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"ミルグラム"にハマって看守デビューしたので、現時点での感想・個人的に下したい判決を語る

ぽていとと申します。
普段はTwitterに生息しているオタクなのですが、今回は内容が長文になるので、せっかくの機会ですし普段よく目にするnoteを始めてみました。
こういう物を書くのは初めてなので、どうぞお手柔らかに…

注:この記事には、"ミルグラム"の楽曲MV・ボイスドラマ等の内容についてのネタバレが含まれます。
ミルグラムについて全く知らない方も大歓迎ですし、この記事を先に読んでから興味を持つという形でも充分楽しむ事ができると思いますが、下記の動画を視聴するなどして、ミルグラムについての最低限のルールだけは把握する事をオススメします。


ハマった経緯・現時点の自分の状況


ボカロ好きなので、前から"ミルグラム"というプロジェクト自体はうっすらと知っていた
→たまたまおすすめに上がってきた『粛清マーチ(囚人No.8 アマネ 第二審MV)』をきっかけに、ミルグラムに本格的に興味を持つ
→どうせなら最大限楽しみたいので、
1.公式サイトのキャラクタープロフィールを見る
2.ボイスドラマを聴く
3.MVを観る
の順番で、10人分しっかり楽しむ
という流れでした。

つまり、
・公式サイトのキャラクター紹介、発表済みのボイスドラマ、MVは履修済み
・ミルグラム公式アプリのサブスクには現時点では未加入なので、ユーザーから募集された尋問&それに対する囚人の回答については未履修
という状況です。

執筆開始時点では第二審の『粛清マーチ(囚人No.8 アマネ)』が公開された直後、囚人No.9 ミコトの第二審MVの公開前です。
執筆中にミコトの第二審MVが公開されましたので、該当記事に関しては公開前時点での考察・公開後の考察を分割して掲載しています。

ではさっそく10人に対しての判決を書いていきます、あくまで"個人の" "パッと見の"感想です。
価値観を押しつけるつもりは無いし、僕自身も今後の考察を経て意見が180°変わるかもしれません。 よしなにどうぞ!


-判決-

囚人No.1 ハルカ

第一審:無罪 第二審:有罪
短評
:犯した罪の内容、凶行に及んだ理由から嫌悪感が強い。赦したくない

しょっぱなから「この人なんで第一審で赦されたの…?」と思ってる囚人筆頭
まあ確かに、第一審MVの時点では「じ、情報が足りねえ〜〜〜ッ 判断材料が少なすぎて有罪も無罪もつけようがねえ〜〜〜〜〜ッッ」という感想しか出なかったから、みんなも"疑わしきは罰せず"という事で無罪優勢だったのかな…?というメタ読み
初期の初期キャラ、一番最初の判決だからみんなも勝手がわからなかったはずだし…。

しかし第二審のボイスドラマからは気持ちが完全に有罪に傾いた、調子に乗らせていい人間ではない
特に『ぼ、僕は、僕より小さな生き物なら、殺せるんだぞッ!!』という発言で嫌悪感MAX
その言葉の通りに、少女・犬・観賞魚・その他多くの動植物や虫などを手にかけたかのような描写がある。

ハルカにとっての"自分より小さな生き物"の範囲は、ハルカの身体の成長に伴って広くなっていく。
現在の彼の身長は174cm。17歳の男子としては、平均より少し高い程度にはある。
いずれは、大半の人間を"殺せる生き物"だと認識する日が訪れるだろう。…あるいは、もう既に。

看守エスのボイスドラマで、ジャッカロープは"櫻井遥"と言う名前に対して『ややこしい名前だが、男だ。』と述べている。
これを深読みするのなら、産まれる前に母親が考えた"ハルカ"という女の子の名前をそのままつけられたのかもしれない。

望まれなかった男児、それ故に生じた生育環境の歪み。抱えた劣等感と、喪失した自己肯定感。
ねじれ曲がった精神が発した苦し紛れのSOSが、周囲への攻撃という形で発露した…そう考えることもできるだろう。

しかし、第一審MVを見ると、ハルカは幼少期にはしっかりと愛情を注がれていたような描写がなされている。
衣服や寝具も上等な物だし、少なくとも生活環境には問題はなく思える。

自分より出来のいい人間と比較され、"期待はずれ"と口癖のように言われてきたという点には問題があるが、これほどの凶悪な犯行をしても仕方がない、と思えるほどの理由ではないだろう。
個人的には、あまり同情はしてやれないし、それどころか強い嫌悪感を覚えている。

言行に発達障害を持った人の特徴が見られる、という考察もある。
いわゆる"アダルトチルドレン"なのだろうな、という事も察せられる。

だが、それらを全て鑑みても、やった事があまりに残虐すぎる。
抵抗力の小さい弱者を選び取った上で蹂躙するような卑怯者を赦すには、到底足りない。

責任能力の有無については論じず、ミルグラムのルールに則り、僕個人の判決としては有罪とさせてもらいたい。


囚人No.2 ユノ

第一審:無罪 第二審:無罪
短評:赦すも赦さないもない。その代わり、助けを求められようが手を差し伸べるつもりもない。 強いて言うなら無関心の"赦す"。好きにすればいい

自らの罪をここまであけすけと告白したキャラは他にいないだろう、ユノは自分の罪を"援助交際の末の堕胎"だと公言している。
倫理的な問題はあれど、これを"殺人"と呼ぶべきかは確かに難しいところだと思う。
個人的には、第二審ボイスドラマの
『命を奪う…という実感を得られるほど、私には"それ"が生命だと感じられなかった。』というセリフがかなり印象的。
ただし、彼女なりに深く考えた結果の堕胎ではなく、『何もかも面倒になった』という理由での選択なので、かなり無責任であるという事を忘れてはいけない。

ところで、このミルグラムにおいて、第一審で有罪判決が下った者に対する罰はどのようなものだったかを、今一度思い起こしてみてほしい。

そう、有罪になったからといって、ミルグラムから即座になにかしらの刑罰が科されるわけではないのだ。
あくまで、対象の囚人の思想を否定する、というだけのものだ。
有罪・無罪について話し合う"大勢の話し声"が聴こえるという精神的なストレスはあるし、囚人No.10 コトコによる襲撃が発生するなどの二次的な被害はあるが。

赦す、という事はつまり「そのように生きても良いだろう」という事であり
赦さない、という事はつまり「そのような在り方は認めない」という事だ。

彼女に対しての自分の意見は、ニュアンスは微妙に異なるが、「ユノがそれで良いというのならそう生きればいい」「勝手にすればいい」という、無関心の"赦す"だ。
仮に彼女に対して意見するとしても、避妊はちゃんとするべきだというアドバイスぐらいだと思う。
どちらかというと、問題があるのは"買う側"の大人だと思うので。

ただ、少し引っかかる点もある。
未成年者の堕胎は、親権者の同意が必須のはずだ。
それなのに、ユノは第二審ボイスドラマにて『家族もとっても仲良しだし』と述べている。

まともな家庭なら、多少なりとも娘のそのような行為にショックを受けるものなのでは?
そう考えると、はたしてその堕胎は正当な手続きを踏んだものなのか?
あるいは、堕胎をなんとも思わないような歪んだ倫理観を持った親なのか?
いずれにせよ、ユノが何かを隠している可能性は高いだろう。

最大のポイントとして、そもそもユノは救われることを望んでいない。
それどころか、外野から幸福についてだの正しい交際だのと口出しされる事を忌み嫌っているようだ。
第二審MV "Tear Drop"の歌詞 『知ったかぶりは 黙って?』が全てだろう。

ユノが好きな人は、それでも"赦さない"に票を入れているのかもしれないな、と感じた。
事実、ユノは自分が赦されたことに対して『冷めた』と述べている。
彼女をそれでも救いたいと願い、赦さない選択をしたファンがいるのなら、最後まで折れずに頑張ってほしい。
たとえそれがユノからどれだけ拒絶され、嫌悪されようとも。


囚人No.3 フータ

第一審:有罪 第二審:無罪
短評:一番赦したい。 罪自体が比較的軽く、反省の態度も深く見える。 赦してあげて;;

社会の全てにうんざりした様子の、クラスにひとりはいそうなひねくれた青年。筆者にもそんな時期がありました
刺激を求めて街を練り歩き、"悪人"を探してはインターネット上に晒して叩くという、いわゆる"ネットリンチ"での私刑を楽しんでいた愉快犯。

そんな日々の中で、フータに"悪人"として目をつけられたある少女が、インターネットを通じて大勢の人々によって罵詈雑言を浴びた結果、精神を病んで自殺してしまった…という話だと推察される。

ネットリンチは決して褒められた趣味ではないが、フータいわくそれは『悪い事を悪いと言っただけ』であるらしく、本人の性格は善人に近いようにも見える。
欠けていたのは当事者意識のみであり、倫理観は比較的まともで、罪悪感もしっかり抱えている。
マイナスなイメージを挙げるならば、フータは被害者への謝罪の気持ちというよりも、自分が苦痛から逃れたいという気持ちの方が強いのかもしれないが。

後述するが、第一審で有罪となったフータは、囚人No.10 コトコの襲撃によって、満足に体を動かす事すらままならないほどの大怪我を負わされた。
安全靴のように、つま先が硬質な素材でできているコトコの靴で思いきり蹴られたフータの右目には、もう二度と視力が戻らない可能性が高いらしい…。

フータにインターネット上で叩かれて自殺した少女が、具体的にどんな事をして目をつけられたのかはわからない。
少なくともフータは、まさか自分の書き込みがきっかけとなって人が死ぬなどとは一切思わなかったようだ。ましてや、本人によれば"悪い事を悪いと言っただけ"だというのに。

だが、我々にも心当たりがないだろうか?
フータほど表立って行動はしていなくとも、たとえば有名人の不祥事についてのニュースを拡散する、異物が混ざった料理を提供したレストランを批判する、いわゆる"バカッター"に苦言を呈するなど…
些細な事でも、一切していないと胸を張って言えるだろうか?

では、ミルグラムの囚人の有罪・無罪について話し合う事についてはどうだろうか?

そう、この囚人の罪は、"ミルグラム"そのものの構図に最も近いのだ。

面白半分の憶測で囚人の善悪を判断し、大勢の人間と意見を共有し、悪人であるのならば徹底的に叩く。
軽はずみな気持ちで下したその"判決"が、予想だにしない惨事を招いてしまうという所まで…。

これについて看守エスとフータが激論を交わす、第二審ボイスドラマ"返り火に燃える"は一聴の価値あり。

自分たちの境遇と似ているから、という理由も多少はあるかもしれないが、とにかくフータは反省の色が濃く、赦してやりたい気持ちが強い。
少なくとも第二審では無罪としたい。

余談
『バックドラフト』が曲としてトップクラスに好き
最近はずっとループ再生してます


囚人No.4 ムウ

第一審:無罪 第二審:有罪(圧倒的)
短評
:ムウちゃん…かわいそうに……ムウちゃん? ムウ??

第一審ムウ『いたいた痛いのやめてくれないの 乾いちゃってどうしたら…』
ぼく「いじめ被害者やんけ!ムウちゃんかわいそ、こんなん無罪よ無罪😁」

第二審ムウ『だーってだって悪くないもんっ🎶』
ぼく「ま、ま、負けたァ〜〜〜〜〜〜〜ッ!!(膝から崩れ落ちる)」

ゆるせねえよおれ・・・

恵まれた容姿から腐りきった性根
生まれながらの女王にして搾取の権化

第一審のMVを一見すると
追い込まれたいじめ被害者が、必死に救いを求めて縋った同級生にまで手を振り解かれ、激昂の末にカッターナイフで刺殺してしまった…という風に見えるだろう。
なるほど、少々やりすぎだとはいえ、同情はできるし納得の理由だろう。
それが真実であれば。

実際には、どうやらいじめの加害者はムウ自身だったようだ。

口先でどれだけ取り繕った嘘を吐こうが、囚人の心象を偽りなく映し出すのが楽曲のはず。
その楽曲を、『本気で自分は悪いと思っていない』 という理由で、彼女は鮮やかに騙し切った…いや、ムウ本人は騙しているという自覚すらないのだろう。お見事と言うほかない…

第一審終了告知時のジャッカロープによると
『最初は完全に"赦す"一辺倒だったってのに、急に心変わりしたじゃないか。"なにか"気づいたかァ?』
とのこと。
みんな遅すぎたんや…都合よく改竄されている事に気づくのが…;;

散々指摘されてはいるが、第一審・第二審を通して、表情をしっかり描かれている同級生は殺害した相手だけだった。
アフターペインの『"あなた"が好きよ』というイマイチ不可解な歌詞を鑑みると、その相手に特別な感情を抱いていたかのようにも思える。
単純に、女王様気分だったムウに反発してきた目障りな相手、という事で印象が強かっただけだとは思うが。

気になるのは、『待って待って仮の話 私がいけない子だったらどうしよ?』という歌詞からかすかに覗いた反省の色
赦せる要素があるとしたらそこぐらいに見えるけれど…その直後の歌詞は
『ずっとずっと 嫌わないで 痛みの"あと"は 探さないでね?』
であり、第一審MV "アフターペイン"の矛盾点を今から探すこともやめろと釘を刺しにきている。
どこまでも自己保身しか考えてないっすね これ無理だゾ

余談
声優さんの歌い方がムウというキャラクターを"理解"っていて凄い
ラスサビ辺りの『かわいそうなの!!』とか『悪くないよっ♡』の演じ方には、心惹かれる可愛らしさと背筋が凍るような恐ろしさが共存している…。


囚人No.5 シドウ

第一審:無罪 第二審:無罪(圧倒的)
短評:これもう主人公だろ 無罪でいいでしょう(断定)

自分がやった事は赦されるべきではない、裁いてほしいと望んでいる囚人。
そんな彼にどのような過去があったのかを推察すると

なんらかの事故が原因で、シドウの妻と2人兄弟の息子たちは、3人同時に命に関わるほどの大怪我を負ってしまった。
幸か不幸か、臓器移植の心得がある外科医であったシドウは、脳死患者から臓器を取り出し、自らの家族…おそらく妻(染色体XXの描写から女性である事は間違いなく、シドウの子どもは両方男子)へと移植した、というものだろう。
移植や治療の描写もない2人の息子については、おそらくもう…。

問題点を挙げるなら、移植先の患者、つまり救おうとしていた人間はシドウが大切にしている家族であり、身内贔屓をしているという点だ。
それを裏付けるかのように、第二審ボイスドラマでは、シドウの口から"家族の特別さ"について語られる。

刑法では、「犯罪者を匿い、助けたとしても、親族であれば無罪にできる」という内容がある事から、
『俺には刑法ですら、どんな状況でも家族は助け合うものだ、と言っているように思えました』
という自らの解釈を述べる。

仮に、患者を意図的に脳死状態に持ち込んでまで、妻への移植を強行したのであれば、それは決して赦される事ではないだろう。
しかし、この囚人が他と一線を画すのは、最終的な目標となっていたのは、常に人命を救う事だったという点だ。

ミルグラムには、実際に彼に命を救われた人間がいる。
コトコの襲撃を受け、大怪我を負ったフータとマヒルに治療を行ったのはシドウだった。
特に、マヒルに関しては"治療がなければまず確実に死んでいた"らしい。

看守エスは、罪に対するシドウの"赦さないでくれ"という向き合い方に対して、
『何が死を望んでいるだ? 馬鹿にするなよ。
必死に生きたいと願え!
生への執着があるからこそ、罪に対しての罰は存在するのだ。
放り投げてもいいような命で、向き合うなよ…!
と激昂する。

throw down(スローダウン)、投げ捨てる事など絶対に許さない、と。
その言葉を受け、『俺は、生きたい』と願い始めたシドウの背を、そっと押してやらない理由などあるだろうか。

囚人No.10 コトコは、ボイスドラマにて看守エスに対し
『あなたは悪を裁く処刑人ではない。赦されるべき殺人者を救うのも、あなたなのよ』と述べていた。
その言葉は、まさにこのような囚人にこそ当てはまるものなのではないだろうか。
コトコにとってはそのような意図での発言ではないだろうが、少なくとも自分は無罪としてやりたい。

余談
第二審MVラストの『俺は、必要だから(白手袋キュッ』を見てくれ
いや、こんなんもう主人公ですやん!! 無罪とします(断言)


囚人No.6 マヒル

第一審:有罪 第二審:無罪
短評:ジャッカロープ『そんな悪いことしてたのかァ?あいつ。』 ぼく「わかる」

ハルカとは逆に、第一審でなぜ赦されなかったのかがイマイチわからない子。
ミルグラムの囚人である以上、殺人に関与したという事は間違いないはずだが、では実際にどのように関わったのか?被害者の死因は?そもそもマヒルに殺意はあったのか?

なにもかもが第二審に至っても不明瞭に見えるが、それでも有罪判決が下ったらしい。

考察を読んでも、納得できるような理由は未だに見つけられていない。
恋をしている自分に酔っていただけで、相手の事は一切見ていないのでは? という解釈もイマイチ釈然としない。

病的な恋愛脳である事はボイスドラマを聴いても明らかだが、人を殺しておいて赦された他の囚人を差し置いてまで赦されないような罪なのか…?と疑念を持っている。
少なくとも、彼氏の死因は自殺であり、(あくまで現時点では)マヒルに殺意があったようには到底見えない。

重すぎる愛で潰れてしまったという事を、本当に殺人と呼ぶのか?
この囚人の最大のポイントはそこのはずだが、まだ判断材料が足りなすぎると感じる。

疑いの目を向けるとするなら、恋人を喪った後にしては、ミルグラムに収監された直後の彼女の振る舞いが非常に明るく見えた事だ。
ここを指摘されると、やはり恋愛対象を人間として愛しているわけではなく、恋をしている自分に酔っているという解釈も納得はできる…が、最期まで愛を遂げた事に後悔は無い、と考えているのならそう不自然でもないような…。

第三審次第でどちらにでも転びそうな不安は拭えないが、現時点の情報から判決を下すなら、様子見で赦すという選択をすると思う。

愛が重い女の子、フィクションなら最高っすね フィクションなら…。


囚人No.7 カズイ

第一審:無罪 第二審:無罪
短評:とても赦したい。 残酷な事をしているのは間違いないが…。

刑事仲間の女性が自分に好意を持っていることを察し、アプローチをかけて婚姻に至ったカズイ。しかし、彼は同性愛者であり、それを自覚してもいた。
おそらく一生隠し続けるつもりだったであろうその秘密を、しかしある時、"自分は同性愛者であり、恋愛対象として好きになった男性が他にいる"という事を妻にカミングアウトした。
妻にとって、その告白は
"自分を異性として愛してくれた事など、ただの一度もなかったのだ"
という、下手な浮気などよりも深い絶望を与える物だっただろう。
心が砕かれてしまった彼女は、そのまま自死を遂げてしまった…

というのが、カズイにまつわる話として有力な説だと考えられる。

同性愛者である事を自覚しながら、積極的に女性にアプローチをかけ、自分の人生に巻き込んだ事。
その割に、死ぬまで嘘をつき続け、妻を騙し通す覚悟もなかったという事は、確かに自分勝手だと言えるだろう。

しかし、そもそも彼が自分の生まれ持った性質のままに恋愛をすることをやめてしまったのは、諦めや妥協の気持ちが大きかっただろう。

『やめられない 普通じゃない この想い 望み通りにはならない』
という第二審MVの歌詞は、たった一文だけで"自分の本当の気持ち"と"諦めた欲望を押さえ込もうとする心"との間での激しい葛藤がありありと感じられる。

そもそも、恋愛感情の熱の違いについては、異性愛者同士の間でも往々にしてある事ではないだろうか。
心の底から、本当に愛し合っている者との間でしか婚姻は結ばれていないのだろうか? もしそうであるのなら、一説では30%以上ともされる離婚率の話に説明がつかない。
自分や他人に嘘をついてでも、幸福を目指して精一杯に手を伸ばすのは、それほど糾弾されるべき事なのか?

自分の望んだ幸福を得られるのなら…という願い、それが叶わぬとわかった時の絶望。 その深さを、カズイ本人以外が簡単に"理解できる"などと宣うのは、傲慢というものではないだろうか。

普通…という表現は正しくないのかもしれないが、僕は多数派である異性愛者として生まれてきたので、同性愛者の気持ちや少数派故の苦悩は理解してあげられない。
LGBTQ+の概念が広く周知された現代に生まれていれば、少しはその苦悩も和らいだのだろうか。
偏見のない社会が築かれるまでには、まだもう少し時間がかかりそうだが。

余談
MVのオシャレ度が群を抜いていて好き
タバコを吹かした後の狂気を孕んだ笑みも素晴らしいし、『愛してほしかった 猫みたいに』のシーンはもはや芸術
本心を隠したキャラの仮面が剥がれる瞬間、何度味わっても素晴らしいですね


囚人No.8 アマネ

第一審:有罪 第二審:わずかに無罪優勢(未確定・現在投票期間中)
短評:教育があまりにも歪んでいる。 どうにかして救ってやりたいが、ただ"赦す"事が正しい救いになるのか?

年齢に見合わないほど理路整然とした語り口をしている、非常に聡明な優等生。
…その実態は、怪しげな宗教を信奉している親の手によって、価値観を大きく歪められてしまっている小学6年生。

いわく、その宗教によると、痛みや苦悩は神から与えられた試練であり、自力で乗り越えてこそだという。
第二審MVの冒頭では、四つの教義について触れられる。そのうちの二つは、内容も含めてある程度の推察が可能となっている。

"人は運命を生きよ"
アマネが猫を治療している=上記の教えを無視している所を発見した少女が持っている風船は赤色
スタンガンによる電撃の罰を受けたと思われる。
第一審MVに登場した、赤いマスコットキャラクターの"リヨネ"も、電撃のような罰をアマネに与えている。

"人は卑きを捨てよ"
粛清マーチ中の一番、アマネが取り落とした旗のシンボルは青色
こちらは詳細不明だが、アマネが何かしらの"卑き"行為をしたと判断されたのだろうか、シャワーによる水責めの罰を受けている。
こちらも第一審MVに登場した、青いマスコットキャラクターの"ゴサケ"は、水責めのような罰をアマネに与えている。

他二つの教義の詳細については明らかになっていないが、いずれにせよ、破ると重い罰が与えられるもののようだ。

アマネは、一番目の教義に反してまで"怪我を負った猫への治療"を行った。その場面を同じ宗教の信者に見られてしまった故に、アマネは帰宅直後の家の中でスタンガンによる罰を受け、治療した猫の姿はその後忽然と消えてしまっていた。
アマネが治療のために結んだはずのハンカチと、無理矢理に引きちぎられた首輪だけがその場に遺されている事を考えれば、猫がどんな目に遭ったかは想像に難くないだろう。

それを受けて、ついにアマネはふっきれたように、仄暗い笑みを浮かべる。
狂気じみた目と晴れやかな表情のまま、殺人を犯した…そういう事になるのだろう。
殺害現場がアマネの自宅であることから、被害者は肉親ないしは血縁者だと思われる。

アマネは、自らが殺人を犯した事は認めつつも、"間違った事をしたとは思っていない"と述べている。
親や親戚、兄弟姉妹の誰かしらが教義に反する行いをしたので、それに対する罰を下したにすぎない、という事なのだろう。

では、それは教義に則った行いでしかなかったのか?
私怨は一切無かったのだろうか?
それについては、第二審MVの歌詞が明確な否定を表している。

もういらないよ 誓いを破るなら
今、制裁を 私が引き裂く番だ
二度目が起こらないように もらった分を返してあげましょう

泣いて悔やんで跪いたら 「ごめんなさい」言ってみろよ
謝ったって、ベーだ! もう死んじゃってどうぞ
泣いて悔やんであなたに言った「ごめんなさい」 覚えてますか?

MILGRAM -ミルグラム- / アマネ「粛清マーチ」第二審MV 概要欄より引用

これほどの恨みを込めておいて、教義に則った行為をしただけだ、というのは流石に無理があるだろう。

子どもだからと自我を軽視するな、とアマネ本人は言うが、"そういう生き方"を自ら選んだ囚人No.2 ユノとは事情が違う。思想の自由が元から与えられていないし、根本から大きく歪められてしまっている。どうにか救ってやりたいと思う。

しかし、救ってやるにも、ただ赦してやればいいという物でもない。彼女の狂った思想が肯定されたとも捉えられかねない。
非常に難しい問題だが、第二審の結果は既に無罪で確定してしまった。
この結果を受けたアマネがどのような反応をするのかはまだわからないが、おそらく自分の思想・ひいては教義が肯定されたと思い、満足するはずだ。

第三審では、その歪みを取り払いつつ、彼女自身の事を救ってやりたいと思う。
その趨勢は、看守エスの手腕と、私たちの選択に託されている。


囚人No.9 ミコト

※以下、灰色背景の部分第二審MV"ダブル"公開前に執筆した内容になります。
記事の制作中に第二審MVが公開されたため、あくまでも推察だった時点での記事である、という事を念頭に置いた上で読んでくださると幸いです。

第一審:有罪(圧倒的)
短評:すごい、こいつが赦される未来が見えない

こいつだけグラセフ世界の人間だろ
バットのような者で男性を撲殺し、その遺体を自宅の風呂場でバラバラにした上で、適当なゴミ捨て場に死体を遺棄したかのような描写がされている。 
言い逃れしようがないですね、スリーアウトでこいつは完全に有罪です 本当にありがとうございました(閉廷)

冗談はともかく、ミコトについて議論すべきは"なにが原因で二重人格になったのか"という点だと思う。
そう、上記の残酷極まりない一連の犯行は、ミルグラムに収監されている"主人格のミコト"の手によるものではない。
ミルグラムに収監できていない、攻撃的な"別人格のミコト"のものだ。

解離性同一障害は、非常に強いストレスから心身を守るための防衛本能として引き起こされる症状だと言われている。

第一審MVでは描写がほとんどないため、ここから先は完全に妄想だが、もしも理由をつけるとするのなら
"苦労して憧れの会社の一員になったはいいものの、壮絶なパワハラやそれに類する人間関係のこじれを受け、その防衛機制としてミコトの精神が分裂。主人格の心を守るため、ストレスの原因となっている人間を別人格が処理するために犯行に及んだ"
…など、いくらでも考えることはできる。
いささか理由が弱すぎるような気がするので、これはあくまで考えられる可能性…というか、もはや妄想の域だが…。

傍目から見ると軽薄でへらへらしている人間ほど、心の内でドス黒い感情を育んでいるというような事は特段珍しい話でもないだろう。
そう考えると、『"僕"を守るためなら、"俺"はなんでもするぜ。』という発言の意味が通る。
…殺人はどうあっても肯定されるべきではないし、犯行の残虐性については言うまでもないが。

凶行に至るまでの経緯がなんとなくでも判明するまでは、一辺倒に有罪と考えるのはもしかすると浅慮かもしれない。
この次に解禁される第二審のMVが待ち遠しい。


※ここから先は第二審MV"ダブル"公開後に執筆した内容です。

第二審:無罪が圧倒的に優勢(未確定・現在投票期間中)

結構当たってたじゃん!!ねえ!!!
マジで第二審MV公開前の時点でこういう考察してたんです!!!!信じてください!!!!!(必死)

なお、別人格こと"ジョン"が殺したのはそこら辺歩いてた奴、つまりただの八つ当たりであり、パワハラの原因となっていた上司への報復などの正当性がある殺人では一切なかったらしい。

赦せるかクソボケェ!!!!!!!!!!有罪!!閉廷ッ!!!

…冗談はともかく、この囚人についての主題は
"別の人格が行った犯罪を償うべきなのは主人格なのか?"
という点だろう。

理由のない殺人を犯した"ジョン"にはミルグラムの拘束力が働いていない…つまり囚人ではないという事を明確に示しており、
ミルグラムに収監されているのは、あくまで主人格の"ミコト"である。
つまり、ジョンが犯した殺人に正当性が一切無い、という点は重要ではないという事を念頭に置くべきだろう。

だが、"ジョン"は
『多分、俺は僕にとっての理想の自分だ。』
と述べている。
殺人が主人格のミコトにとってもストレス解消になっているのであれば、完全にアウトだと思う。

誰にだって、理不尽な事に対しての破壊衝動を抱える事はあるだろう。
だが、誰もがそれを理性で抑え込み、社会のルールの中で上手く解消しつつ生きている。
そうして成り立っているのが秩序をもった社会というものだ。それを乱す犯罪者には罰を与え、排斥していかなければ、誰かが理不尽に命を奪われてしまう世界になってしまう。

ミコトを例外として赦してしまえば、その判断基準に際限がなくなってしまう。
即座に有罪として処断はせずとも、責任能力の有無をしっかりと調査する・カウンセリングを受けさせる等、適切な対処をする必要があるだろう。
先も述べた通り、ミルグラムの有罪・無罪の基準…つまり、『そのまま生きてもいいのか』という点では、はっきりとNOを突きつけるしかない。
ここまで長々と綴ったが、結論は変わらず有罪とさせていただく。

第三審でよほどの事が無ければ、筆者のこの判断が覆るような事はまず無さそうだが…
他のユーザー達の投票によれば、現時点での第二審の判決は、無罪が70%超えと圧倒的だ。

正当な意見を持って投じられた票なのか、単にミコトというキャラクターへの愛着によるものなのか…。
どちらにせよ、趣味嗜好を基準にしてもよいミルグラムにおいて、その思想を否定する気は一切ない。ただ静かに、行く末を見届けるまでだ。


囚人No.10 コトコ

第一審:無罪
短評:法で裁けぬ悪人を裁く、正義の執行者。 しかしその"正義"は、果たして本当に正しい物か?

現行の法律を不完全なものと言い、のさばる悪人を独自に調べ上げ、自らの手で"粛清"する20歳の女傑。

戦闘力が高く、その実力は成人男性を相手取っても一方的に勝利できるほど。 第一審MVでも、鉄パイプを持った男性に対して武器を持たずに挑んだ上で、一方的に殺害しているような描写がある。
囚人No.9 ミコトの別人格の"ジョン"が看守エスを襲撃した時には、それに応戦して『典型的な素人の動き』という感想をこぼしていた事からも、格闘技の心得があると推察できるだろう。

おそらく職業は刑事であり、初対面からエスにサブミッション(極技)をかけようとした事から、同じく格闘技経験があるとみられる屈強な成人男性である囚人No.7 カズイとも渡り合ったようだ。
本気の殺意をもって襲いかかる攻撃側と、あくまで拘束を目的とする守備側では、前者が圧倒的に有利ではあるが…。

正当防衛を強固にアピールするためには、武器などを用いない格闘のみで勝利できるほどの実力が必要だったのかもしれない。
悪人についての情報を買うために金銭を支払っている描写もあり、とにかく"裁く"ための努力は厭わないようだ。
それほどの執念をなぜ抱いているのか、過去になにか契機となる出来事があったのか…それについての明確な描写は未だに無い。

さらに、コトコは第一審で有罪となった囚人に対して制裁を与えている。
ミコトに関しては別人格の"ジョン"が撃退したようだが、フータは片目の視力を失うほどの怪我を負い、マヒルに至っては、シドウの治療がなければまず確実に"死んでいた"らしい。

しかし、個人的にこの行動には違和感がある。
彼女は、法で裁けない悪を自らの基準で裁くような芯の強さがある。
それなのに、彼女自らの判断を差し置いて、我々が判断した有罪・無罪の判断に従順になっているのはなぜなのだろうか?
たまたま彼女の価値観と我々の判断が完全に合致した、などという偶然がありえるのだろうか?

それらを鑑みると、彼女の本質は、"弱者の守護"にはないように思える。
フータ、マヒル、ミコトを私刑で裁こうが、今更誰が救われると言うのか? 特に、フータ・マヒルの両名は、明確な殺意を抱いて罪を犯したとは考えづらいのにも関わらず、だ。

彼女は、自身の攻撃性にそれらしい理由づけをしたいだけなのではないか?
MVに度々映り込む"狼"は、コトコが心の内に秘めた攻撃性の暗喩なのではないか?

そう考えると、第一審MVのクライマックスの描写も、
膝に手を当てて屈む(指にはなにも嵌めていない)
→攻撃性の象徴である狼と共に怪しい笑みを浮かべる
→それまでしていなかったはずのメリケンサック?のようなものを装着している
という風にも見えてくる。

流石にこれは深読みしすぎかもしれないが、ピアスを始め、普段から派手なアクセサリーを装着している理由も
暴漢制圧時に指輪などの装飾品を嵌めていても、違和感の出ないような"カモフラージュ"…なのかもしれない。
そうして思い返すと、フータの右目に失明も同然の大怪我を負わせた"安全靴のような"ものをわざわざ履いていたのも、この説の根拠のひとつになるかもしれない。

現在一部のみ公開されている、コトコの第二審楽曲である"ディープカバー"には、
『裁きを下す大義名分が欲しい』 
という歌詞がある。

本当は私刑を下す事への躊躇いがあるのか、それとも自らの行いは間違っていないと肯定する根拠が欲しいのか、はたまたその両方か。
いずれにせよ、コトコ自身に確固たる信念があるのなら、そんな物は必要ないはずだ。
深層心理を偽りなく映し出す楽曲によって、彼女の迷いが表出したようにも感じられる。

『正しさに溺れてたい』彼女に、今後も新鮮な水を与え続けていいものか。
そうしてぶくぶく太った"正義"によって、無辜の人間が食い散らかされる事はないなどと、本当に言えるのだろうか。

第二審閉幕の時は、刻一刻と迫っている。


最後に

ここまでの駄文・雑解釈に目を通してくださりありがとうございます。

どの囚人も魅力的なキャラ立ちをしていて、思わず肩入れしてしまいたくなるような造りなのがとても面白いですね。
正しくないとは知っていながらも、『このキャラクターが好きだから無罪にしてくれ!』というようなコメントを国内外問わず見られるのが、このミルグラムの醍醐味だと思います。

僕は特定のキャラクターを贔屓した判断はしないように心がけていて、"本人に明確な殺意があったのか"や"その行為に正当性があるのか"を重視したつもりです。
…が、フータやシドウの項目を読み返してたら全然そんな事ないですね…これがミルグラムの魔力…。

さて、まもなくミルグラムの第二審は閉幕します。

ボイスドラマでユノが零した『私ってさ…本当に、生きてる?』という言葉、乖離していく"看守エス"と"僕たち"。
記憶に鍵をかけるかのように看守エスを襲う頭痛、そしてさびついた"11番目"の監獄の扉⎯⎯⎯
張り巡らされた謎の答えは、どのように明かされていくのでしょうか?

どんな基準で有罪・無罪を決めてもいいミルグラム。
しかし、その選択の責任まで投げ捨てるつもりはありません。

この先にどんな結末が待っているのか…楽しみに待とうと思います。

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