消しゴムはんこの洗礼
あれからもう5年。
かつて私にも、消しゴムはんこに憧れた時期があった。
消しゴムという、誰しも近しいその存在。
彫ること自体は、子どもの頃になんとはなしにやってみたことがある。カッターで刻んでみたそれは、はんこへの憧れというよりも、ただ☆のマークを描いてみたかった、という全く意味のないものだった。
時は過ぎ大人になり、ある日。
高円寺のTシャツ屋さんが消しゴムはんこのワークショップをやるというのを聞きつけた。
実はあまり高円寺に馴染みのなかった私。
「高円寺のTシャツ屋さん」というフレーズにも惹かれ、消しゴムはんこ作りを申し込んだ。
消しゴムはんこ作家の方とショップのオーナーさんが迎えてくれて、私を入れて計4人が参加したワークショップ。
座って説明を聞くうちに、何を彫るかなんにも考えずに来てしまったことに気がつく。
他の方たちは何やら下書きなどを取り出している。
取り出すものなどなにもない私は、好きな野菜を彫ることを思いついた。
そう、
アスパラだ。
難航するかと思いきや、不思議と迷いのない運びで下絵が出来上がった。
そして消しゴム板に下絵を写し、先生の言う通り少しずつ彫ってみる。彫刻刀は扱いが苦手だという思い出しかなかったが、消しゴムは柔らかいので思っていた以上に彫り進められる。
するとどうだろう、意外とアスパラになったのだ。好きってすごい。
てけとーなアスパラ
そしてTシャツ屋さんのお兄さんが、取っ手のつけ方を教えてくれた。
取っ手がついた。
木屑がすごい。本気っぽさがある。
渾身のアスパラはんこを押すと、
アスパラ!
最高。
そして私の消しゴムはんこを作りたい欲求は収まった。
かくして、消しゴムはんこづくりの洗礼(欲求&作成)を受け、この後一度も作っていない。
私がやるべきことではない、これに関してはもっと他に上手な方がいる。そう不思議なほどあっさり諦めた、消しゴムはんこ作りであった。
おわり。