小笠原慎之介のMLB挑戦を考える。
はじめに
藤浪選手のMLB 挑戦を追い、その逆風や挑戦に対する冷ややかな目を見るうちに、いつしか日本人MLB選手自体にかなり興味を持つようになりました。したがって今回も小笠原慎之介投手のMLB挑戦について現状わかる範囲で考えてみました。このような観点からいつも野球を見ているのもあって、ポジティブな面を中心に書きたいと思っています。予めご了承いただけると幸いです。
小笠原選手の特徴
①リリースポイント
まず、投球フォームをざっくりと確認しておきます。
こちらの記事で使われている画像を見るとわかりやすいのですが、小笠原は典型的なオーバースローです。このため、リリースポイントも比較的高い場所から放っていると推測できます。この時点で低いリリースポイントからのホップする速球が持ち味の今永選手との比較は厳しいと筆者は考えています。
②球速、球種、打球結果
次にスラッガー社の選手名鑑を引用して、小笠原選手の特徴をデータ面から考えていきます。まず、球種、球速面から。
フォーシームを半分投げ、あとはカーブ、スライダー、チェンジアップをほぼ均等に投げています。また、スライダーとチェンジアップは球速帯がほぼ同じで見極めが難しいと考えられます。
コースを見ると特に左打者の外角低め、右打者の内角低めのコースに投球が集中しており、低めのコントロールの良さが光ります。フライ率、ゴロ率に特徴は見られません。
③ラプソードによる分析結果
球質が大幅に変わることは少ないので、3年前の小笠原投手のラプソードでの解析結果が載っている記事を参考にさせていただきます。ここで言及されている解析結果を要約すると、
となります。カーブの落下幅は高めのアングルから投げていることもあり、強みの1つと言えるでしょう。60インチの落下幅は今年の山本由伸投手と遜色ありません。しかし一方でストレートのホップ成分が少ないのは懸念材料の1つです。
小笠原選手に似たタイプの投手
90マイル近くでも活躍している投手はMLBにもいる
小笠原選手の懸念材料として真っ先に浮かぶのは球速がMLBの平均より大きく下回っていることです。しかし、小笠原選手と似た球速帯でも活躍しているMLB選手は少なくありません。そこで似たような選手をピックアップして分析してみました。
①ブレディ・バッソ
自分はOAKファンなので、調べていくうちに贔屓のローテに食い込みつつあるBrady Bassoが似ているタイプとして思いつきました。速球の質こそ違えど、高いアームアングルから、縦変化の強いカーブとチェンジアップ、スライダーを投げている点に共通性を見出せます。Bassoの特徴として上記のsavantの写真を見ていただければわかるように、四球の少なさがあります。
サンプル数を少しでも多くするためにマイナーからデータを持ってきて、主要3球種のピッチマップを持ってきました。これを見るとフォーシームは高め、カーブ、チェンジアップは低めという原則を徹底していることがわかります。小笠原選手にも同じような精密なコントロールが求められると筆者は考えています。
②ジェフリー・スプリングス
スプリングスは89マイルと今年の小笠原選手と似た球速帯で最も活躍している投手です。横変化の強い速球を使う点でも類似しています。コントロール面の良さはBassoで触れたので省略しますが、もう1つ活躍すしている要因としてチェンジアップの落ち幅が挙げられます。スプリングスのチェンジアップの落下量は40インチとMLB全体でみても10位です。遅い速球もわずかながら平均よりもホップしており、高低差で打者を幻惑していると推測できます。
③トミー・ヘンリー
ヘンリーは今年苦しんだ選手ですが、タイプとしては小笠原選手に似ています。ヘンリーが今年成績悪化した理由として、xスタッツから運の悪さが少なからず影響していると考えられますが、もう1つ理由として速球が沈む上に、変化球の落ち幅が弱く対応されやすくなっていることも影響していると考えています。このことからも、当たり前かもしれませんが小笠原選手も強みのカーブの落下幅をMLBでも維持していく必要があります。
活躍を握る鍵
まず、精密なコントロールは今よりも求められます。特に今とは違いフォーシームを高めに集める必要性が高いのは注意点です。
この記事にもあるように、低めの速球はMLBだと掬い上げられて長打になる危険性が高いです。このため小笠原選手もスタイル変更が強いられる可能性があります。
また、MLB球への対応も鍵を握ります。今シーズンMLBに挑戦した上沢投手もボールへの適応に苦しんだと語っていました。精密なコントロールを実現するためにもボールへの適応は重要な要素です。