80年代生まれが独自解釈で薦める日本のフォーク
編注:これ書いたの5月5日あたりなので、若干時空のひずみがございます。
年号も変わったっていうのに何で唐突にこんな記事を書き始めたかというと、そもそもの発端はこのツイート。
私はアイマスの、デレとシャニでPをやってるんですが、5月15日に発売する森久保乃々(以下もりくぼ)のソロ曲「もりのくにから」を試聴したら異様にフォークっぽくて。
試しに「もりのくにから フォーク」で同志を探してみたところ、そんなにいなかったので、はて?と思い、一方で「もりのくにから さだまさし」で検索すると結構ヒットしたんです。
ちなみにどんな曲かっていうとこんなの。
確かに、フォークの中でもさだまさしっぽさをかなり強めに意識して書いたんだろうなーって思います。じゃなきゃこんなタイトル付けないか。しかし、これほど「もりくぼ」を的確に表現できる高橋花林さんを起用できたのは、本当に奇跡というか、やっぱアイマスすげえなってつくづく思います。
何でもりくぼにフォークを歌わせたのかっていう経緯はさておき、この件で改めて思ったことに、やっぱり世間一般的にフォーク=さだまさしなんだなって。
主にテレビに出てフォークを披露する人が、さだまさし、坂崎幸之助、南こうせつくらいになってきてるし、まあし。
ただまあ、当然それが全てなわけはなくて、フォークファンの身からすると、もっといろんなフォークがあるんだよっていうのを、少しでも知ってもらいたいと思うわけです。
前提
私が何者か書いておくと、こんな感じです。
・80年代生まれ。日本のフォーク全盛期には生まれていない。
・フォークを知った小学生の時はビーイング全盛期。時代への反骨心もあって父のフォークを弾き始め、転げ落ちるようにフォークに傾倒した。
・父が吉田拓郎の大ファンで、その影響をモロに受けている。
・たまにアマチュアでDJをやったりはするけど、仕事で音楽に関わってはいない。あとフォークは滅多に掛けない。
・今はかなり広めに音楽ファンで、フォーク以外も好き。
このような感じの私が、独自解釈に基づいて、日本のフォークソングを皆様にお勧めするのがこの記事の趣旨でございます。長いね前置きが。
そんでまず、日本のフォークは時代別にかなり大雑把に大別すると、以下の3つに分けられると考えられます。ここからはこの世代別にご紹介します。
第1世代:メッセージ性、反戦、学生運動
第2世代:日常、恋愛、四畳半
第3世代:青春、爽やか、路上演奏
第1世代:メッセージ性、反戦、学生運動
父(50年代生まれ)の生まれ育った地方では「フォークギターを弾くやつは不良だ」と言われていたそうですが、それの主たる原因がこの世代ではないでしょうか。
おおよそ60年代後半から70年代前半まで続いた第1世代は、主に学生運動を背景としており、社会に対しての反発、特に反戦について歌ったメッセージ性の強い楽曲が多い印象です。もちろん、そうでない曲もありますが。
代表的な曲を挙げると、ジローズの「戦争を知らない子供たち」、ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」、はしだのりひことシューベルツ「風」などでしょうか。もっと挙げられるけどきりがないんすよ。
ここらへんは全然詳しくないので、さくっと次に行きます。
第2世代:日常、恋愛、四畳半
普通、こういう世代というのはある程度隙間を空けて発生するもんだと思うんですが、第1世代と第2世代は地続きです。その転換期こそが1972年(昭和47年)。この年、あさま山荘事件を契機に学生運動が沈着し、また学生運動とともにあったフォークソングも新たな局面を迎えます。
同年放送開始したマジンガーZや、前年放送開始の仮面ライダーもまたアニメ・特撮の大きな転換期にあたるのですが、今回そっちは割愛して。
この年にスマッシュヒットとなるのが前年にデビューした吉田拓郎の「結婚しようよ」。
彼が和製ボブ・ディランと呼ばれた所以でもある、独特の詰め込んだ譜割りはそれまでの歌謡曲の概念を壊し、また武骨で自己主張の激しかったそれまでのフォークと打って変わって「僕の髪が君と同じくらい伸びたら結婚しよう」と、カジュアルに・色鮮やかな世界観を歌い上げた楽曲で、多くのファン(特に女性)を生みました。
当然、先述した第1世代からは大きな反発・批判を受けたそうですが。
そしてそれに触発された、俗に「四畳半フォーク」と呼ばれる新時代のフォークブームにより、サブカルチャーだったフォークソングがチャートに多く顔を出す時代を迎えます。
それまでもラブソングとしてのフォークがないわけではないのですが、どこかしら牧歌的・幻想的なものが多かったように見受けられ、そこにきて街の、特に東京で暮らす貧乏な生活にフォーカスした歌詞は、当時のヤングに刺さったのでしょう。
この頃他に台頭したのが、井上陽水、かぐや姫、泉谷しげる、アリス、そして冒頭に挙げたグレープのさだまさし。少し遅れて長渕剛、中島みゆき、THE ALFEEが続きます。海援隊はもう少し後だったかな。
この辺が世間一般で言うフォークソングで、私もこの辺が好きです。
もちろん、これらのフォークシンガーはそれぞれ個性を持っており、フォークソングも一枚岩ではありません。メタルのように細分化できないか考えてみましたが、どうにも難しいので、お勧めを挙げてみます。ググるなり何なりして聴いてみてください。
吉田拓郎:
代表曲…結婚しようよ、イメージの詩、たどり着いたらいつも雨降り、人生を語らず、今日までそして明日から、人間なんて、落葉
代表曲である「結婚しようよ」にナヨっとしたイメージがある反面、彼の曲の多くには男らしさ、しばしばギブソンのギターに例えられる線の太さが見られます。
私は彼に関して相当強いバイアスが掛かってるんでアレなんですが、とにかく芸の幅が広いっていう印象があります。1985年にはもうシンセサイザーを取り入れたりとか。TM Networkのデビューの翌年ですよ。
かぐや姫:
代表曲…神田川、赤ちょうちん、僕の胸でおやすみ、僕は何をやってもだめな男です、22才の別れ
どちらかというと女性に勧めたいのが、かぐや姫。東京下町の小さな下宿に恋人と二人、その日暮らしの生活と日常…という世界観が強い、まさに「四畳半フォーク」の代名詞。コミカルな歌も多く、フォーク入門と言っても良いのではないでしょうか。
余談ですが、私が父のフォークギターを借りて最初に練習した曲は「神田川」です。折しも1993年。世の中は愛のままにわがままに僕は君だけを傷つけなかったり、何でもないような事が幸せだったと思ったり、まるで別人のプロポーションに恋をしたOh君に夢中だったりする頃です。
グレープ(さだまさし):
代表曲…関白宣言、檸檬、精霊流し、雨やどり、親父の一番長い日
私がよく聴いていた吉田拓郎とは対極の位置にいる、線が細くて品が良く、曲ひとつひとつの物語が壮大であるのが特徴でしょうか。それゆえに後世にも歌い継がれた曲が多く、一方で「フォーク=暗い」というイメージの一翼を担っていると言えばその通りですが、「雨やどり」のようにちょっとした歌詞の遊びもあったりします。
第3世代:青春、爽やか、路上演奏
やがて訪れるニューミュージックにムーブメントを引き渡し、フォークシンガー達はそれぞれに活動しつつ大御所の域に達していきます。
そして時は20年ほど過ぎて90年代後半。川本真琴やスピッツといった前兆を知らせる音楽はあれど、明確にフォークとして新しい柑橘の香る風を吹かせたのが、皆様ご存知、先述のデレマスにも楽曲提供をした、ゆず。
まさかここでフォークとアイマスがつながるなんてね!
彼らがメジャーデビューした1998年と言えば、小室ファミリーとビジュアル系のブーム真っ只中。アーティストにもよりますが、難解なコード進行、独特の世界観が受け入れられ、まさに2000年代から爆発していく音楽の多様化の胎動が聞こえた気がした時期でした。
ヒット曲にはマイナーチューンが多く見られ、90年代初頭までいたアイドルらしいアイドルも姿を見せず、男も女もクールにスカしてキメるのが美徳の時代でした。もっとも、アイドル業界もこの1998年にモーニング娘。がデビューし、アイドルブームを再燃させていくんですが、そちらは別の話。
そんな中にあって、ゆずが奏でた楽曲は、第1世代のようなメッセージ性、第2世代に見られた生活性もなく、「爽やかな青春を謳歌する」という情景の模写でした。あえて関連付けるなら、第2世代の「太陽がくれた季節」をアク抜きしてゆず胡椒で味付けしたような感じでしょうか。ゆずだけに。ゆずだけに!
ゆずの他にも19やサスケ、コブクロなどが続き、あんまり定着しませんでしたが、当時坂崎幸之助さんは「ネオフォーク」という通称を付けました。
彼らの共通点としては駅のロータリーやデッキなど、路上で弾き語りをしていたこと。
当時は未だ続く平成不況の真っ只中。少し前まであったバブル経済はなりを潜め、超氷河期と呼ばれた狭き門をやっと潜り抜けたと思ったら、待っていたのはストレスフルな社会。そんな社会で遅くまでサービス残業で絞られ、セクハラや痴漢をかわしてやっと最寄り駅についたとき、待っていたのがそんな、爽やかな青春を謳歌するような路上ミュージシャンの曲。
上記は全部妄想ですが、大方そういった感じで受け入れられたんじゃないかなあ、というのが私の推測です。当時はそんな感じで、路上ミュージシャンの曲をOLさんが聞き入ってるのを見た事がありました。
その後V6の番組で「癒し系ミュージシャン」とかが流行ったから、あながち間違いじゃないと思うんだけどね。
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ということで、一口に日本のフォークといっても、世代だけで3世代ほどあり、またミュージシャンによっても色々と異なる世界観があるから面白いんですよと、そんな記事でした。
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