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ロス・ストリップリングと技巧派のプリンス
破格の待遇
デスボールで話題が先行するストリップリングについて少しマクロに書きます、もちろんデスボールについても少しは触れます。
まず、獲得した経緯についてですが破格の待遇と言って過言はないでしょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1712813642065-YwD0UwmXat.png?width=1200)
OAKはストリップリングを獲得するため年棒の多くを負担したほか、プロスペクトまで放出しました。ストリップリングに対してOAKが支払っている9.25Mはチーム1位で、期待度の高さが伺えます。
そこで今回はOAKがストリップリングの何に期待し獲得に至ったかを考察します。変化量グラフを作る際には下記の記事を参考にしました。
ストリップリングに起きた変化
まずアスレチックスに来てからストリップリングに起きた変化から調べました。
①投球配分の変化
まず、1番わかりやすいであろう投球配分の変化について考えました。
![](https://assets.st-note.com/img/1712816356211-ZoKjxvEHUV.png?width=1200)
各球種の配分を少しずつ減らして、シンカーの割合を増やしていることがわかります。ストリップリングの復活の鍵はシンカーにかかっていると考えることもできます。
②シンカーの深化
ではそのシンカーが昨年とどのように変化したのかをみていきます。以下の表を見ると横変化,縦変化にはともに球速が落ちてはいますが増加していることがわかります。
![](https://assets.st-note.com/img/1712817039569-udxHYUXSE8.png?width=1200)
昨年まで特に変化量に強みのなかったストリップリングのシンカーでしたが、縦変化に関してはvsAVGで見ても落ち幅が良くなりました。変化量に大きく差はありますが高いリリースポイントから縦変化の強い低球速のシンカーを投げるという点ではATLのブライス・エルダーを彷彿とさせます。
③「デスボール」
また今年のストリップリングに触れる際には新しいスライダー「デスボール」については無視できません。しかし、デスボールに関しては触れる媒体や発言する人によって定義が変わり、分析するには自分が力不足なのでデスボール自体については深く触れません。
ストリップリングは最新の記事ではピート・フェアバンクスのスライダーを模範にしていると述べています。そこで2023、24のストリップリングのスライダーとフェアバンクスのスライダーについて軽くマップ化しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1712818169275-ugPXUj2sjw.png?width=1200)
2024に関しては2登板なのでサンプル数は少ないですが、縦変化が大きく横変化の少ないスライダーを2024のストリップリングは投げており、フェアバンクスのスライダーに近づいていることがわかります。ストリップリングがスライダーの変化を調整したことは間違いなさそうです。
④球速の低下
変わったことはいいことばかりではありません。
![](https://assets.st-note.com/img/1712818872177-OVNqUIb1r2.jpg?width=1200)
昨年多少上昇した球速も翳りが見え全ての球のスピードが下落しています。春先だからと考えることもできますが、各シーズン見てもこれほど落ち込んだ年はなかったために大きな不安要素ではあります。
⑤微かな光明
そんなストリップリングですが、指標上は今のところいい結果を残せてはいます。
![](https://assets.st-note.com/img/1712819387780-JVSocBp2Ox.png?width=1200)
シンカー主体の投球に変更したからか空振りが奪えなくなった代わりに打球速度を抑えることに成功しています。
stuff +上でも今回のモデルチェンジはクオリティの向上と評価されています。
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球速の低下とともにフォーシームとカーブはここ3年で大きく劣化した一方で、今年から増やしたシンカーとスライダーは高評価です。
ここからは私の推測ですが、このスタッツの裏には前回の記事で書いたリンの時と同じくストリップリングのリリースポイントとのシナジーがあると考えられます。ストリップリングのリリースポイントはMLBトップクラスの高さです。
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100球以上投げた選手の中ではジャスティン・バーランダーに続きリーグ2位の高さを記録しています。
リリースポイントの高いオーバースローの投手はどうやらホップする速球が投げやすいらしく事実ストリップリングもライズするフォーシームを活かした投球が持ち味でしたが、球速の低下とともに質も低下した今、リリースの高さを別の面で利用しているのではないかと私は考察します。
侍ジャパンの投手コーチを務める吉見一起氏はオーバースローの利点に関して角度がつくため垂直方向に力が向くボールが有効になると話しています。
In my model I consider release height as a feature to help capture the impact of release point.
— Thomas Nestico (@TJStats) March 31, 2024
It's difficult to quantify because it plays more into deception than it does in the pitch shape. Certain release points, like over the top, have an easier time getting more iVB.
また同じOAKのジョー・ボイルの縦変化の強いスライダーがなぜ打たれていないかについて、高いリリースポイントから投げていることを要因として指摘しているファンの方のブログもありました。
強いエビデンスがないので推測でしかありませんが、ストリップリングがシンカーとスライダーの縦変化を強くしたのには投球フォームと高身長を別の面で活かそうとしていると私は考えています。
タイトル回収、求められる役割
以上のようにストリップリングを分析してきましたが長らく転売を睨んだベテラン補強を行ってきたOAKが球速が低くアップサイド自体は乏しいストリップリングを高年棒で獲得したのは、そもそもこの補強自体が転売を主眼としてないのではと考えるようになりました。
ストリップリングは自身の長所についてこう語っています。
もし私が評価の高いファストボールを持っていれば、これほど球種配分やレパートリーをいじることはなかったであろう。
私の強みは様々な形、手段を用いて打者のバランスを崩すことだ。
さっきまで見てきたように時代やトレンド、自身の調子に合わせて工夫を凝らしながら打者を打ち取る姿勢は若手投手の手本となっています。
OAK技巧派若手投手の代表格であるミッチ・スペンスはSTで多くのアドバイスをストリップリングから得られたと明かしていますし、もともと先発とリリーフを同程度こなしているストリップリングの経験は参考になることが多いはずです。
OAKとしてはバウンスバックを支援しつつも、ローテを守ってもらい若手の消耗を防ぎ、移転問題などの雑音やそもそも中々勝てないという逆境を抱えるOAK投手陣をベテランとして少しでも明るい方向に引っ張ってもらえる選手を必要とした結果、その最適解としてストリップリングの獲得に漕ぎつけたのではないでしょうか。
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