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相〇食堂で有名な世界一まずい主食をብላに中目黒にሂድてきた

 インターネットのジャングルをのさばり、面白いコンテンツを食らい尽くしては次の獲物を探すイナゴのような我々にはお馴染みである、この画像。
「相席食堂」というテレビ番組で放映されるやいなや、知らないものを知らない言葉で説明される時に使われるネットミームとして一躍有名になったものですが、「オフチョベットしたリットをマブガッドにしてリットにした」ものが何かを知らない人も多いでしょう。
 そう、今回はその「オフチョベットしたリットを(略)」を食べに行った体験レポをお届けします。





 「オフチョベット(略)」を食べてみたいと思い立ったが吉日。特に友人もいないので兄を誘うことにした。
私の兄は、最近なにしてた?と聞くと、騎馬民族に見繕ってもらったら競馬ボロ勝ちするんじゃないかと思って友人のモンゴル人を連れて競馬場に行ったけど「日本の馬は貧弱すぎる」と言われてボロ負けしたよ〜と返してくるような人間なのできっと着いてきてくれるだろう。

ノータイムで返信が来た。血は争えない。

兄と兄の友人(Kさん)と3人で「オフチョ(略)」を食べに行くこととなった。



 そもそも「オフチョベットしたテフをマブガッドにしてリットにした」料理というのは、遠いアフリカの地、エチオピアの主食であるインジェラのことである。
エチオピアの人々が我々でいうお米のように毎日食べているこの料理であるが、サジェストの不穏さが表すように、世界一まずい主食だと言われている。

さんざんな言われようで草


実際、元ネタの番組でも雑巾の味と揶揄されている。

明日には忘れているだろうが、
これを読むみなさんのために一応「オフチョベットしたテフをマブガッドしてリットにする」の用語解説を置いておく。
オフチョベット:粉末状にすること
テフ:イネ科の植物 グルテンフリーでダイエットにもいい)
マブガッド:水を混ぜること
リット:テフとお湯を混ぜたもの

粉末状にしたテフに水を混ぜて数日置き、酸味が出るまで発酵させた生地をクレープ状に焼いたもの それがインジェラである。
この発酵の過程で発生した酸味が、”雑巾の味”と呼ばれる所以である。
現地ではこのインジェラを”ワット”という煮込み料理とともに食べるのが一般的だそう。

ということで、本当に雑巾の味なのか確かめに行こう。



中目黒にあるクィーンシーバ(階段下のお店)

 今回訪れたのはこのお店。
店頭からでけーキリンがお迎えしてくれる。店内にはタワー・オブ・テラーのハイタワー3世のコレクションから引っ張り出してきたような奇妙なお面や、謎の彫刻が各所に飾られていて、異国情緒あふれる空間になっている。

席に着くと一際目に着くのが動物の皮。皮。皮。
天井や壁にライオンやシマウマと思しき大型動物の皮が磔にされている。
お店の方に本物ですか?と聞いてみると、カーリーヘアが魅力的なアフリカ系の店員さんが硬く頷いてくれた。税関で止められたりしないのかが気になるところである。

シマウマが目を引くが、その近くにある、ガキの頃一目散に探していた新聞に小さく描かれている漫画のようなタペストリー?ではヤギを大蛇に食べさせている。どういう状況?



ハニーワインの写真はイメージです(撮り忘れた;;)

 このお店ではエチオピアに限らず、アフリカ各地のお酒が取り揃えられていた。
蒸留酒が多かったのは、上下水道があまり整備されていない国や、降水量が安定しない国では蒸留酒が作られがちだからかな?と勝手に思った

とりあえず店員さんが「これがトラディショナルです」と教えてくれたインジェラのコースと、アフリカビールを頼んでみた。
アフリカビールはさっぱりとした口当たりで非常に飲みやすい。ビール本来の苦味は失われない程度に抑えつつ、爽やかでするする飲めるのが魅力に感じた。

アベベ・ベキラは、エチオピアの首都のアディスアベバと名前が似ているため、エチオピアを代表するお酒なのでは?と頼んでみたら60度近いリキュールが来た。あんずの香りはしないものの、アマレットのような強い甘みで度数の割にはかなり飲みやすい。(リキュールの知識がないのでもっと他に近いお酒があるかもしれない)
ちなみにGoogleでアベベ・ベキラを調べても何もヒットせず謎のままである。

ハニーワインは、白ワインのような軽い飲み口と華やかさのあとにまろやかなはちみつの風味が残る。食事と一緒に、というよりは単体で楽しめるほど味わいの展開が面白い。なかなかおいしくてAmazonで探してみるも、それっぽい商品を見つけられなかったので、気になる方はぜひお店に足を運んで一度味わってほしい。

兄「アフリカの森で遭難して、なんとか村を見つけて助かったと思ったところに、偉そうなじいちゃんから木の器でゴン!ってこれ渡されたらビビる」
それはなんでもそうなのでは?


 今回はインジェラについての記事なので、コースに登場した他の料理については画像にしてひとまとめに書き記しておく。

日本人向けにローカライズされているのかな?と思うほどどれもおいしく頂けた。私が特に気に入ったのはヤギ串である。ジビエ特有の臭みは香辛料のおかげで気にならず、噛めば噛むほど旨味が増す。焼き鳥のねぎまのように刺されたねぎにも、肉汁が染みて非常にウミャウミャである。

Kさん「サイゼのラム串に似てる!!」

どの品もクミンを筆頭に(クミンしか嗅ぎ分けられないからですが)スパイスの香りが強い。強いと言ってもスパイスカレーを食べてなんだこれ〜ってなる人も美味しく食べられる程度で本当にちょうどよく感じた。おいしー!!


待望のインジェラ!!(写真は3人前)

 ついに待望のインジェラとのご対面である。
右側にあるおしぼりのようにくるくると巻かれた灰色の物体だけでなく、シチューの下に敷かれたものもインジェラである。お皿まで食べられちゃうってエコだ~

お店の方が丁寧に食べ方を教えてくれた。見た目と質感は完全にクレープであるインジェラをほどいて、手巻き寿司ののり程度の大きさに千切ると、その上にカレーやスクランブルエッグを載せて手でいただくそうだ。
店員さんのチュートリアルのもと出来上がったそれを口に運んでみると、美味しい〜!!
ピリッとちょうどいい辛さのカレーと、噛むたびに旨みのこぼれる牛肉、ふわふわ食感のスクランブルエッグ、すべてが調和していて美味しい!

前評判以上のおいしさにびっくりしつつ、せっかくなのでインジェラ本体の味も確かめてみる。

兄「すっっっぱ!!!!」

本当に酸っぱい。さすがに雑巾の味ではないが、発酵食品特有のツンとした酸味が鼻をつく。
しかしこれをシチューやスクランブルエッグと一緒にいただくと、インジェラの酸味もお寿司でいうシャリの酸味のような心地のよいアクセントとなり、肉のうまみやスパイスの辛味と伴って、味覚の六角形が均されていくのが目に見える。おいしい!!!
というかおかずにあたるシチューが美味しい。これを言うと元も子もないが、このシチューで白飯をかっくらいたい。辛すぎない、調和のとれたスパイスの風味と、カッテージチーズのまろやかさ おいし~~

もうひとつのダボというパンは、コリアンダー(パクチーのこと)やクミンが練り込まれている。少し乾燥しているタイプのパンだが、水分のあるシチューとともにいただくとちょうどいい。

なんだ、普通に美味しいじゃん。と和気あいあいとした雰囲気の私たちだったが、おかずのシチューが減ってくると、ボディーブローのようにじわじわと、インジェラの慣れない酸っぱさの違和感が身体にこたえる。
食べに行かれる方はぜひおかずとのバランスを考えて食べ進めることをおすすめする。


そんなこんなでお腹いっぱいになるまでエチオピア料理を堪能した。
遠い異国の料理にもかかわらず、すべて美味しくいただけて感動したので、この調子でアフリカ各国の料理を全制覇するのも面白いかもしれない。

「オフチョベットしたテフをマブガッドしてリットにした」料理、インジェラ。ミームこそ一人歩きしているものの、味は日本人の我々にも親しみやすいものである。ぜひ一度足を運んで挑戦してみてはいかがだろうか。



 最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
異国料理が大好きで、最近は廃墟パキスタン料理、インドネシアンアボカドジュース、オフチョベットときたので、次はチベットのおでんかエジプトの鳩の丸焼きでも食べてみたいなと思っています。

ちなみに、タイトルの
「相〇食堂で有名な世界一まずい主食をብላに中目黒にሂድてきた」
は、エチオピアの公用語であるアムハラ語でብላが食べる、ሂድが行くという意味になっています。
アンノーンみたいでかわいいよね。このアムハラ語の文字、ゲエズ文字は182種類あるらしい。エチオピアの子どもたちは五十音表ならぬ百八十二音表を覚えるのかな ひえ~

またお話したいことができたら更新するから読みにきてね。

サイクロンやよい



今回訪れたお店の詳細はこちら


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