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『物の間違った使い方』豊岡演劇祭2022@出石家老屋敷 活動記録

ポシロ舎は豊岡演劇祭2022にて、ワークショップ『物の間違った使い方』を行いました。
二日間行い、初日9月15日(木)は豊岡の城下町出石にある「出石家老屋敷」で行ないました。
そのワークショップの様子をまとめました!

文:稲葉佳那子
写真:濱口恒太


1日目 出石家老屋敷

図らずも、豊岡演劇祭のいっちばん最初のプログラム、となった。

我々ポシロ舎メンバーは、前日の夕方に会場である家老屋敷を見学させていただいた。
いつもは17時まで一般公開されている。
歴史ある家老屋敷、当時の道具や、大名の人形などが置かれている。パネルでは、近辺の歴史についての解説も。
いわゆる、歴史的な建造物。観光で来る場所。
明日、こんなところでワークショップなんてしていいのだろうか?という不安も少なからず、あった。

ワークショップ、本番当日。
8:30に現地入り。
昨日、夕方に行った時とは、屋敷の様子が違うように感じた。

昨日はもうほとんど日が落ちていた時間帯に訪れていたので、部屋にそもそも電気が通っていないお屋敷内はかなり暗く、展示物を照らす照明だけではワークショップ中、暗いのではないか?という懸念があったが
なんのその。
その日は晴天に恵まれて、お屋敷の窓を開け放つと、そこからは明るく強い日差しが。一気に、お屋敷は明るくなっていた。

当日の参加者は、地元の方や、演劇祭を全部回る!を目標に掲げた方、海外から来た方、そして最初のイベントという事もあって演劇祭スタッフの方にもご参加頂いた。

まず、ポシロ舎の活動や、今日どんなことをやりたいか、を皆さんにご説明。
屋敷の白い壁にプロジェクターで文字や写真を映す。
まさか建設当時は、プロジェクターで文字を映される日が来るとは思っていなかっただろう壁。これも、壁の間違った使い方、かも。

スライドが映し出された壁を見上げる

その後、日常でこんな間違った使い方してますよ、の報告会。
皆さん、結構出てくる「間違ったものの使い方」
その中でお一人、「小さい頃に親に、それはだめよ!と言われていたこと、やったら怒られること」が「間違ったものの使い方」に通じるのでは?と話してくれた方がいた。

「食べ物で遊んじゃいけません!」
「えんぴつで耳掃除しちゃいけません!」

確かに。大人が知っている本来の使い方を知らないからこそ、生まれてくる使い方。

そんな童心を思い出しかけたところで、ちょっとしたゲームを行った。
ある部屋に大量に積み上げられた カラフルな洗濯バサミの山。
この洗濯バサミの「間違った使い方」を、思い付いた瞬間にそれぞれ言っていこう!という遊び。

洗濯バサミが、髪留めになり、イヤリングになり、指のつぼおしになり・・・
正解も不正解もなく、全ての間違った使い方に拍手で讃えていく。

その後、お屋敷をみんなで探検。
今回、間違った使い方をするのは道具だけではない。
お屋敷からもらう情報で、インスピレーションを膨らませられる。
参加者皆さん、思い思いに、いろんな発見を言い合う。

「この床を踏んだ音と、ここを踏んだ音が違う!」
「この階段は、実は敵から隠れるための隠し階段だったんだって〜」
「縁側に、何かを掛けるところがある!」

お屋敷自体を堪能した後は、座敷に並べた道具たちと対話。
どれでも自由に組み合わせたり、好きなところに持って行ったりして、
各々の『間違ったものの使い方』を探ってもらった。

皆さん、道具を触ったり、繋げたり、それを持って移動したり。

スリッパを大量に繋げて履く人

何冊かの本を前に、ページごとに匂いがあったらどうだろう?「森のシーンで自然の匂いがするとか」と楽しそうにアイデアを話してくれる人

そろばんに、魚の形の醤油刺しを刺して、おしゃれなインテリアにする人

皆さん、悩みながらも湯水のようにアイデアが湧き出てきているようだった

ある程度探索の時間をとり、1人ひとつ発表してもらう事にした。
せっかくなら、使い方をそれを実際使う時のシチュエーションのままに発表してもらおう、という事になった。

発表の中のいくつかをご紹介。

ここは宴会場(お屋敷)。
けん玉をマイクにして歌う上司に合いの手を入れて盛り上げる部下達。手には、そろばん。そろばんのシャカシャカが、マラカスのようでもあり、妙に歌を盛り上げる。

畳の部屋。日常の一コマ。
洗濯物を畳んでいるお母さん。そこへ息子がやってきて、宿題もせずにまた遊びにいこうとしている。そこでお母さんがすかさず、手元にあったハンガーで、息子の服の背中部分を引っ掛ける。遠隔で息子の行動を止めることができる便利グッズ!!!

けん玉を並べていく。だが、一つ目のけん玉の玉は、右隣のけん玉の穴へ。二つ目のけん玉の玉は、また隣の3つ目のけん玉の穴へ…
一つで完結するはずのけん玉が、何個も集まった時、それらがどんどんと一つに繋がり、新しいけん玉アートがここに完成する…

ここは学校。正座をして、皆、真面目に先生の話を聞いているかと思いきや、態度が悪い。すると、先生は、黙ったまま本をバンッと大きな音を立てて閉じる。その1発の音だけで、生徒達を威嚇する先生。
無言のその力に、子供達は圧倒されて、大人しく授業を聞くのでした。

お屋敷のある部屋に集められる人々。閉められた襖。
「ゆ〜みんおいらんのおなありぃ」の声と共に襖が開くと
そこには髪の毛に大量の洗濯バサミを付け、大きな布をまとったゆ〜みん花魁の姿が!!!お屋敷の雰囲気と、洗濯バサミゲームからアイデアをもらって、ずーっと1人隠れて花魁の準備をしていた、ゆ〜みんの力作。

みんなと離れて黙々と花魁ヘアセットをする姿

縁側。障子を開けると、そこには道。
お屋敷に閉じ込められ、外に出ることが出来ない娘には恋する人が。
そこで娘は、長い紐の先に洗濯バサミをつけ、そこに手紙を忍ばせる。そのロープをえいっと飛ばせば、直接会えなくても、庭のそこまで来てくれたあの人に手紙を渡すことができる。江戸時代、こんな風に恋文の交換をしていたのかな…

同じく縁側。ここからは海が見えない。海が見たいなあ、、と呟く少年。
すると傍には、沢山の色鉛筆。その上にアヒルの人形が2匹。
ああ、海が見たいなあ、と呟きながらその鉛筆達を手でなぞると…
アヒル達が泳いでいるかのように、ゆらゆらと移動していく。
カラフルな水の上をゆっくりと泳ぐアヒル。
それを見て、しばし己の欲を満たすことのできた少年でした。

皆さんの溢れんばかりの「間違った使い方」と、それを楽しそうに演じて、使い方をみせてくださる姿に、讃える拍手、笑い、感動が止まらない。

家から持ってきた「海苔」が眉毛になるという発見を教えてくれた!

探索の時間に、ある方がこんな事を言ってくれた。

「家老屋敷も喜んでいる気がする」

家老屋敷でワークショップ、という 家老屋敷の「間違った使い方」。
間違ってるかもしれない。でも、そこにいる人たちが楽しければいいじゃない、それで喜ぶ人がいるなら、それはもう間違っていない。

見学の人も、取材の人も、お屋敷の係の人も、みんなでわいわい

なんて事を我々ポシロ舎も再度気づかせてもらった。

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