サラットナさん 第六章
そうだ、サラットナさんから、参道の話を聞いたすぐあとにカレー事件があって(大袈裟かもしれないが、私にとってはそうだった)忘れてたんだわ。
しかし、カレーづくりを頼まれて良かったわぁ。お料理をしてくれる旦那の有り難さが身に染みて、ほんの少しだけど手伝えるようになったもの。
あっ、宮司様の奥様が参道を上がられてくる。
「あら貝塚さん、ご奉仕ご苦労さまです。
先日は、カレーの下ごしらえ助かりました。
やっぱり主婦はちゃんとしていて助かるわ。」
奥様、『主婦は』というお言葉、それは偏見じゃないですか?と心がざわつく。
「ありがとうございます。私もおかげさまで残ったカレーを頂きました。美味しかったです。」
「あらそう。それじゃ、ご奉仕引き続き宜しくお願いしますね。」
奥様の後ろ姿を見送りながら、どんどん怒りが込み上げてくる。どうした?私。
もう参道ではなく、龍神社の前を掃き清めているサラットナさんが飛んできた。
貝塚さんはきっと、普通とか当たり前とか一般常識とか嫌いなのよぉと言って、また戻る。
以前は、そうだったかもしれない。
走馬灯のように色んなことを思い出した。
旦那が料理することに嫌味を言われた。
子どもがいないの可哀想発言。
また旅か!仕事しないやつはグズだ。
そんな簡単なこと出来ないの?あんた馬鹿じゃない?など色々、いろいろ・・・
えぇい!自分の人生だもの、なんでもいいじゃん。自由に生きて何が悪い、一般常識なんてクソくらえだわ。でも、奥様への怒りは、料理が出来ない自分に対する逆うらみかもしれない。
相変わらず、ちっぽけな私、と思ったら今度は何故か悲しみが押し上げてきた。どうしよう泣いてしまいそうだ。
ふと、海外に出ると心が自由になり、羽が生えたようになる自分を思い出した。
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