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ポルトガルのビデオゲーム市場
市場規模と成長可能性
ビデオゲーム市場はすでに映画市場を追い抜き、ますます多くの人々がスクリーンの前で自身の冒険の主人公やチームのスターになることを好むようになった。ポルトガルでのビデオゲーム消費額は2024年には2億5800万ドル(=375億2000万円)に達すると推定されており、モバイルゲームが最も人気。
ポルトガルのビデオゲーム企業の売上高も近年大幅に増加している。国統計局(INE)によると、2018年の540万ドル(7億8500円)から2022年には3800万ドル(55億2700円)を超え、年平均成長率は65.2%に達した。
さらに、2027年までの年間成長率は11%を超えると見込まれており、ポルトガルのビデオゲーム市場は長期的な成長が期待されている。
成長の背景
ビデオゲームに特化した企業は36社から114社に、従業員数は91人から500人以上に増加。
ポルトガルでは、スマートフォンの性能向上やタブレットの普及、そして移動時間や待ち時間を活用できることから、特にモバイルゲーム市場が成長している。しかし、より良い音質や画質、適切な機器で楽しむことができるゲームも多く、家庭でゲームを楽しむ割合も依然として人気がある。Statistaの予測によると、2024年時点ではポルトガルのビデオゲームユーザーは平均して242ドル(35,000円)に達する見込み。
※ポルトガルの最低賃金は800ユーロ/月(11〜12万円)くらいであることを考えると、ゲームに費やすお金の高さがわかりやすいですね。
欧州連合(EU)は、主にクリエイティブ・ヨーロッパ計画 (Creative Europe project)を通じて、ナラティブゲーム(*1)やインタラクティブ体験の創造を支援することで、このゲームセクターの競争力を刺激してきた背景がある。欧州メディアによると、EUには約4,600社のビデオゲーム企業が存在しておりそのほとんどが10人未満の小規模企業であるとのこと。ポルトガルも同じ状況のようです。
(*1) ドラクエ、風来のシレンなど、プレイヤーによって攻略までのルートや方法が様々存在するゲーム。
新たなゲームハブ in Lisbon
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2023年12月のリスボン・ゲーミング・ハブ(Lisbon Gaming Hub)開設は、スタートアップ企業の育成を支援する「Unicorn Factory Lisboa」プログラムの一環として、業界にとって重要なマイルストーンとなった。複数のビデオゲーム企業が、イノベーションの中心であり、新たなつながりやパートナーシップを求め、ここに新たな拠点を構えた。
このゲーミング・ハブには、13の個室と12のコワーキングスペースがある。ここでは、ポルトガルのビデオゲーム市場の成長を促進し、スタートアップ、投資家、そして業界に関連する多国籍企業との接点を生み出すことが目指されている。このプロジェクトの一環としてリスボンにスタジオを開設した米国企業のFortis Gamesをはじめ、OnTop Studios、Phat Fingers、The Gangなどのスタジオや、さまざまな大学の学生で構成されるGameDev Técnico、そしてポルトガルビデオゲームプロデューサー協会(Association of Portuguese Video Game Producer)も入っている。
Castelo Branco地区のFundão市で始まったプロジェクトも存在しており、同プロジェクトは欧州のGAME-ERプロジェクトの一環となっている。同地区のプログラムは、イノベーションと研究を支援する目的で、Horizon Europeから300万ユーロ(=4億8500万円)の資金提供を受けている。
eGames lab:ポルトガルのビデオゲーム産業の拠点
eGames Labとは?
eGames Labプロジェクトは、ポルトガルのビデオゲーム市場が抱える特有の技術的および運用上の課題に対応することを目指している。
具体的には、国内に国際的な影響力を持つゲーム開発クラスターを設立し、ポルトガルのクリエイティブ産業部門を強化することを目標としている。また、分散化し小規模となっていた同ゲーム業界を活性化させ、ポルトガル国内の人材を積極的に活用し、ポルトガルをグローバル市場でも戦えるように基盤を作り出し、より多くの投資を誘致することも目標としている。
同プロジェクトには、22の組織/企業、14の中小企業、2つの科学機関、リスボンからフンシャル(マデイラ島)まで、さまざまな都市の6つの公共および民間機関も参加。Amazon for Gamesやカーネギーメロン大学などの国際パートナーとして関与している。
ポーランドは見習うべき例
非常に競争が激しいものの、ビデオゲーム市場は巨大であると言えるが、ポルトガルはまだ十分に開拓されていない。
専門家によると、ポーランドの優れた技術訓練を備えた高等教育システムを有している点と、経済の多様化が必要であるという点の2つがポルトガルと共通しているという。
CD PROJEKT REDのような小さな会社が『ウィッチャー(The Witcher)』というビデオゲームで国際的な成功を収めることで、ポーランドを世界有数の市場プレイヤーの地位に引き上げることに成功し、より多くの投資を呼び込むことに成功している。
しかし、ポーランドの場合でも成功を納めるまでに10年近くかかっているため、ポルトガルも同じくらいのタイムラインで物事を考える必要性はありそうである。
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ゲーム開発者会議 (GDC 2024)
eGames Labは、業界をリードしている世界の見本市における存在感を強め、閉鎖的なコンソーシアムではなく、ポルトガル国家エコシステムの発展させるために活動している。このビジョン実現に向けて、ポルトガルとして初のゲーム開発者会議 (GDC 2024)@サンフランシスコへの参加を実現し、他国に向けたeGames Labの活動の宣伝にも成功している。
ポルトガル発スタートアップ
Anybrain
Anybrainは、2015年のPerfometricプロジェクトからスタート。同プロジェクトは、会社を設立したMinho大学の4人の研究者のうちの1人であるAndré Pimenta氏の博士論文から発展した。当初の目的は労働者の疲労を測定することだったが、最終的にはビデオゲームにおける不正行為を防ぐ技術開発に方向転換を実施。AstralShiftPro
2016年末に物語性と芸術性を備えたホラーパズルゲームの「Pocket Mirror」を無料でリリースしたことが始まり。同プロジェクトの成功により、チームはクリエイティブ制作に新たなビジネスチャンスを探求し始め、現在に至る。Camel 101
2009年、兄弟であるBruno氏とRicardo Cesteiro氏はCamel 101を設立し、当初は、パズルゲームに焦点を当てていた。
現在、同社は没入型体験を生み出す技術で知られており、可能な限り忠実に現実を再現することに取り組んでいる。Ground Control Studios
2014年に設立された同社は、Porto市の中心部にあるコワーキングスペースからスタート。当初はパソコンやテレビゲーム向けのゲーム開発に重点を置いていたが、現在ではバーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)などの技術も研究している。Infinity Games
スマートフォンゲームの開発と配信を行っており、ユニークで没入感のある体験を提供することで知られている。今まで配信したゲームは2億5000万回以上のダウンロード、月間300万人のアクティブユーザーを誇っており、モバイルゲーム市場で大きな存在感を示している。Massive Galaxy Studios
Gonçalo Monteiro氏によって設立され、For The WarpやLakeSideなどのゲームが成功を収めている。国際的なビデオゲーム市場での地位確率に成功している。Miniclip
ビリヤードゲームのギネス記録を破り、195カ国でプレイヤーを獲得。
12か国に20の開発拠点を設立しており、ポルトガルでは、Oeiras市のTagusparkが2022年に開業し、300人以上が働いている。Saber Porto
2019年のBigmoon Entertainmentスタジオの買収により設立されたポルトガルのAAAビデオゲーム(*2)開発スタジオ。
(*2)莫大な開発費を投じて作られたゲーム
引用元:IT転職ナビSound Particles
インディ・ジョーンズ、オッペンハイマー、ミッション・インポッシブル、ゲーム・オブ・スローンズ、アナと雪の女王、デューン、スター・ウォーズなどの作品で大手ビデオゲーム会社やハリウッドスタジオが使用する3Dオーディオソフトウェアを開発するポルトガルのスタートアップ企業。同社は現在、ユーザーがヘッドフォンを通して「現実世界」と同じ音を聞くことができるソリューション開発に取り組んでおり、人間の頭と耳の3Dモデルと人工知能(AI)を組み合わせるで実現を目指す。The Gang
世界最高水準の没入型ゲーム体験の開発に尽力する、国際的なゲーム開発スタジオ。DreamWorks Animations、IKEA、FIFAなどの大手ブランドと協業を進めている。