第2回 真夜中のムーンウォーク
私が中学生くらいの頃のこと。
家族揃ってリビングで夜ふかしをしていた。
なんとなく付けていたテレビには、ダンスをしている男性が映し出されていた。
0時を回った頃だっただろうか。
テツオは言った。
“ムーンウォークってどうやるんかな”
テツオのスイッチが入った。
それから家族こぞってYouTubeの検索窓に
「ムーンウォーク やり方」と入力した。
テツオは動画の説明を一通り聞き終えると、
“どれ、こうか…!” と、
真剣な、でも好奇心に溢れ半分ニヤけたような面持ちで先陣を切った。
その姿はまるで、当時話題になっていたロボット、「アシモ君」の歩行を逆再生したかのようなものだった。
“どうや!?へへっ”
と、テツオ。
「全く見てられない」と私たち家族は後に続いた。
そして順番に披露してはアドバイスをし合い、私や兄はなんとか形にすることができた。
テツオはというと…何度やってもアシモ君から離れられずにいた。
そしてある程度繰り返したところでおもむろに椅子に座った。
…限界を悟ったようだった。
“もうやめとくわあ”
思いがけず始まった、
真夜中のムーンウォーク練習だった。