クイバタ 11月3日(日)
ご自由にお書きください。
・近所に個人経営の本屋ができていた。地図を見て行ってみると、入り口に人権問題やフェミニズムについてのポスターがびっしり貼ってあった。まるでポストの中みたいと思いながら入ってみると、店内は存外普通で、何ならちょっと珍しい小説やルポ、詩集や雑貨などが並んでいて、なかなか面白かった。もちろんフェミニズムについての本もあった。結局何も買わなかったけど、期間を空けてまた行ってみたい。
・本屋の隣には同じく個人経営のカフェができていた。ホットチョコレートを注文して席に座り、ネットで店名を検索してみるとドーナツとコーヒーが美味しいと口コミに書かれていた。ホットチョコレートのことも褒めてよ。店内は若い人のみで混雑していた。近所にはお年寄りしか住んでおらず、同年代の人間は全員東京に流されたと思っていた。
・散歩ついでに近所の古本屋も見てみると、江戸川乱歩の幻影城が売っていた。330円。買って店を出てからバッグを持っていないことに気づいたが、戻って袋だけ買うのも恥ずかしいので、裸のまま持ち歩いた。異空間収納スキルを身に付けていたあの頃の癖がまだ抜けていない。幻影城は暇な時にちょっとずつ読む。
・カフェや本屋などができ始め、我が家の周りは少しずつ良い街になりつつあるが、それと同時に余所者が俺の生活に入り込んできた感覚がある。もちろんそれらは余所者どころか地域に密着したものだし、こちらからノコノコと行ってるのだから入り込んでくるというのもおかしい。しかし、俺にとってのこの街はパチンコ屋とラブホしかない、慢性的なギャンブル欲と性欲が蔓延る文化も何もない灰色の街で、その無気力さが居心地よかった。近所のパチンコ屋にもラブホにも行ったことはないけど、同じマンションに住んでいてエレベーターで会ったら挨拶する程度の関係が、俺たちには心地よかった。だから、いきなり文化的で人間的な温かみのある施設をつくられると、そこを中心にじわじわと街が浄化され、パチンコ屋とラブホと俺はいつか追い出されるのではないかと不安になってくる。先にこの街にいたのは俺たちなのに、向こうの方が正しいから、間違いなくこちらが追い出される。俺たちの病気の街が、元気な奴らに蝕まれている。
・いつか俺がこの街に大きな大きなハードオフを建てて、この地の養分を吸収し尽くしてやる。