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ワタクシ流☆絵解き館その3 青木繁「わだつみのいろこの宮」この絵に日本神話と西洋神話をダブルイメージさせていた!

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古代神話の、山幸彦と豊玉姫の出会い(やがて結ばれる)を題材に描いている青木繁の「わだつみのいろこの宮」であるが、神話と聞くと、違和感が残る。それは、全体的にはゆったりとしていて、腕には領巾(ひれ)を垂らし、腰の部分は紐状のもので縛っている日本古代の装いと、絵の中の豊玉姫(左の女性)の服装はまるで違っているからだ。体のラインに沿う衣装でしかもシースルー、半裸といってもいいほどである。西洋の神話に登場する人物の衣装を連想させる。
西洋の文化に造詣の深かった青木繁は、日本古代神話の題材で描きながら、あえて従来の神話画の雰囲気から抜け出して、西洋の神話をダブルイメージさせている、というのが今回の推理。
その神話とは「ダフニスとクロエ」の物語。「ダフニスとクロエ」もまた、一組の若い男女の出会いと恋の神話である。男がダフニス、女がクロエだ。「わだつみのいろこの宮」が沈潜した雰囲気ではなく、清新な雰囲気を漂わせるのも、そこに一因があるのではないだろうか。

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上二点の絵はどちらもよく引用される絵だ。ジェラールの絵はルーブル美術館にあり、複製で青木繁も見ていただろうと推測できる。
ダフニス(男の方)はどちらの絵も裸体で腰かけている。そしてジェラールの絵ではダフニスは冠を手に持つ。「わだつみのいろこの宮」の山幸彦のポーズに通い合っているように見えないだろうか。他の多くの「ダフニスとクロエ」の絵でもクロエは、うすぎぬの衣装か、もしくは半裸である。「わだつみのいろこの宮」の豊玉姫のように。

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上の図版は誰もが知るアングルの「泉」。当然、青木も見ていたはずだ。この女性は詩の女神たち、ミューズに仕え、水源や泉を象徴している。(Wikipedia参照)
「わだつみのいろこの宮」の豊玉姫も海底の井戸のそばに立っている。青木のイメージの中には、この絵があったかもしれない。すっと立った姿、足の置き方、甕を持つ手に共通点がある。

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「わだつみのいろこの宮」が古代神話の、山幸彦と豊玉姫の出会いを題材に描いているのはタイトルからも間違いはない。けれど、青木には親しんだ西洋の絵画が脳裏に浮かんでいて、それを取り込みながら、山幸彦と豊玉姫のポーズを創ったように私には見えてくる。 

(※他人の意見の盗用にならないよう、できるだけ「わだつみのいろこの宮」に触れた文書等には目を通しました)

                

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