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『かつてを かってに そうぞうする会』活動記録

ポシロ舎は2024年11月6日(水)に東京・高田馬場にある「ときわ座」にて、ワークショップ『かつてを かってに そうぞうする会』を行いました。
そのワークショップの様子をまとめました!

文:稲葉佳那子


■ワークショップ概要■
昭和30年代に建てられた昭和建築の民家があります。今は「ときわ座」という名前で場所貸しを行っていますが、入り口には「ときわ生花」という看板が残っており、かつて生花店だったことをうかがわせる痕跡が残っています。本企画は「ときわ座」がかつてどんな姿だったのかを、自由に想像してみるワークショップです。「場所をじっくり観察し、そこにあった過去の時間を想像してみる」その行為にどんな意味や価値があるのかを、みんなで一緒に考えてみる場を目指します。

【まずはみんなでお茶をいただく】
ときわ座の1階の奥にあるお茶の間で集まります。
まずは参加者の皆様と、ときわ座オーナーの歌川恵子さん、歌川博彦さんもご参加いただき、ちゃぶ台を囲んで車座になります。参加者の皆さんは、これまでにさまざまな催しでときわ座を訪れ、思い入れを持っている方も多いでしょう。しかし、今日は改めてこの場所をじっくり観察し、そこにあった過去の時間を想像してみよう、という趣旨の説明から始めます。

お茶の間にみんなでぎっしり

【たからさがし】
「早速体を動かしましょう!」という濱口の掛け声のもと、ポシロ舎で用意した巻物を探してもらう「たからさがし」からスタートしました。3階まであるときわ座のいろいろなところを探検し、隙間や扉も開けながら巻物を探します。2階と3階はかつて住居として使われており、特に収納が多いのが特徴です。隅々まで探検して、無事に7つの巻物を見つけることができました!巻物の中身は、今日使用するワークシートでした。

最後の巻物を手にする歌川さん

【かくれんぼ】
一旦隅々までチェックした後、次は実際に自分たちが隠れてみようということで、かくれんぼを行いました。
ルールは、1分で隠れて、3分間鬼に見つからなければ成功。参加者の皆さんは、それぞれ思い思いの場所に素早く隠れます。大人が本気でかくれんぼに挑みました。

鬼さん目をつぶる
皆さんも必死に隠れる

鬼さんの猛烈探しを切り抜けて!なんと、3分間で見つからなかった人が2名も。
一人は灯台下暗し。鬼が目を瞑って立っていた1階シャッターのすぐ隣のカーテンに隠れていました。

どこに隠れているでしょう?

もう一人は、2階奥の部屋にある収納棚の上段に隠れていました!鬼さんは一度その場所をチェックしたものの、物陰にうまく隠れていたため見つけられませんでした。そんな場所にも広い収納があったのかと、驚きの声が上がりました。童心に返り、ときわ座を遊びました。

お一人で上がって隠れていた猛者

【かってにそうぞう】
ときわ座で遊んだ後は、いよいよその「かつて」を「かって」に想像します。今のように場所貸しをする前はお花屋さんだったことは、建物前の看板からその面影を感じることができますが、実はそのさらに前の姿もあったようです。ときわ座を隅々まで観察しながら、「もしかしたらこうだったのかも」「こんなことがあったのかもしれない」と、かつての姿を勝手に自由に想像する時間へと進みます。

かつてをかってに

皆さんの見事な「勝手な想像」をいくつかご紹介

「天井のシミが顔に見えて気になってどうも眠れないから、天井のあの部分に布を貼った。」

天井のあの部分

「サイズが合っていない看板デザインを作ってしまい、やべえ…と職人が話し合ったかもしれない」

「もともとここには襖が合って、でもそれを一回外したんだけど、やっぱり必要ってなって、今度はアコーディオンカーテンをつけたのかもしれない」

名推理

「ここの畳だけ凹んでいて踏むとふにゃっとするから、ここで誰かが暴れたのかもしれない」

「壁の色が緑だから、お花屋さんの時に、お花を綺麗に見せるためにその色にしていたのかもしれない」

壁の色に思いを馳せる

「2階の部屋に換気扇があるのはおかしい?!この部屋でもお料理をしたり、提供したりしていたのでは?」

「壁にボタンがある!おじいちゃんが家族を呼ぶのに使っていた?もしくはお店の注文ボタン?」

「この壁にしみはなんでここから始まっているんだ?タンスの中で何かこぼした?もしくは呪い?」

謎のしみ

なかには、みんなでかつてを想像していくうちに、新しい考えにたどり着く場面も。
シャッター横にあった縦長のポストのようなもの。「お花屋さんが営業中に投函する新聞専用のポストかな?でも中から取り出せないし…」と話していると、「看板が刺さっていたのでは?」と言い出す人が。よーくみてみると、そこは電気を通せるようにもなっていて、看板説が濃厚に。

あーでもないこーでもない

【かつてをしる】
まだまだ尽きなさそうな勝手な想像まつり……に一旦区切りをつけます。実際にこのときわ座で住んでいたことのある歌川恵子さんに、思い出のアルバムを見せていただくことに。恵子さんの幼少期のアルバムの中に、ときわ座のかつての姿が鮮明に残っていました。
花屋時代の写真には、お店中にびっしりと並んだお花の写真が。あの花屋の看板説は、これはなんと大当たりでした!看板の写真もしっかり残っていました。
花屋の前はお寿司屋さん。2階の換気扇や、呼び出しボタンもお寿司屋さん時代の名残と思われます。
さらにその前は、なんと雀荘でした!この付近には大手企業が多く、そこで働くサラリーマンたちの憩いの場所として賑わっていたようです。そして、どの時代も屋号には「ときわ」の名前が使われていました。
過去を懐かしむのではなく、過去を発見していく時間でした。「あ!」と言いながら、みんなでアルバムを食い入るように見てしまいました。

【ときわ座と新しいおもいで】
ひとつの場所が、こんなにも多様な姿に変容するように。そして、皆さんがときわ座のいろいろな場所から多様な想像を広げたように。想像ひとつで、かってに、自由に、いろんな未来が広がります。じっくり時間をかけて観察すると、多くの可能性が見えてくるものです。日々の生活でも、こんな視点で物事を見られたらいいなあ。そんなことを目指すポシロ舎です。
そしてこの「ときわ座」は、歌川さんにとって思い出の多い特別な場所。その歌川さんが「この企画をやれてよかった」と仰ってくださったのが、かってに嬉しく感じました。「ときわ座にとっても、そして皆さんにとっても、新しい思い出になったのではないか」とも。

かつてポシロ舎で行った、『物の間違った使い方』のワークショップを家老屋敷の中で行った時のことを思い出した。
「家老屋敷も喜んでいる気がする」と参加者の方が言っていた。

ときわ座が喜んでくれていたら、うれしいなあ。

ときわ座
https://twitter.com/babatokiwaza


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