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「あの頃の自分が欲しかった場所を作る」PORTOスタッフ:しおりさんのこれまで(前編)

PORTO(ぽると)は、兵庫県神戸市の中心部・三宮にある「おやこの世界を広げるサードプレイス」です。大人もくつろげる室内遊び場で、一時預かりや各種イベントなども開催しています。

PORTOのことをもう少し深く発信する上で、関わる「ひと」というところからお伝えできれば、とスタートしたインタビュー「PORTOなひとたち」。

インタビュー5人目は、PORTOの根幹、経営の部分を支えているしおりさんです。

PORTOが出来る前、代表が構想している段階から、プロボノ的な立場を経て、複業でPORTOの運営に参画しているしおりさん。PORTOが民間施設として運営していくために大切な経営の観点から支えています。今回は、どのような部分を担っているのか、PORTOにジョインすることになった経緯についてお聞きしました

裏方として、経営を支える

ーしおりさんはPORTOで具体的にどのようなお仕事をされていますか。

PORTOの立ち上げ時には就業規則や会員規則をつくったり、オペレーションマニュアルを整備したり、エンジニアさんに依頼してPORTOの内部システムをつくってもらったり、いろいろな裏方の業務をお手伝いさせていただきました。現在も会員データの管理や分析、広報のお手伝い、資料作成など経営観点での仕事を中心に取り組んでいます。本業は会社員としてフルタイムで働いているので、PORTOのお仕事ができる時間は限られているのですが、その中で自分の役割を見つけて取り組んでいる感じです。

他に、行政に提出する補助金申請やその補助金を活用した新規事業などをお手伝いすることもあります。今年度、PORTOは「令和4年度・神戸市「CO+CREATION KOBE Project(民間提案型事業促進制度)」に選定されました。これは、いつも「親子の場所」として利用していただいているPORTOを、シニア世代や大学生など多世代に開くための新しいプロジェクトで、大学生に向けたライフキャリアについて、共働き家庭とのパネルディスカッションイベントや高齢者の方々とのイベントを企画、運営しています。この事業には、申請から実際の運営まで幅広く関わっています。

そのほか、時々はイベントの企画・運営もしています。半年に一回くらいのペースで、PORTO近くのホールを借りて親子で音楽を楽しめる「おやこのためのジャズコンサート」を企画したり、PORTOが夜に運営しているPORTOTable&Barの中で毎月開催しているイベント、「International Night」に運営スタッフとして参加しています。

PORTO近くのホールで、プロの演奏を気軽におやこで楽しめるジャズコンサートを企画・開催

双子を育てる中で感じた、排除される感覚

ー裏方として、保育士スタッフだけでは行き届かないところをたくさん整備してくださっていますよね。そもそもどのような経緯でこのPORTOへ参画することになったのでしょうか。

私は長崎市出身で、大学進学のために上京し、そのまま東京で就職しました。しばらく東京で働いていたのですが、2017年、結婚を機に夫の出身地である神戸に移住しました。

移住後も東京の会社に引き続き在籍して、神戸の自宅でフルリモートで仕事をさせていただく環境だったので、同僚も友人も東京の人ばかりで、神戸に住みながらも神戸に知り合いはあまりいない状況でした。それでも、夫婦だけで暮らしていく上で特に支障はなかったのですが、2018年、双子を出産したことで生活が一変しました。

双子の乳児の世話は、おむつがえも授乳も夜泣きも全部2倍で、思っていたよりずっと過酷でした。1人抱っこであやせばもう1人が泣く、1人がやっと昼寝したと思ったらもう1人が起きる、夕方には同時に大泣きされて途方に暮れる、の繰り返しで、特に双子と3人ぼっちの昼間は、すっかり疲れてしまいました。

家にひきこもっているとあまりに孤独なので、近所に子連れで行ける場所や友達がほしいと思って広報誌などで地域の子育て支援情報を集めていましたが、地域にある様々な親子向け施設やイベントに一人で双子を連れて出かけることはあまりに大変で、ほぼできませんでした

近所の児童館は入口が4階で、ベビーカーを1階に畳んで置いてからエレベーターで上ってくるように案内されていました(2人を同時に抱えてベビーカーを畳むという時点で無理…)。また、当時は私が住む区に双子の会がなく、隣の区にはありましたが、「同時に泣いたらどうしよう」「スムーズに電車の乗り降りができなかったらどうしよう」と思うと、慣れない双子ベビーカーを押して電車に乗る勇気が出ませんでした。夫も一緒に出かけられる土日であればお出かけもできたのですが、子育て支援施設やイベントは基本的に平日にしかアクセスできないところが多いので、平日に一人で複数の乳児を連れて出かけられない多胎児の母には、あまりにハードルが高かったのです。世の中には「子育て支援」を謳う制度や場はいくつもあるのですが、同じ「子連れ」の中でも、多胎児を育てる家庭はさらに「弱者」で、その支援の場にさえも行けないのだなと痛感しました。

育児に慣れない時期は、同時に泣かれることに恐怖していました

ー産後まもなく、まだ動きも少ない子どもと家にいると、時間の流れが急に変わって社会から分断されたような感覚になったり、誰でもいいから大人と話したいと私も第1子出産後に強く思っていました。しおりさんの場合、お子さんが双子であることで行ける場所が限られたり、そもそもなかったり。。厳しい局面でしたね。

それでも家に引きこもって1人で双子を見ていると息が詰まるので、外に散歩に出かけていましたが、両方泣いたら同時にあやせない、と思うとカフェにすら入ることができず、真冬に、ただただ何時間も近所を歩き続けているだけ、そんな日々を過ごしていました。

今振り返ると、子育て支援施設やイベントに行けなかったこと自体が悲しかったというよりも、”親子のため”、”子育てを支援するため”、の場所のはずなのに、そこに自分たちは行けない、その支援対象に自分たちは含まれていないんだ、という経験を何度もすることで、なんだか自分たちが世の中から排除されてしまっているような気がしてきて、それが辛かったんだろうなと思います。

そういう状況から脱するために育休を切り上げて早く仕事に復帰しようと決め、双子が生後6ヶ月の頃に保育園に預けて復職しました。保育園の先生が毎日双子をかわいがってくれ、励ましてくれるおかげで、「私達夫婦だけで子育てしているんじゃないんだ。夫婦以外に双子の成長をこんなに喜んでくれる人がいるんだ」と実感でき、急に育児が楽に、楽しくなったことを覚えています。

こうして自分の居場所を職場に戻し、保育園の助けをもらうことで自分の孤独感、疎外感からは逃れられましたが、神戸で暮らし、神戸で子育てしているにもかかわらず、相変わらず神戸とのつながりは全然ないなあ、と新たな問題意識が生まれました。育休中の辛かった経験と、仕事復帰後のこの感覚が、PORTOへのジョインにつながっていったと思います。

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《編集後記》
PORTOの中では中枢、頭脳の部分を担っているしおりさん。いつも冷静で、端的な言葉でわかりやすく、問題を解決する方法や的確なアドバイスを現場にくれる存在として見えていました。そんなしおりさんが直面した双子育児のリアル。世の中から排除される感覚、という言葉から、子育て支援って何だろう、今自分たちに出来ることは何だろうと改めて気づかされることも多いインタビューでした。次回・後編では複業にプラスして学んでいる大学院のことやPORTOでのこれからの展望についてお伺いします。(聞き手:みほ)