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911の歴史を辿る -996 vol.2 前期型②-

996.1 (前期型)は,993からどう進化したのか.
993と996.1,共にベースグレードを比較する.

まずは,スペックから.
<993>
エンジン:空冷 水平対向6気筒 SOHC 3,600cc
トランスミッション:6MT/4Tip-S
最高出力:285ps/6,100rpm
最大トルク:34.7kgm/5,250rpm
全長/全幅/全高:4,245mm/1,730mm/1,300mm
ホイールベース:2,270mm
車重:1,370kg

<996.1>
エンジン:水冷 水平対向6気筒 DOHC 3,387cc
トランスミッション:6MT/5Tip-S
最高出力:300ps/6,800rpm
最大トルク:35.7kgm/4,600rpm
全長/全幅/全高:4,430mm/1,765mm/1,305mm
ホイールベース:2,350mm
車重:1,320kg

Flat 6エンジンは水冷化され,SOHCからDOHCに変更.
ティプトロニックは4速から5速へと進化している.
最高出力は15ps強化.
最大トルクは1kgmの強化で,より低回転域の発揮となった.
車体は一回り大きくなっているが,約50kgの減量に成功している.

数字以上の変更点として挙げられるのが,空冷と水冷のエギゾーストノートの違い.
個人的な表現で恐縮だが,993は996に比べてよりドロドロとした低音主体となり,アクセルを踏めば唸るように吹け上がる.
対して,996は993に比べてわずかに高音域にあり,吹け上がりの音はよりスムースな印象.993のサウンドは,996に比べて明確にクラシックな印象を受ける.

続いて,エクステリア.
ボディーは993ではシャープ・タイトボディである一方,996になり全体的に丸みを増す.フロント・サイド・リアビュー共に鑑別は容易である.
ブレーキランプは,996においては角ばったデザインを維持したまま,993に比べてやや上方に位置する.

(画像引用:https://www.autocar.jp/firstdrives/2017/08/15/233094/)

インテリアでは,ブレーキ・クラッチがフロアヒンジから吊り下げ式に変更.
ダッシュボードの配置も異なる.回転計こそ両者で中央だが,スピードメーターの位置は993では右,996では左となる.
また,ハンドルの中央に鎮座するエンブレムは,993まではモノクロ,996以降ではカラーとなる.

ちなみに,996のデザインには,Ken Okuyamaこと奥山清行氏が携わっている.
このお方,クアトロポルテやエンツォ・フェラーリをデザインし,フェラーリをイタリア人以外で初めてデザインした人として知られているカー・デザイン界の大御所.ポルシェ社でシニアデザイナーを務めた後に,イタリアに移りピニンファリーナ社に入社している.996は,彼がポルシェ社にいた頃に携わったものなのであろう.

個人的な見解だが,ポルシェは空冷エンジンへの決別をよりセンセーショナルに催したかったのではないだろうか.経営状態が悪化した原因は奇しくも911の販売不調であり,コストを落としつつも様々な意匠を尽くすことで,現状打破の願いを込めて,水冷911のデビューを華々しく飾りたかったのではないか,と思う.
結果としてそれが裏目に出てしまうことにはなったが,
これによりポルシェ社は確信を得る.丸目こそが,911のIdentityなのだと.

997以降,モデルレンジは大幅な拡大を遂げる.996がなければ,この販売路線の拡大,引いては現在の高い営業利益率を誇る健全な経営体制は存在するまい.

いつも街で996の姿を見る度,
過去と未来を共に背負って走るその姿に,何とも居た堪れない思いを馳せている.

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