久々にマクロスにぶん殴られました『劇場版マクロスΔ絶対LIVE!!!!!!』感想
10月8日に公開されたマクロスΔの劇場版二作目を観てきました。
前作『激情のワルキューレ』はTVシリーズの総集編でしたが、今回は完全新作ということでどんな物語が描かれるか楽しみにしておりました。これまでのマクロス映画って基本的に総集編かパラレルの再構成ストーリーが基本だったので、TVシリーズの結末を含めたその後を描くのって実は初めて?ですかね(細かくいうと『激情のワルキューレ』の続編なので、厳密にはTVシリーズのそのものの続編ではありませんけど)。
私はマクロスF現役世代でドハマりし、それから初代やプラスや7などの歴代シリーズを見漁りました。ΔもTV放送を楽しみにしていたのですが、始まってからはFのときほどは乗りきれず、正直自分の中ではマクロス熱が少し下火に。しかしそれから総集編の『激情のワルキューレ』を観たあたりからΔの物語とワルキューレの曲の良さもだんだんとわかってきて、クロスオーバーライブ参戦(チケット戦争に負けてライビュでしたが)も経て、今回の劇場版に臨みましたが……。いやー、なんか久々にマクロスにぶん殴られた気がしましたね。いろんな意味で期待以上のインパクトがある作品でした。
ここからはネタバレありなのでご注意!
銀河争奪歌合戦
本作のキャッチコピーは「銀河争奪歌合戦」。メインビジュアルにはお馴染みのワルキューレの5人の歌姫と対応するように、彼女らを闇堕ちさせたようなデザインの歌姫が5人。彼女らの名前は”Yami_Q_ray”。まさに闇のワルキューレ。劇中では戦場でワルキューレとYami_Q_rayが対決するようにまさに歌合戦を繰り広げるようなシーンがありました。
これはこれまでのシリーズでも意外となかった演出でしたね。ΔのTVシリーズと劇場版前作ではワルキューレサイドと対立するウィンダミアの国王ハインツが「風の歌」を使うことがありましたが、歌で対決だ!って感じではなかったし。割とまだまだやっていないことがあるぞマクロスシリーズ。
(2021/11/14加筆:”敵が歌う”は『マクロスⅡ』でやっているとご指摘を受けました。確かにそうでしたね、盲点でした。まあ、河森マクロスとしては初めてということで何卒…)
ちなみにYami_Q_rayは映画の新キャラか?2時間でそこまで描ききれる?とか不安に思っていましたが、彼女らはあのシャロンアップル型のAIがワルキューレの歌を学習して産み出したバーチャルな存在で、キャラというほど意思があったり掘り下げられたりすることはなかったです。ちょっと拍子抜け。デザインはとてもいいですよね。闇フレイアの萌え袖とか闇レイナの生意気そうな感じとか好き。ちになみにパンフによると闇の美雲さんは闇雲が正式名称のようですね。闇雲て。
しかし彼女らの存在は、ワルキューレは歌を兵器として使用しているのではないか?という問題を掘り下げるきっかけになったかとも思います。リン・ミンメイやランカ、シェリルはもともとアイドルとして歌っていたものをたまたま有効だったから戦いに利用したという流れでしたが、ワルキューレは元が戦術音楽ユニットでいわば戦いのために歌う存在ですからね。でも、彼女たちはフレイアを筆頭に歌いたいから歌っているのであり、その分の歌の強さがYami_Q_rayに打ち勝ったと。
歌合戦は面白いアイデアだと思うので、次作マクロスは敵にも歌姫を出してラップバトルさながらの歌エネルギー対決とかどうですかね。
天才健在マックスお爺ちゃんと新隊長ミラージュ
そして今回はCMでもやたら目立っていましたが、初代、7のメインキャラだったマクシミリアン・ジーナスが登場。通称天才マックス。7の頃はミレーヌの父親とは思えない若々しさでしたが、さすがに本作では少し老いていい感じにダンディなイケオジに(渋い速水さんボイスが超似合う)。『サヨナラノツバサ』のイサムのように援軍としてちょっと出てくるくらいかと思ったらガッツリ序盤から登場し、物語の中核を担うキャラになっていました。ちゃっかりエキセドル参謀も登場していましたね。マックスはVF-29(『サヨナラノツバサ』でアルトが乗っていたバルキリー)を彼のお馴染みのパーソナルカラーのブルーに塗り、模擬戦をするハヤテやボーグに壁として立ちはだかります。さらに最終的には艦長の席は自分にはあってない!(今更…?)と戦場に飛び出して「ただの天才」として縦横無尽な活躍を魅せました。元気なお爺ちゃん、正直かっこよかったです。
そして、個人的にΔで一番好きなキャラのミラージュ・ファリーナ・ジーナス。ハヤテとフレイアと共に三角関係の一角を担う存在で、作品によってはフレイアとのWヒロインになってもいいポジションにもなり得るキャラだとは思いますが、彼女は歌姫ではないために基本的にワルキューレに隠れがちな存在でした。グッズもワルキューレの5人ばっかりで、彼女のはあんまりないのですよね。劇中ではハヤテの戦場での相棒として戦い、最後はハヤテへの思いを断ち切ってフレイアとの仲を応援するという言ってしまえば割を食ってしまうキャラなんですが、そんなところが大好きなんです。
そんな彼女はマックスとミリアの孫、ミレーヌの姪という設定は明かされていましたが、今回はついにマックスと対面。戦場ではハヤテやボーグの操縦技術に付いていけないことで自分に限界を感じ、マックスにもエースには向いていないと言われていました。しかし、最終決戦では負傷したアラドに代わり、デルタ小隊の隊長に任命。初めは戸惑いながらも、一歩引いて戦場を観ることで状況を把握し、頼りになる指揮官として才能を発揮していました。ここのシーンがとても良かったです。彼女なりの戦い方、彼女なりの空を見つけられた名シーンでした。
フレイアとハヤテ、そして衝撃のラスト
最後にこの作品を語る上で外すことはできない主人公ハヤテとヒロインフレイアの恋模様。二人は前作で思いを伝えあっているので、恋人として結ばれてからを描かれるってもマクロスでは珍しい気が。初代のTV版追加話数が該当するっちゃしますが、三角関係の延長戦って感じでしたからね。
フレイアの祖母のリンゴの木の下でのシーンなんかは良かったですね。パンフレットのインタビューによるとアフレコではなかなか恋人同士っぽくならなくて苦労したとか。その分ほほえましい、温かいシーンになっていました。
そして直面するのは、ウィンダミア人は地球人とは違い寿命が30歳程度だということ。TVシリーズの頃も寿命が違う者同士が結ばれても結果的には悲しい別れが待っているのではないかといことはファンの間でささやかれていましたが、劇中ではっきりと触れられました。
中盤ではウィンダミアの神官であるヨハンが住民を守るために力を使い果たして結晶化し、命を落としました(この人出てきたときめっちゃ怪しくて裏切ると思ってました。めっちゃイイ人でしたごめんなさい)。さらに、ヘイムダルとの交戦時、フレイアはハヤテを助けるために力を使用し、一気に寿命を縮める結果に。
徐々に"フレイアの死"というものが近づいてくるなか、マクロスシリーズのクライマックスではお決まりとなった艦内の通路での出撃前のパイロットとヒロインのやり取りのシーン。ハヤテはフレイアに「一緒に生きたい」と強い言葉を伝えました。
戦いのラストは、最後までワルキューレとして歌うことを選んだフレイアの命がけの歌唱で、ウィンダミアのすべての人々、さらに敵であるYami_Q_rayもつられて歌いだすというシーン。マクロス7の最終回をどこか彷彿とさせました。まさに歌で戦争を終わらせるというマクロスの根本的なテーマを象徴するような場面で大好きです。
しかし、残りわずかだった寿命をすべて歌に込めたフレイアは、結晶化が進み、ハヤテの腕の中で幸せそうに息絶えました。正直、かなりインパクトがある展開でした。マクロスシリーズは戦争を描いているシリーズなので、戦いの中で死亡するキャラクターは少なくないですが、メインヒロインの歌姫の死亡が明確に描かれたというのは私が覚えている限りは初めてではないかと思います(他にあったらすみません)。しかも、フレイアはワルキューレというリアルでも人気がありアーティスト活動を現役で行っているユニットのメンバー。この先のワルキューレのライブでフレイア役の鈴木みのりさんが出てこないというわけではないでしょうが、それにしてもなかなか思い切った結末だったと思います。前作マクロスF以降、アイドルものアニメがかなりの数が増え、マクロスΔも言ってしまえばその一角くらいの感覚だったのですが、マクロスは戦争もので文字通り彼女たちは命を懸けて歌っているということを再認識させる衝撃でした。上映後の劇場が、正直お通夜みたいな雰囲気でしたからね…。私の後ろの女性は大号泣してましたよ。
場面は数年後、ハヤテがヘイムダルから救出したYami_Q_rayのベースとなった「星の歌い手」の赤ん坊が少し大きくなり、戦火から徐々に回復しているリンゴ畑でハヤテがその子を肩車しているシーンで物語は幕を閉じます。命は紡がれていく、ということなんでしょうね。
タイトルの『絶対LIVE!!!!!!』は、ワルキューレがライブコンテンツに力を入れているグループなのでその辺から取ったのだろうなと軽く考えていたのですが、映画の結末を観て"生きる"の"LIVE"と考えると、また違った印象を強く受けるタイトルですね。
最後に
映画総評としては、やはり河森監督が描くマクロス映画のアクションの迫力は凄まじく、ワルキューレのかっこいい楽曲をバックに目で追うのが困難なくらいのバルキリーの超速戦闘の迫力はピカイチ。レディMがらみで初代、シャロンでプラス、マックス艦長とエキセドル参謀の参戦で7、と歴代ファンへのサービスもバッチリ。子どもたちに煽られてリンゴサイダー(?)をデカンタで一気飲みする美雲、駆け出し時代の恥ずかしい写真をさらされて赤面するカナメさん、相変わらずイチャイチャしているレイナ&マキナ、マキナに胸を押し付けられてドギマギするミラージュなど、キャラのサービスシーン(?)も可愛らしく描かれていました。
そしてマクロスΔという物語を惰性で続けようとせずにきっちり決着を着け、マクロスシリーズでも随一というくらいはっきりと描いた恋愛模様の結末に潔さを感じた名作だったと思います。個人的にはΔというシリーズはこれまでまあまあかなくらいで楽しんでいましたが、最後にしてやられたと感じました。
『劇場短編マクロスF~時の迷宮~』に関しては長々と感想を書くタイプの話ではないので割愛しますが、久々にFのキャラクターたちのアニメーションを観れて良かったです。来月はライブも控えているのでとても楽しみです。
まだ書きたいたいことあった気がするけどまあいいや。思い出したらツイッターで書きます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。ではまた。