お師匠様と俺
私にはお師匠様がいる。
面と向かって「お師匠様」と呼んだら、「弟子をとった覚えはない」とすげなく言われそうだが、我々の関係はどう見ても、師匠と弟子である。たぶん。この間、「港さんの師匠も――」と言われたので、ほかのひとからもそう見えているはずだ。
そのお師匠様だが、なかなか良いキャラクターをしておられるので、こっそりここに書き記しておく次第である。お師匠様は機械音痴というか、今時珍しいほどにアナログなひとなので、noteの辺縁の本記事など目にも留めまい。
何しろ、つい数か月前までガラパゴス携帯を使っていたレベルである。本人としてはそのままでよかったようだが、サービス終了に追い立てられ、渋々スマートフォンに乗り換えていた。最近はスマートフォンに慣れるべく、試行錯誤しておられる。
お師匠様は私がフィールドにしている某県では、欠かすことのできない重鎮である。私がひとりで他所に出かけた時でも、お師匠様の名前を出すと、「○○さん、来月来ますよ」なんて言われることがしばしばだ。
しかし、普段話していると到底そんなふうには見えない。私が馴れ馴れしいわけではなく、皆そう思っている。しかし、某県での基礎的なあれこれを支えた功績は大きく、それもまた皆が認めるところである。
すごいひとであるのは間違いないのだが、一緒に仕事をしていると、面白い面がいろいろと見えてくる。
例えば、お師匠様はかなり熟練のオタクである。先月、「シン・仮●ラ●ダー」が公開されたが、お師匠様は公開前から「そろそろだな」とそわそわしはじめ、公開後は数日で見に行ってきた。「シン・ウ●ト●マン」の時は何回か見たらしい。
他にも、「ゴー●デンカ●イ」の最終巻の発売を、やはりそわそわしながら待ったり、ディアゴスティーニで十数万をかけて「サ●ダー●ード二号」の模型を作ったりと、明らかにオタクの所業である。
私も少なからず同類なので、幸い相性はいい。
私がお師匠様を尊敬する理由は多々あるが、その話をしだすと専門的かつ冗長にならざるをえないので割愛する。
代わりに、お師匠様のいいところをひとつ、書いておこう。
お師匠様のいいところは、いつも食べたいものが明確なことだ。
突発的に他人と行く食事、特に目上の方との食事は、場所選びが最大の難関だろう。相手のアレルギーや苦手なもの、好きなもの、予算、時間、今日の気分などを鑑みて、可及的速やかに食事内容を決定しなくてはならない。
その点、お師匠様との食事は気が楽だ。お師匠様は常に、食べたいものが明確で、私が何か言うまでもなく、「モ●バーガーでも食べるか」だとか、「海に来たなら海鮮だよな(港町に調査に来ていた)」などと言って、さっさか食べるものを決め、美味しそうに食べる。私はその後ろを追っかけて、同じ美味しいものを共有する。それだけで、円満な食事が完成する。
食べられないものが多い方の場合はしんどいかもしれないが、ほぼなんでも食べる私にとっては、これが本当にありがたい。苦手なものがないと、行き先を絞り混むこともできず、かえって困ることが多いのだ。
「食事」というコミュニケーションを円滑に進めることができるのは、人間関係を構築するうえでかなり有益な能力だ。
この絶妙な押しの強さと心配りで、多方面との信頼関係を築いてきたのか、或いは何も考えていないのか。こう書くと、本当にお師匠様のことを尊敬しているのか、と疑われそうだが、嘘偽りなく尊敬している。
そんなお師匠様のエピソードは色々あるので、今後もうっかり登場するかもしれない。
なお、本記事での執拗な伏せ字は、オタクであるお師匠様が作品タイトルを検索して、本記事にたどり着かないようにするための配慮である。
まあ、大丈夫だとは思うが(フラグ)。
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