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トップ選手の不安から考える、育成年代で身につけるべき力

「スポーツしかやってこなかったから」

そう言って、うなだれるかつての有名サッカー選手。

かつて手にした華々しい結果を表すトロフィーや、代表のユニフォームを眺めながらため息をついている。

これはある選手の本当にあった場面です。(若干脚色はしています)

でも、これは一部のトップ選手の話ではありません。
育成年代の選手たちにも、同じことが起きています。


スポーツ指導に携わっている方は、こんな経験がありませんか?

✔️「スポーツしかやってこなかったから、就職に困る」と卒業後に悩む選手

 ✔️ 部活動を引退する時、「もっと勉強しておけばよかった」という選手

保護者の方も、いわゆる「スポーツバカ」にならないように、

スポーツなんて将来役に立たないから、それより勉強しなさい!

そう言われる方もいらっしゃると思います。

でも

「もし、競技をしている中で"未来にもつながる力"を育てられたら?」

引退する時、上記のような言葉を言う選手や保護者の方はいなくなる
かもしれません。

今回のテーマはズバリ、、、

スポーツ界で長年言われ続けている、「セカンドキャリア」について。

ビジネス特化型オンライン英会話事業を提供するビズメイツが公開した記事によると、プロ(セミプロ、社会人選手も含む)選手たちに引退後についてアンケートした結果、

なんと90%以上の選手たちが、将来に対して「不安を抱えている」ことが明らかになりました。(※詳細は参考記事を参照)

▲出典:スポーツ選手のセカンドキャリアに関する意識調査】 9割以上が「競技引退後のキャリア」に悩みあり|PR TIMES

この結果を見てみると、疑問が浮かんできませんか?

スポーツで培った経験は社会に出てからも役にたつ、はウソなの?と。

ウソ…ではないけど、ウソになる人もいる!と思います。

私で言うと、競泳選手時代に培った、辛いことにも逃げずに向き合う気持ちや、
先輩と話すときの言葉遣い、決めたことをやり続ける力。

実体験をもってしても、「スポーツで学んだことは社会に出ても役立つ」は正しいと思います。例えば、受験勉強。志望校に合格するという目標に向けて最後までやり切ることができました。(高校2年生から、起きている時はほとんど勉強していました)

しかし、全ての選手にとってそうとは限らないんです。

「スポーツを通して学んだことってなんですか?」

と多くの選手が聞かれた時に、

「体力!コミュニケーション能力!礼儀!根性!」

この辺りが真っ先に出てくるのではないでしょうか?(私もそうです笑)


▲ 写真はイメージです。

よくある事例が、

競技で結果を出すために逆算をしてトレーニングを積む先輩に相談に乗ってもらう、などとやっていたことが、受験の時、社会に出る時、途端に、全く別のものとして認識されてしまい、何もできない…と錯覚してしまう。

大きく見れば

勉強でも、営業でも、企画でも、同じことをしているのに、違うシーンになるとできない。

そんな選手を同級生も含め、たくさん見てきました。

一流のアスリートが社会に出たら二流・三流になってしまう、現象。

同じスポーツをしていて、一流であり続ける選手と困ってしまう選手、この差はなんなのでしょうか?

この差は、スポーツで学んだことを社会でも転用できる「応用力/転用力」です。
(さっきの事例だと、バスケでもやってることだ!と気づき、トレーニングを積むときにしていた考え方を、営業の場面でも使う、といった応用の仕方になります)


▲ 画像はイメージです。

例えば、バスケットボールでは、いきなりシュートを狙ってもうまくいきません。

✔️ 「まずどこでボールを受けるべきか?」
✔️ 「どのタイミングで動けばフリーになれるか?」
✔️ 「相手の守備が弱いエリアはどこか?」
と、シュートを決めるまでの流れを逆算して考えることが大切です。

これは営業でも同じ。
契約(シュート)を取ることだけを考えても、結果は出づらいですよね。

✔️ 「まずお客さんとの信頼関係を築く」
✔️ 「相手のニーズを深掘りする」
✔️「最適なタイミングで提案を出す」
と、ゴール(契約)までのプロセスを設計することが重要です。

では、スポーツとキャリアをつなぐ応用力の正体とはなんなのか?

それがライフスキルと言われるスキルです。

ライフスキルとは、より良い結果を出すために、
自分に合った方法を選んで、工夫しながら継続できる力です。

元々は、WHOが提唱した、充実した人生を歩む人たちがもっている力と言われています。

▲ WHOが定義しているライフスキル一覧

【 10個のライフスキル 】

  1. 意思決定

  2. 問題解決

  3. 創造的思考

  4. 批判的思考

  5. 効果的コミュニケーション

  6. 対人関係スキル

  7. 自己認識

  8. 共感性

  9. 情緒対処

  10. ストレス対処

10個多いですよね、、、

ただし、私が一番大切だと個人的に考えているのが、
『問題解決能力』です。

つまり、『自分で』決めて、『自分で成し遂げていく』力です。

これまで様々なアスリートを見てきましたが、「伸びる選手」「実際に結果を出している選手」はこの力が突出しているのです。

※ ちなみにこのスキルはスポーツにただただ打ち込んでいるだけでは、身につきません。
※ このスキルは先天的(遺伝)ではなく、後天的にトレーニングを通して身に付くものです。

この考え方をスポーツでも使える!として取り入れたのがアメリカです。

▲ ライフスキルを学んでいる大学生たち。(画像はイメージです)


現在でもNCAA(全米体育協会)に所属する1000前後の大学は、このライフスキルを大学で学ぶことが必修になっています。(詳細は参照URLより)

ちなみにアメリカでは、スポーツの結果だけではなく学業成績もかなり厳しく見られます。学業ができていないと認識されると、競技に参加することができません。

このように、スポーツの結果のみならず、学業も、その先のキャリアにも使えるよう、ライフスキルを取り入れているのです。

ということは、、、

競技だけやってればいい!は大嘘で、ライフスキルも同時に高めちゃった方が、
今(競技をしている時)も未来(競技を終えた時)も、選手たちのためになる!ということになりますよね。

想像してみてほしいのですが、、

競技に夢中になった経験を『他の分野でも』再現性を持って夢中になれたら、、

長い人生の中で、競技生活だけがピークではなく、仕事でも、趣味でも、様々なところで自分の人生を輝かせることができるようになっていきます

そんな選手たちが増えていったら、最高だと思いませんか?


▲ ある選手の計画書
(バスケットボールだけでなく、キャリア面、プライベート面も含めて計画を立てる)


1話でも話した、「競技に夢中になっている」選手。

もっと言うと

どうやったらもっと上手くなるか?を自然と考えている選手。

この

どうやったら上手くなるか考える

やってみる

調整してさらに試す

結果に一喜一憂せず、これを練習や、練習外でひたすらに取り組むこと、この状態こそが競技に夢中になっている状態なんです。

「どうやったら上手くなるか?」

「調整する」

この時に使っているスキルが、まさにライフスキルです。何度も繰り返してトレーニングをしていくことで、『ライフ(人生)』のスキルとして身についていきます。

▲ あるバスケ選手のワークシート

では、

どうやってライフスキルを高めていくのでしょうか?

実は、

NCAAで実践されているプログラムは、多くがアスリートたちを講堂に集めて講師から話を聞くセミナー形式で実施されています。(一部課外活動もあり/大学により異なる)

もちろん指導者や保護者の方が声掛けや関わり方を意識することにより、身についていくこともあります。例えば、「今のプレーのどこが噛み合ってないと感じた?」などの声掛けによって、「問題解決能力」が身についていくでしょう。

とはいえ、

指導中はやっぱり体を動かすことがメインになってくるので、

スキルを満遍なく伸ばすことは難しい。
かつ、フィールド上でこれって勉強にもつながるよね?
などと他分野と繋げて話すことも難しいですよね。

なので、私たちアスリートアカデミーは『オフザピッチ(プレーをしていない時間)』の時間を使って、選手たちが楽しくライフスキルを身につける機会を作っています。

選手たちにライフスキルを身につけてほしい!と思われている指導者の方は、ぜひ普段のミーティングの時間などを有効活用してみていただきたいと思います。

次回は、競技に夢中な選手を育む『チーム作り』について、実際の事例をご紹介しながら書いていきたいと思います。

アスリートアカデミーHPはこちら
https://www.athlete-academy.com

公式LINEはこちら(イベント情報やアスアカの詳細がわかります)
https://lin.ee/EOl7o7L


参考記事

・ビズメイツ『【スポーツ選手のセカンドキャリアに関する意識調査】 9割以上が「競技引退後のキャリア」に悩みあり』https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000168.000006561.html(最終閲覧日:2025年2月16日)

・NCAA『Life Skills』https://www.ncaa.org/sports/2014/10/20/life-skills.aspx(最終閲覧日:2025年2月16日)

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