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知らない世界に足を踏み入れた話

たまには日記っぽいものを。

GWはほとんど仕事しかしてなかったんだけど、一日だけ東京でスパコミ(SUPER COMIC CITY)に参加してきた。
大雑把に言うとコミケ的なやつ。同人誌即売会が主。

初参加がまさかのサークル参加で、いきなり売り子やってた。
漫画もアニメも最近めっきり見なくなっていた私にとって、だいぶ新鮮なイベントだ。(人生で一度くらい行っときたいな、くらいの感覚だった。)

その実、自分が今回参加したアニメのジャンルも数話見た程度しか知らない。
物書きの友だちが書いた小説を売るだけの、その名の通り本当に「売り子」として来た。

東京、人でいっぱい。

当たり前だけど、サークル参加者は一般参加より早めに入場できるので
早めに入って設営、準備をする。
人気作家さんのところは一般の人がくる前に既に設営を終えた(もしくは他の人に任せた)サークル主たちが並んでた。
一緒に参加した友だちは、自分の作った小説を黙々と並べ10分足らずで設営は終わり
「売り子よろしく。」と言って、お目当てのサークルへスッと並びに行ってた。
売り子先手は、私だ。

サークルで参加すると、鬼のような列に並ばなくても良いと言うのも大きな利点らしい。
(友だちが言ってた。)

10時 一般入場。
会場、人でいっぱい。

売り子開始5分、目の前に人が来た。一冊お買い上げ。
普段 接客業をしているのもあって、対応は問題なかったはず。
なのに買ってくれた方がなかなか動かない。
少ししてやっとの思いで口を開いてくれた。
「…あの、ご…ご、ご本人様ですか…?」

売り子です。ごめんなさい。

本人じゃないことが分かると少し緊張も解けたようで比較的スムーズに話してくれた。
前作からとても好きで、ずっと作品を追いかけてます、と
とても目を輝かせて伝えてくれた。

「必ずお伝えします。本人、泣いて喜びます。」と伝えた。

5冊目に買いに来てくれた人は、勝手に本人だと思ったらしく
興奮気味に感想をめちゃくちゃ伝えてくれた。
繊細な文章の流れ、広がる景色、すべて好きだと。

「必ずお伝えします。本人、泣いて喜びます。」と伝えた。

なんだか私も、泣けてきた。

開始から2時間くらい経って、友だちが買い物から帰ってきて店番を交代した。
私はこのジャンルにこだわりがあるわけでは無いので、多ジャンルも含め雑多に見て回った。

編集部コーナーに漫画を持ち込む人、コスプレする人、
同人誌印刷の売り込みをする印刷会社、やたら人気が出てた鯖寿司の屋台。

全く迷わずスッと目の前に来て、「これ一冊下さい。」と言って買った後 颯爽と帰っていく人。
「大好きな作家さんに会えたのに、上手く話せなかった…」と泣いてる人。
「同ジャンルで、またお会いできて嬉しいです。」と親しげに話す売り手と買い手。

不思議な世界だった。

行ってみてまず思ったことは、「行ってよかった。」
作品に対する熱量だけじゃなくて、売り手と買い手という対人間への熱量が凄かった。
商業だとその「作品」だけが全てに近いけど、こういうイベントの場合 売り手と買い手の距離がとにかく近いので
作品以上に、人に対する想いがとても溢れているように感じた。

ジャンルは違えど私もモノを作る人間だからこそ思うのかもしれないけど
私の場合は、作った「モノ」と自分には、いつもちょっと距離がある気がしている。
良くも悪くも、モノの評価がどんどんひとり歩きして、自分から独立して置いてけぼりくらって、みんなが必要としているのは結局「モノ」の方であって自分じゃない、という虚無に襲われてしまうことがたまにある。

でも今回のイベントで大きく感じたのは
「あなたが作ったモノだから、好きなんです!」という熱量を、売り手と買い手が目と目を合わせ
本当に近くで感じることができるからこそ、自分自身が評価の受け手なのだと実感できるということ。

もちろん色んな感想があると思うので、あくまで私個人の意見なんだけど。

私が売り子をやっているときに、友だちの書いた本を買ってくれた人のあの目
友だちにも見せてあげたかった。。

本当に綺麗で、こっちが泣けてきたんだよ。
君の作る文章が、すっごい好きなんだってことが、一目で分かる目だったんだよ、ほんとに。

知らない世界にちょっぴり足を踏み入れたら、なんだか胸がつまった。

私も頑張ろう、そう思えた。


余談

友だちの本の裏表紙の絵は、私が描いた。売れたらやっぱり嬉しかった。

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