで行っていた会社では、似顔絵入りメモ帳を販売していた。
今まで描いていた方が居なくなってしまい、代わりに描けないかということだった。

人生何が起こるか分からない。

いつの間にかその会社の専属イラストレーターになった。
フリーランスとしてお金をもらっているため、コンサルとはもちろん別料金だ。

会社から依頼を受け描いた似顔絵入りメモ帳の表紙が、
今週正式に他社からの依頼により受注した。

200冊のメモ帳が生産され、納品された。

その全ての表紙に、私の絵が載っていた。

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記念に貰った一冊を家で眺めながらお酒を飲んだ。

こんな日が来るのか、と思ったらなんだか泣けてきて
子供みたいにわんわん泣いた。

たった200冊。
たまにしかこない依頼だし、やっすい額だし、とても生活が成り立つわけじゃない。
でも200冊。されど200冊。

好きなことなんかなくて、過去に縋り付いては勝手に裏切られた気がしたあの日が、今に続いてる。泣ながら飲んだお酒の味はさっぱり分からなかったな。安いお酒だし、別に良いんだけど。


今。

今 私は、好きなことがあります。

それは絵を描くことです。

もう少し、しがみ付いてみようと思うのです。

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