蒸し暑い日の冷やしフォー(高円寺・チョップスティックス)
真夏の蒸し暑い日は、冷たい麺に限る。
東京は連日の猛暑日で、ご飯やパンをもぐもぐ食べる気力が全然出ない。かといって、素麺やお蕎麦ばかりでは元気が出ない…。これはもう絵に描いたような夏バテである。やってきましたこの季節!夏バテです!
そんなとき、私は「チョップスティックス」を目指す。
チョップスティックスは、日本初の生麺フォーを食べられる、ベトナム屋台料理のお店である。
夏限定で冷やし麺の「ブンネム」を出していて、私はそれに何度も救われている。
お店があるのは高円寺駅のすぐ近く、「大一市場」の中。今は飲食店がひしめいているが、昔は本当に市場だったらしい。路地に面した入口を覗くと、中はちょっと薄暗くて、怪しい雰囲気が漂っている。
建付けの悪い扉を開けて、通路の奥、ベトナム式のカラフルな提灯が下がるお店が目的地である。
市場だった頃の古い雰囲気が残る建物の中は、空調の効きが悪く、蒸し暑い。もっと涼しい店に行くべきだったか…と若干後悔しながら、カタカタと回る扇風機の前の席に座る。店員さんのベトナム語が飛び交い、日本からトリップしたみたい。
メニューを見ると、今年もありました、「ブンネム」!
セットの生春巻きとハス花茶が先に出てきて、キンキンに冷たいお茶を一口飲んだところでちょっと生き返る。
そしてお待ちかねの冷やしフォーである。
澄んだ冷たいスープに半透明の丸い麺、どっさりの生野菜と甘酸っぱいベトナム風なます、そして小ぶりの揚げ春巻きが4つ乗っている。
どこかに消えていた食欲がダッシュで戻ってくる音が聞こえる。いただきます!
…うーん、美味しい。キュッと締まった冷たい麺はツルツルと体に入っていくし、パクチーをはじめとするエスニックな味が今の私には心地いい。この蒸し暑さも嫌ではなくなって、美味しさを盛り上げるスパイスに変わる。
そして、揚げ春巻きですよね。スープに浸った揚げ物ってなんでこんなに美味しいんでしょう。肉汁とスープがじゅわっと口に広がって、不足していたパワーがぐんぐんみなぎってくる。
夢中で食べ進めて、結局「食欲がない…」と言っていた人とは思えない食べっぷりを見せてしまった。今日もありがとう冷やしフォー、私の救世主。
薄暗い大一市場を一歩出ると、強い強い夏の日差しが降り注いで、目がくらむ。
日差しのせいで色彩が鮮やかな高円寺の街、四方から漂うスパイスと古着とインド雑貨の匂い、商店街の雑踏の音、むわりと纏わりつく蒸し暑い空気。
私もまた、アジアの島国で生きているのだなぁと思う。ぐーんと伸びをする。
暑い暑いと言いながらも結局、私はそんな夏の日を愛している。秋は始まったばかりなのに、もうあの夏が恋しくて恋しくて仕方がないのだ。
チョップスティックスのサイトはこちら
https://namamen.com/