ワクチン承認後のワクチン関連銘柄ってあるの?
注意!
以下の記事は11/9ファイザーのワクチン中間報告が出る前にリリースしたものです。その後、様々な動きが発生してる、これからすると思われるので、情報が古い部分もあるかもしれません。最新情報はぜひ各自でご確認ください
もうすぐワクチンの審判の日が訪れます。もしBiontech (BNTX)とPfizer(PFE)のワクチンがFDAに承認されたとすると、ワクチン関連株は次のステージに移行します。
ワクチンが開発された後、どのようなワクチン関連株が存在するのでしょうか。関連しそうな分野をいくつか調べてみました。以下のノート内容はあくまで一人ブレストなので、全然的外れかもしれません。読み物としてお読みください。あくまで考え方のフレームワークと個人的な思考のアウトプットとなります。これをきっかけに識者の方といろいろ情報交換できると嬉しいです。
なお、個別企業の事業内容の中身は全く調べてませんので、ご注意を。例えばワクチン製造資材メーカーであるTMOは、同時に検査キットを開発していたりします。この場合、製造資材売上はプラスでも検査キット売上はマイナスに働き、株価は大きく下落していました。
実際に投資をする上では、変動要因における売上の増減が事業全体に与える割合の分析が重要ですね!
考え方としては、ワクチンの投与までのサイクルを以下のように分類し関連株がないか考えてみました。
なお、本記事は以下の記事の続き的な要素もあるので、もし興味がございましたら、以下の記事もご参照いただけますと幸いです。
本文中に企業名が多く出てきますが、上場されており株を買える会社については、見やすいように太字で記載しています。
製造
こちらははっさくさんのノートからの引用です。ワクチンの製造のために必要な資材として、バイオリアクターという資材があるそうです。その資材のひっ迫が予想されるとのことで、その資材を提供する企業はポストワクチン関連企業になりそうです。詳細は以下をご参照ください。
*注意:バイオリアクターに関してはプラスに作用するかもしれませんが、この会社の場合検査事業でマイナス売上が見込まれるので、結果として株価は下がりました。
TMO個別企業に関しての売上インパクト分析はSUさんの分析が詳しいですので参照ください。
物流サービス
前回のノートにて、運輸業界の個別企業の動きをいくつかピックアップしました。しかしそもそもワクチンが必要とするコールドチェーン物流が巨大物流企業の売上に占める割合など、理解することができませんでした。ワクチン物流がニュースにはなっても、巨大物流企業の中で売上に占める割合が少なければ、ビジネスへの貢献は誤差、つまり株価への影響も誤差となります。以下の調査レポートでは次のように述べられています。
1)Global logistics industry range from $8 trillion to $12 trillion (2019)
https://www.freightwaves.com/news/how-big-is-the-logistics-industry
2)The global cold chain logistics market size was valued at $159.988 Billion in 2018, CAGR of 17.9% from 2019 to 2026 => 計算すると$221B (2020)
https://reports.valuates.com/market-reports/ALLI-Auto-2R91/cold-chain-logistics
この二つの数字から計算するとコールドチェーンの市場規模は物流市場全体の2.2%であり、かつコールドチェーン市場の多くは冷凍食品等のための物流であることを考えると、Fedex (FDX), DHL (DPSTF), UPS (UPS)など大手物流企業の業績に与える影響はそれほど大きくないと考えられます。
コールドチェーン事業が支配的な企業は、需要の増大が業績に与える影響が大きいので、そのような企業があればそちらを探したほうがよさそうです。そのような企業の1社はCRYPORT(CYRX)であるが、彼らのHigh Endのサービスが今回の大規模なワクチン輸送に利用されるかどうかはよくわかりません。理由は前回記事で説明したファイザーの新輸送パッケージが開発されているためです。
なお物流関係個別企業の動向については、前回の記事も合わせてご参照ください。
ワクチンとは別枠の話になりますが、物流業界では家でご飯を食べる機会が増えているため、冷凍食品の需要が増大しており、そのためにコールドチェーン物流が活性化しているという話も聞きます。物流業界は、EC需要の増大を受けてどこの会社も堅調なビジネスをしていますし、そのベースに付加価値サービスのコールドチェーンサービスを載せてくることができるので、この業界への投資は一考に値すると思われます。
ちなみに、2020年1月にリリースされた調査レポートでコールドチェーン物流でプレゼンスを示すMajor Playerのリストが提示されていたので、参考になるかもしれません。
医療用冷凍庫
医療用冷蔵・冷凍庫市場も活性化しそうです。医療用冷蔵・冷凍庫市場の概況は以下です。
・ USD 3.3 Billion in 2019 to USD 4.2 Billion by 2024
・CAGR 5.3%
この数字はコロナ前の数字なので、コロナで市場環境は激変と思います。
前回のノートに詳細は記載していますが、今回のワクチン物流に関してファイザーは通常の商流である卸を通さない方式をとる旨、宣言をしています。ワクチンが生ものなので少しでも最終消費に至るまでの時間を短縮するためです。そのため、購入可能性のある企業は、卸業者は抜かして、輸送業者、ワクチン投与の現場となります。
ファイザーのケースでは独自の新しいパッケージを開発し10日間は保管できるという形にしています。この10日間という期間が流通から最終消費に至るすべての時間をカバーできるかはわかりません。10日間の期間の中で、物流や受け取るワクチン投与サービス業者の運用をジャストインタイムで一度もふたを開けずにマネージできれば、理論上中間保管地、最終消費地の冷凍庫は必要ないと言えます。
しかし以下のような観点で、10日間のジャストインタイムでオペレーションが成立しない可能性もあると考えられます。
1)貴重なワクチンを賞味期限切れで捨てる、というのは社会的にも許されない
2)パッケージを開けたらそこからの冷却能力は低下するのでパッケージを開けたら短期で使い切る必要
3)こなれたサービスにおける需要予測でも難しいのに、初めて行われるこのような大規模オペレーションで正確に需要と投与サービスの実行数を予測することは難しい
そのため大手物流企業は既に物流センターへの冷凍庫投資を加速しています。この売上は今Quarter以降に見えてくると思われます。もともと-80度対応の医療用の冷凍庫市場は規模が小さいと考えられるため、ワクチン特需が超低温冷凍庫市場規模に与える影響はある程度大きいと考えられるかもしれません。(*一般の医療用コールドチェーンは2-8度の低温輸送が支配的規模)
主なプレイヤーとしては以下が挙げられています。このうちどの企業が-80度対応の商品を現時点で持っているかわかりませんが、製品ラインナップになくても専業メーカーであれば開発してくる気がします。このセグメントは中小企業も多く、株式を購入できる企業は限られてきます。それらの企業の売上全体に占める、ワクチン関連で追加売上がどのくらいになるか(つまり株価への影響)は、個別に見ていく必要があります。例えばパナソニックなどは全体の規模が大きいため、仮に冷凍庫がたくさん売れたとしても株価に対しての影響は少ないと思われます。
レポートに掲載されている市場プレイヤー企業リスト
このうち株の購入が可能な企業は以下となります。
1)Thermo Fisher Scientific Inc.(TMO)
2)Qingdao Haier Biomedical Co Ltd (SHA: 688139)
3)PHC Holdings Corporation =>パナソニックですね
4)Blue Star Ltd (NSE: BLUESTARCO)
5)Standex(SXI)
6)Aucma(SHA: 600336)
ワクチン容器
ワクチンの開発が実現すると、これまでに類を見ない数量のワクチンが各国で投与されます。当然ワクチンを収納する容器が必要になります。
既に米国政府から以下の2社はワクチン容器を受注しています。医療用ガラスの70-80%は米国外で製造されています。戦略的な物資確保の視点から、米国政府は、SiO2という米国企業にフォーカスが当たったようです。
1) Corning(GLW):$204M
2)SiO2:$143M
-7/2プレス発表
-4億ドース(2億人分)のキャパは確保済み
-2020年終わりまでに12億ドース(6億人分)のキャパを確保予定
$204Mは Corningの全体売り上げ($11.5B)の約2%です。
残念ながらSiO2は上場しておらず株の購入はできません。
欧州では以下の3つのメーカーが、6/16に共同でしっかり容器のサプライをしていくとプレス発表をしています。
1)Stevanato Group
2)Gerresheimer(GXI.DE)
3)Schott
Stevanato社は今後2年間で10億~20億個の容器の需要増加を見込んでいます。同社はCoalition for Epidemic Preparedness Innovations (CEPI)から1億個の容器を受注しています。各容器は20ドースのワクチンを格納することができ、これは20億回分の注射に相当するとのことです。
注射針
ワクチンを投与する場面では、注射針が必要となります。
Becton Dickinson and Co(BDX)は工場の生産設備増強のため、米国政府から$42Mの契約を獲得しました。また5000万本の注射針の受注もしています。
また米国政府はRetractable Technologies(RVP)社とも生産設備の増強のための$53Mの契約を行い、ApiJect Systems社とも1億本の注射針を生産可能な設備拡張のために$138Mの契約を行っています。
Healthcare Staffing Service
ワクチンを投与する段階では、当然医療従事者が必要となります。現段階でワクチンがどのような形で投与されるのかについて、米国政府、およびMcKessonから発表はない状態です。ただ、仮にBiontech / Pfizerのワクチンを投与するということになると、保管を含めて薬局等で投与(米国ではインフルエンザワクチンなどはその辺の薬局で打つのが一般的)するのは設備にかけて難しい可能性もあるため、その場合病院での投与となる可能性が指摘されています(もちろん今後、投与サービスをスムーズに行うために、薬局等でも投与できるような対策が打たれる可能性も高いと思います)。いずれによせワクチン投与に関しては人手が必要となるため、スタッフを一時的に雇い入れる必要が出てくると想定されます。
大手の医療スタッフィングサービス企業は以下となります。
1)AMN Healthcare (AMN): $2.00 billion, 12% market share
2)CHG Healthcare Services: $1.66 billion, 10% market share
3)Jackson Healthcare: $1.00 billion, 6% market share
4)Cross Country Healthcare(CCRN): $807 million, 5% market share
5)Medical Solutions: $506 million, 3% market share
ドライアイス製造機・ドライアイスメーカー
一時的な冷凍温度維持のため、ドライアイス需要の増大が予測されます。そのためドライアイスメーカー、そしてそれを支えるドライアイス製造機メーカーの業績が向上することが予想されます。
これらについて調べてみたのですが、業績への影響が一定程度あって、株を購入できるような企業はあまりありません。前回のノートに企業リストを挙げているので興味のある方はそちらをご参照ください。
雑感
米国においては、政府が既にワクチン開発が成功しようがしまいが備蓄用のワクチン購入に踏み切っているように、ワクチンが開発されることを見越してワクチンの物流、投与プロセスにおけるボトルネックになりそうなところに既に政府が手を打っている状況です。株価にも既にそれは織り込まれています。ただこの織り込まれ具合は、初期の分だけ織り込まれているのか、今後のワクチンの投与が完了しきる部分までが織り込まれているのかはわかりません。ワクチンができるかどうかもわからないのに、ワクチン投与完了までの期待を織り込むわけにはいかないという考えが成立するなら、ワクチンが承認された時点で、まだ株価が上がる余地はあるのかもしれません。
またこれらのワクチン関連銘柄の株価の上下については、業績云々もありますが、投資家のセンチメントによる部分もあるのではないかと思います。
いずれにせよ、ワクチンができなかったら何も始まらないどころか、ワクチンに連れ安する可能性が高い銘柄なので、FDAによる承認が出た時点で検討していく銘柄でしょうか。(短期は別)
以上です。
最後に、少しでもお役に立てましたら、イイねボタンをクリックしていただけると次の記事も頑張って書けそうです。よろしくお願いします。
関連情報
なお、関連する記事として、以前書いた以下のノートもありますので、関心のある方はご参照ください。
参照
ワシントンポストの記事
https://www.washingtonpost.com/business/2020/07/13/coronavirus-vaccine-corning-glass/
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